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たんぱく質の摂取で食欲が抑えられる?食べ過ぎを防ぐ食べ方のススメ [ロジカルダイエット:第2回  文・庵野拓将]

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ダイエットをするためには、食べ過ぎを減らして適切なエネルギー摂取量(カロリー)に調整し、さらに適度に体を動かしてエネルギー消費量が上回るようにしなければなりません。 しかし、「食べたい」という食欲を抑えることは誰にとっても難しいもの。 そこで、近年の栄養学で注目されているのが「たんぱく質」です。

たんぱく質といえば筋トレのイメージがありますが、実はダイエットを助けてくれる重要な栄養素でもあります。なぜなら、たんぱく質を摂取すると食欲が抑えられる効果が報告されているから。

そこで今回は、たんぱく質の摂取が食欲を抑えるメカニズムと科学的根拠(エビデンス)。そして、高たんぱく質の食品が食欲を抑えた結果、エネルギー摂取量を減らすことができるという知見をご紹介しましょう。

たんぱく質が食欲を抑えるメカニズム

ダイエットをするためにケーキやお菓子を我慢することもあるかもしれませんが、食事でしっかりとたんぱく質を摂取すると、食欲を抑えて食べ過ぎや間食を防ぐ手助けをしてくれます。

食欲をコントロールする3つのセンサー

空腹感や満腹感といった食欲は、脳の摂食中枢と満腹中枢がコントロールしています。そしてこれらの中枢に情報を伝達しているのが「インスリン、消化管ホルモン、グレリン」という3つのセンサーです。

1.インスリン

食事をして時間がたつと、徐々にエネルギー源である血液中のグルコース(糖類)が減っていきます。グルコースが減るとインスリンの分泌量も減ります。この「インスリンの減少」が信号となって、脳にある摂食中枢が活性化し、私たちは空腹を感じるのです。

2.消化管ホルモン

消化管ホルモンは、食欲抑制ホルモンともいわれます。食事をして腸が張ってくると分泌量が増え、脳の満腹中枢を活性化させることで満腹感を生じさせます。逆に、空腹になって腸がゆるむと分泌量が減り、満腹中枢の活性化が抑えられて空腹を感じるようになります。

3.グレリン

グレリンは、食欲促進ホルモンであり、空腹時に胃がゆるむと分泌量が高まって、脳の摂食中枢を活性化させて空腹を感じさせます。

たんぱく質は、この3つのセンサーに作用する

たんぱく質を摂取すると、インスリンの分泌を促進させることができます。炭水化物だけを摂取するよりもたんぱく質を合わせて摂取するほうが、インスリンの分泌が高まることが報告されています(※1)。インスリンの分泌は空腹感の減少に寄与します。

また、たんぱく質の摂取は消化管ホルモンであるPYY、GLP-1の分泌を高めます。ケンブリッジ大学のvan der Klaauwらは、同じエネルギー摂取量である高たんぱく質食、高炭水化物食、高脂肪食を朝食で摂取したあとのPYY、GLP-1の変化を計測しました。その結果、高たんぱく質食は他の食事に比べて、朝食から4時間後でもPYY、GLP-1の濃度が高いことが示唆されました(※2)。

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※クリックすると拡大します
Fig.1:(※2)より筆者作成

消化管ホルモンは食欲抑制ホルモンであり、その分泌量の増加は満腹感を高めることを意味します。

さらにたんぱく質の摂取は、グレリンの分泌を減らします。オーストラリア科学産業研究機構のBowenらは、食事前のたんぱく質摂取により、食事後3時間でのグレリンの上昇が抑えられることを報告しています(※3)。

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※クリックすると拡大します
Fig.2:(※3)、(※4)より筆者作成

グレリンは食欲促進ホルモンであり、その分泌の減少は、空腹感を抑えることに寄与します。

このようにたんぱく質は、食欲の3つのセンサーに働きかけることによって、空腹感を減らし、満腹感を高めることで食欲を抑えることが示唆されているのです。

そして、たんぱく質の摂取が食欲を抑えるエビデンスを報告したのがシーラーズ医科大学のKohanmooらです。

たんぱく質が食欲を抑えるエビデンス

2020年、Kohanmooらは、これまでに報告された高たんぱく質の食品による即時的または長期的な食欲への影響を調査した68件の研究結果をまとめて解析したメタアナリシスを行いました。

メタアナリシスとは、これまでに報告された同じテーマの研究結果を集めて、全体としてどのような傾向があるのかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究方法です。

たんぱく質をとるとすぐに満腹感が高まる

たんぱく質の摂取による即時的な食欲への影響は摂取後3時間でみられ、長期的な食欲への影響は3日〜9ヶ月でみられました。摂取された食品には、牛乳、ヨーグルト、大豆、牛肉、鶏肉、卵が含まれていました。

その結果、高たんぱく質の食品を摂取すると即時的に空腹感の減少、食品の消費行動の減少、満腹感の増加が認められました。しかし、長期的にはこれらの有意な効果が認められませんでした。

この結果から、高たんぱく質な食品の摂取は、即時的に空腹感を減らし、満腹感を高めることで食欲を抑える効果があると結論づけられています(※5)。

このように、たんぱく質の摂取は、食欲を抑えることでダイエット効果を高めてくれる可能性が示唆されているのです。

では、実際に高たんぱく質の食品を摂取することによる食欲や食事からのエネルギー摂取量への影響を検証した研究報告を見てみましょう。

間食を乳製品に置き換えて、夕食の食べ過ぎを防ごう

たんぱく質といえば、チーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品が思い当たります。これらの乳製品のなかでもっとも食欲を抑える効果があるものはどれでしょうか?

乳製品ではヨーグルトとチーズがおすすめ

トロント大学の研究では、若年者(20~30歳)と高齢者(60~70歳)を対象に、水、牛乳(全乳)、スキムミルク(脱脂粉乳)、ヨーグルト(ギリシャヨーグルト)、チーズ(チェダーチーズ)を摂取させ、その2時間後のピザの自由摂取量を計測しました。

その結果、水を摂取した場合と比較して、すべての乳製品の摂取で食欲が減少し、ピザを食べる量が抑えられました。食欲の抑制効果は若年者ではヨーグルトがもっとも高く、高齢者ではヨーグルトとチーズが高くなりました。

これらの結果から、調査したすべての乳製品に食欲を抑制する効果が認められましたが、そのなかでもヨーグルトとチーズは最も食欲を抑え、その後の食事のエネルギー摂取量を減らすことが示唆されました(※6)。

また、ミズーリ大学の研究では、3時のおやつに同じエネルギー摂取量であるヨーグルトとクラッカー、チョコレートをそれぞれ摂取させ、食欲や夕食への影響を検証しました。その結果、ヨーグルトの摂取はクラッカーやチョコレートよりも満腹感を高め、その満腹感は夕食時まで継続し、夕食のエネルギー摂取量を減少させることが報告されました(※7)。

これらの結果から、ダイエット時のおやつにヨーグルトやチーズなどの乳製品を摂取することは、空腹感を減らし、満腹感を継続させることによって夕食の食べ過ぎを防ぐとともに、エネルギー摂取量の減少に寄与する可能性があることがわかりました。

朝食に卵をとって昼食の食べ過ぎを防ぐ

さらに、近年の研究報告では「卵」が注目されています。

卵にはたんぱく質が豊富に含まれており、摂取すると空腹感を減らし、満腹感を高めることで、1日の食事の摂取量を減らすのに役立つとされています。    

サリー大学の研究では、朝食で卵をのせたトーストを食べると、「トーストと牛乳をかけたシリアル」、または「クロワッサンとオレンジジュース」を食べるよりも、空腹感が減って、満腹感が高まる。そして、その後の昼食のエネルギー摂取量が減少し、夕食を食べる欲求が低下することを報告しています(※8)。  

コネチカット大学の研究では、朝食で卵を摂取すると、血液中のグルコースとインスリン濃度の変動が少なくなり、グレリンの分泌が抑えられ、1日のエネルギー摂取量が減少することを示唆しています(※9)。  

最近の南オーストラリア大学の研究では、朝食で卵をのせたトーストを食べると、牛乳をかけたシリアルとオレンジジュースを摂取するよりも食後の空腹感が減り、満腹感が増え、昼食のエネルギー摂取量が減少することが報告されています(※10)。

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※クリックすると拡大します
Fig.3:(※10)より筆者作成

まとめ

このように、高たんぱく質な卵の摂取により、空腹感が減り、満腹感が高まることによって、その後の食事のエネルギー摂取量を減らせる可能性が示唆されているのです。

ダイエットのために我慢して食事を制限することは、ストレスを生じさせ、ダイエットが続かない原因にもなります。高たんぱく質な食品をおやつとして摂取したり、食事にとり入れたりして、食欲を抑えながら無理なく上手にダイエットに励んでいきましょう。

◆ 参考文献

(※1)Zawadzki K, et al. Carbohydrate-protein complex increases the rate of muscle glycogen storage after exercise. J Appl Physiol (1985). 1992 May;72(5):1854-9.

(※2)van der Klaauw A, et al. High protein intake stimulates postprandial GLP1 and PYY release. Obesity (Silver Spring). 2013 Aug;21(8):1602-7.

(※3)Bowen J, et al. Energy intake, ghrelin, and cholecystokinin after different carbohydrate and protein preloads in overweight men. J Clin Endocrinol Metab. 2006a Apr;91(4):1477-83.

(※4)Bowen J, et al. Appetite regulatory hormone responses to various dietary proteins differ by body mass index status despite similar reductions in ad libitum energy intake. J Clin Endocrinol Metab. 2006b Aug;91(8):2913-9.

(※5)Kohanmoo A, et al. Effect of short- and long-term protein consumption on appetite and appetite-regulating gastrointestinal hormones, a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Physiol Behav. 2020 Aug 5;226:113123.

(※6)Vien S, et al. Age and Sex Interact to Determine the Effects of Commonly Consumed Dairy Products on Postmeal Glycemia, Satiety, and Later Meal Food Intake in Adults. J Nutr. 2021 Aug 7;151(8):2161-2174.

(※7)Ortinau L, et al. Effects of high-protein vs. high- fat snacks on appetite control, satiety, and eating initiation in healthy women. Nutr J. 2014 Sep 29;13:97.

(※8)Fallaize R, et al. Variation in the effects of three different breakfast meals on subjective satiety and subsequent intake of energy at lunch and evening meal. Eur J Nutr. 2013 Jun;52(4):1353-9.

(※9)Ratliff J, et al. Consuming eggs for breakfast influences plasma glucose and ghrelin, while reducing energy intake during the next 24 hours in adult men. Nutr Res. 2010 Feb;30(2):96-103.

(※10)Keogh JB, et al. Energy Intake and Satiety Responses of Eggs for Breakfast in Overweight and Obese Adults-A Crossover Study. Int J Environ Res Public Health. 2020 Aug 3;17(15):5583.

プロフィール
庵野拓将さん
理学療法士、トレーナー、博士(医学)。大学院修了後、大学病院のリハビリセンターに勤務。けがや病気をした患者やアスリートのトレーナーとして、これまで延べ6万人の体づくりに携わる。大学病院では、世界最先端の研究成果を現場でのトレーニングにフィードバックするため、研究発表、論文執筆も行う。筋トレ、スポーツ栄養学をはじめとする最新の研究報告を Twitter(https://twitter.com/takumasa39) やブログ「リハビリmemo」(https://www.rehabilimemo.com/)などで紹介。著書に『科学的に正しい筋トレ最強の教科書』(KADOKAWA)など。

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
文:庵野拓将
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