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健康的なダイエットの味方は「やせやすい炭水化物」[ロジカルダイエット:第1回  文・庵野拓将]

【編集部より】今月から毎月、理学療法士・庵野 拓将さんが、健康的なダイエットをするための食事や運動について解説します。 第1回のテーマは「炭水化物」です。

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ダイエットというと「炭水化物を制限しましょう」といわれますが、近年の栄養学では炭水化物を制限するのではなく「やせやすい炭水化物」をうまく取り入れることを推奨しています。

炭水化物には「やせやすい」ものと「太りやすい」ものがある

やせやすい炭水化物とは「全粒穀物」のことです。全粒穀物とは、玄米や全粒粉、大麦やオーツ麦、ライ麦などの未精製の穀物のことをいいます。これに対して、私たちがよく食べる白米や小麦粉でつくったパンやパスタなどの精製穀物は「太りやすい炭水化物」とされています。

全粒穀物の粒は、下記のイラストのように「表皮」「胚芽」「胚乳」という3つの部分から構成されています。(※1)

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●表皮:ビタミンB、鉄、銅、亜鉛、マグネシウムとともに食物繊維が豊富に含まれています。
●胚乳:でんぷん(糖質)が多く含まれています。
●胚芽:脂肪、ビタミンE、ビタミンB、抗酸化物質が豊富に含まれています。

このように全粒穀物は、ビタミン、鉄、亜鉛、マグネシウムなどの微量栄養素が豊富であり、とくに食物繊維を多く含むことから「やせやすい炭水化物」とされています。

全粒穀物を精製すると、胚芽や表皮が取り除かれ、胚乳のみが残ります。これが白米や小麦粉といった精製穀物であり、その成分は胚乳に含まれるでんぷん(糖質)が主になるため「太りやすい炭水化物」とされているのです。

全粒穀物の摂ることは、さまざまな病気の予防にもつながります

多くの栄養素を含む全粒穀物の摂取は、さまざまな病気の予防に役立つ可能性が報告されています。中でも確かな科学的根拠(エビデンス)を示しているのがオタゴ大学が報告したメタアナリシスです。

メタアナリシスとは、これまでに報告された同じテーマの研究結果を集めて、全体としてどのような傾向をがあるのかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究方法です。

1億3500万名のデータをもとに全粒穀物の摂取による病気への影響を解析した結果、すべての病気による死亡率、心臓病や2型糖尿病、結腸・直腸癌の発症リスクを13〜33%減少させることが示されました。(※2)

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(Fig.1:Reynolds A, 2019より筆者作成)

とくに2型糖尿病では、全粒穀物の摂取量が少ない人と比べて多い人では、発症リスクが約30%低いことが認められています。

そして、このメタアナリシスで明らかになったのが「体重減少の効果」です。全粒穀物の摂取は精製穀物に比べて体重増加のリスクを減らすことが示されました。

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(Fig.2:Reynolds A, 2019より筆者作成)

さらに、この結果を支持しているのがデンマーク工科大学による「ランダム化比較試験」です(*)。その結果では、全粒穀物の摂取は精製穀物よりも有意に体重を減少させることが示唆されており、全粒穀物の摂取がダイエット効果を高めるというエビデンスを示しています。(※3)

*ランダム化比較試験:研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け、治療法などの効果を検証すること。無作為化比較試験ともいう。

全粒穀物がダイエットにいい理由とは?

では、なぜ全粒穀物を摂取すると体重を減少させる効果が得られるのでしょうか?

この問いの答えを報告したのが米国・MBリサーチの研究グループです。

2021年7月、MBリサーチの研究グループは全粒穀物の摂取による食欲への影響について、これまでに報告された32の研究結果をもとにメタアナリシスを行いました。

その結果、全粒穀物の摂取は精製穀物に比べて、食事による満腹感が高まり、食べたいという欲求を抑え、エネルギー(カロリー)摂取量の減少に寄与することが示されました。この結果から「全粒穀物には食欲を抑える作用がある」というエビエンスが示唆されたのです。(※4)

ダイエット効果の秘密は全粒穀物に含まれる食物繊維!

このような全粒穀物による食欲の抑制効果は、豊富に含まれている食物繊維が要因とされています。

食物繊維の多い全粒穀物は噛みごたえがあるため、咀しゃく回数が多くなります。これにより食事の単位時間あたりの摂取量が少なくなる(早食いを抑える)ことで、満腹感が高まりやすくなります。

腸には食欲抑制ホルモンを分泌する機能があり、このホルモンは腸の内容物の増加によって伸ばされると分泌が促進されます。全粒穀物を咀しゃくして飲み込むと、含まれる食物繊維は消化されずに大腸に到達し、水分を吸収して容量が増します。すると腸が伸ばされ、食欲抑制ホルモンの分泌が促進されて満腹感が高まります。(※5)

血糖値の上昇抑制や便通をよくする作用があります

また、食物繊維は粘性の高いゲル状になります。粘性が高まると、腸管内の糖質や脂質を取り込むことで消化を遅らせ、グルコースの吸収を低下させます。これが体重の増加を防ぐとともに血糖値の上昇抑制に寄与します。(※6)

さらに、便通を促進してお腹をスッキリさせるとともに腸内の有害な物質の生成を抑える作用もあります。(※7)

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このような食物繊維の作用によって食欲が抑えられ、体重減少の効果が得られると推察されています。

これが、全粒穀物が「やせやすい炭水化物」といわれる理由です。

ダイエットでは炭水化物を制限するのではなく、やせやすい炭水化物である全粒穀物の摂取を増やすことで病気の発症リスクを減らすとともに健康的にスリムになる可能性が示唆されているのです。

まずは、白米を玄米やもち麦などに変えることから始めてみて

では、どのような全粒穀物の食品を摂取すれば良いのでしょうか?

全粒穀物の米食には玄米、発芽玄米、大麦(押し麦やもち麦)、それに五穀米などがあります。また、パン食では全粒粉パンやブランパン、ライ麦パンがあり、シリアルではオールブランや玄米シリアル、オーツ麦(オートミール)があります。蕎麦粉の多いお蕎麦も含まれます。

しかし、急に全粒穀物を食べることには抵抗があるでしょう。まずは主食の白米に押し麦やもち麦を混ぜたり、玄米や雑穀ごはん、シリアルのオートミールに少しずつ置き換えるところから始めてみましょう。

また、「太りやすい炭水化物」もよくないというわけではありません。もし、こちらを食べるときは量に注意して、主菜や副菜から食物繊維を摂りましょう。

現代の栄養学は、ダイエットのパラダイム・シフトとして「食事を減らすのではなく、食欲を抑えよう」と提唱しています。そこで推奨される食品が全粒穀物なのです。

炭水化物を減らすダイエットではなく、主食をやせやすい炭水化物に置き換えることで無理なく健康的にダイエットに励んでいきましょう。

◆ 参考文献

(※1)P NPV, et al. Dietary Fibre from Whole Grains and Their Benefits on Metabolic Health. Nutrients. 2020 Oct 5;12(10):3045.

(※2)Reynolds A, et al. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):434-445.

(※3)Roager HM, et al. Whole grain-rich diet reduces body weight and systemic low-grade inflammation without inducing major changes of the gut microbiome: a randomised cross-over trial. Gut. 2019 Jan;68(1):83-93.

(※4)Sanders LM, et al. Effects of Whole Grain Intake, Compared with Refined Grain, on Appetite and Energy Intake: A Systematic Review and Meta-Analysis. Adv Nutr. 2021 Jul 30;12(4):1177-1195.

(※5)Lafond DW, et al. Effects of two dietary fibers as part of ready-to-eat cereal (RTEC) breakfasts on perceived appetite and gut hormones in overweight women. Nutrients. 2015 Feb 13;7(2):1245-66.

(※6)Musa-Veloso K, The effects of whole-grain compared with refined wheat, rice, and rye on the postprandial blood glucose response: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2018 Oct 1;108(4):759-774.

(※7)Müller M, et al. Gastrointestinal Transit Time, Glucose Homeostasis and Metabolic Health: Modulation by Dietary Fibers. Nutrients. 2018 Feb 28;10(3):275. breakfasts on perceived appetite and gut hormones in overweight women. Nutrients. 2015 Feb 13;7(2):1245-66.

プロフィール
庵野拓将さん
理学療法士、トレーナー、博士(医学)。大学院修了後、大学病院のリハビリセンターに勤務。けがや病気をした患者やアスリートのトレーナーとして、これまで延べ6万人の体づくりに携わる。大学病院では、世界最先端の研究成果を現場でのトレーニングにフィードバックするため、研究発表、論文執筆も行う。筋トレ、スポーツ栄養学をはじめとする最新の研究報告を Twitter(https://twitter.com/takumasa39) やブログ「リハビリmemo」(https://www.rehabilimemo.com/)などで紹介。著書に『科学的に正しい筋トレ最強の教科書』(KADOKAWA)など。

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監修:おいしい健康管理栄養士
文:庵野拓将
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