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塩分摂り過ぎかも!? 減塩で「未来」を変える

2019年4月に「高血圧治療ガイドライン」が改定され、高血圧の降圧目標値が引き下げになりました。「高血圧」と聞いてもピンとこない人が多いかもしれませんが、日本の高血圧の患者人口は推定約4,300万人(平成22年 国民健康・栄養調査|厚生労働省)。もっとも患者数の多い生活習慣病です。いま健康な方も「早め、早め」の対策が必要とされています。この高血圧の対策には、いまの食事や食塩摂取量、生活習慣が大きく関係しています。今回、新小山市民病院の中野真宏先生のお話とともに、誰でもはじめられる「減塩」をテーマにお話をうかがいました。

そもそも減塩はなぜ大切なのか

食生活の見直しで、ぜひすぐにでもはじめていただきたいのが、毎日の食事に深く関係のある食塩摂取量の調整、つまり「減塩」です。「減塩」を続けることは、体や未来の健康にどのような影響があるのでしょうか。

「『塩分の摂りすぎは高血圧を招く』ということはご存知かもしれませんが、減塩と関係があるのは高血圧だけではありません。塩分の摂りすぎは日本人の死亡原因の上位を占める脳疾患(※1)にも関連しています。高血圧患者に対する研究によると、減塩による降圧効果は数mmHg程度ですが、1g減塩をすると収縮期血圧が1mmHg低下(※2)し、結果として脳卒中のリスクが3.8%減少(※3)することがわかっています。減塩がさまざまな病気の予防にも関係しているのです」(中野先生)

減塩は病気のリスクの低下のほか、血管の健康にも深い関係があります。

「体中をめぐる血管は、加齢と高塩分によって少しずつ硬くなる可能性があります(いわゆる動脈硬化)。特に血管のカーブした部分はより圧力がかかるため、血管が破れるなど体にダメージを与えることも。年をかさねても血管をやわらかく保ち続けるには、減塩を中心とした食生活の改善と運動が大切です」(中野先生)

減塩は、日本の「国民病」とも言われている高血圧を予防するだけでなく、さまざまな病気の予防にも役立ちます。ご自身の未来のためにも、ぜひ今のうちからはじめましょう。

参考文献:
1) 平成29年(2017)「人口動態統計」厚生労働省
2) 「高血圧治療ガイドライン2019」日本高血圧学会
3) Effects of low sodium diet versus high sodium diet on blood pressure,renin,aldosterone,catecholamines,cholesterol, and triglyceride.Graudal NA et al:Cochrane 1)atabase Syst Rev 4:CDOO4022,2017

自分の食塩摂取量を把握することが第一歩

みなさんは、ご自身の食塩摂取量をきちんと把握していますか?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、1日の食塩摂取目標量は、男性(12歳以上)は8.0g未満、女性(10歳以上)は7.0g未満ですが、「国民健康・栄養調査(平成29年)」では、男性は10.8g、女性の場合は9.1gの食塩を摂っているという結果が出ています。(20歳以上の平均値)

「病院では、患者さんに塩分摂取自己チェック表をお渡しするなどして、ご自身がどのぐらい塩分を摂っているかを知っていただく機会を作っています。1日の摂取量を知ろうとすることは、健康な方も必要なこと。1食につきどのくらいの塩分を摂っているかを知ることが、減塩の第一歩なのです」(中野先生)

例えば、日本食(和食)。

一汁三菜といったスタイルはバランスよく栄養が摂れるというメリットがある一方で、デメリットといえば食塩の多さが挙げられます。たとえば、一般家庭で作られる味噌汁の食塩相当量は1杯1gから2gを超えることも。野菜を多く入れたりだしを濃いめにしたりするなどで、塩分を減らす工夫をしましょう。

また、ラーメンの食塩相当量は1杯約5.5gから7gを超えるものもあります。
ほかの食事で塩分量の調整をしないと、ラーメン1杯で1日の食塩摂取目標量を超えかねません。食塩摂取量をおさえるために、汁を飲み干すのは控えましょう。

参考文献:
『毎日の食事のカロリーガイド』(女子栄養大学出版部)

“塩リバウンド”にご用心。塩分は少しずつ減らすのがポイント

「『減塩が大事』と聞いて無理に減塩をはじめる方がいらっしゃいますが、ダイエットと同じように続かずにリバウンドしてしまいがちです。塩分は少しずつ減らしていくことが減塩を続けるポイントです」(中野先生)

がんばりすぎは厳禁、ということは目から鱗です。まずはどのくらいから始めればよいでしょうか?

1日1g減らすことからまず始めてみましょう。食塩相当量1gというと、濃口しょうゆの場合は小さじ1強。味噌では大さじ1弱に該当します。無意識にかけているしょうゆを控えてみたり、味噌汁に入れる味噌の量を少し減らしてみたり、少しずつ調整していけばいいのです」(中野先生)

さらに、減塩をおいしく続けるためには「お酢」も役立ちます
お酢には塩味や食材の味を引き立てる作用があり、お酢を加えることで塩分を控えたお料理でもおいしさを感じられるのです。

減塩の食事はおいしくない、続けられない、という方が多いですが、お酢を活用することで減塩の食事をおいしく感じられ、塩分を減らした食事に慣れていくことができます。

お酢は日本人にとって身近な調味料。餃子のタレのしょうゆをお酢に置き換えたり、しょうゆや塩の量を控え、代わりにお酢を活用したり、取り入れやすさも魅力です。お酢も活用しながら食事の減塩をはじめていきましょう

取材・文/おいしい健康 編集部
監修/おいしい健康 管理栄養士