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揚げ物の種類による吸う油の量やカロリーの違い

カラリと揚がった鶏のから揚げ、えびの天ぷら、フライドポテト。食材を油で揚げるとコクと風味が加わり、独特のおいしさ。そう、おいしいんです。しかし、油分のとり過ぎは肥満の原因、動脈硬化や高血圧など生活習慣病の原因にもなります。

ひと言で「揚げ物」といっても、素揚げや唐揚げ、天ぷらなど種類もさまざまで、揚げる素材が吸う油量も異なることをご存知でしょうか? 

「油の量なんか気にして揚げ物なんか食べられるかっ!」という意見もありますが……まずは調べてみましょう。

揚げ物の吸油率の違いを知る

素材を熱した油の中に入れて加熱する「揚げる」という調理法。揚げ物は大きく4つに分けられます。

  • 素揚げ……素材をそのまま揚げる
  • 唐揚げ……小麦粉や片栗粉などをつけて揚げる
  • 天ぷら……小麦粉と卵を合わせた衣をつけて揚げる
  • フライ……パン粉をつけて揚げる


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写真左から素揚げ、唐揚げ、天ぷら、フライ

熱した油の中に素材を入れると、素材に含まれる水分が出る代わりに、油分を吸収します。その吸う油の割合のことを「吸油率(きゅうゆりつ)」と言います。

同じ油、温度で揚げ物をしても、使う素材や切り方などによって吸油率が異なります。じつは上に書いた4種類の揚げ方、級油率が低い順に並んでいます。

油は1グラムで9キロカロリーのエネルギーがあるので、摂取する油分の量が増えれば、摂取カロリーも比例して増えていきます。

この後、詳しく解説をしていきますが、要は油に触れる面積と素材に付ける衣の違いによって吸油率に差が出るのです。摂取する油量、ひいてはカロリーを減らしたい場合に気をつけたいポイントをご紹介しましょう。

揚げ物の吸油率を下げるコツ

1.表面積を小さくする

単純に、素材の面積が小さいほうが吸う油の量も少なくなります。油吸量を少なくするうえでは、トンカツはひと口大に豚肉を切るよりも、切り身一枚のほうがよいわけです。

細かく切った素材をまとめて揚げるかき揚げは、表面積が大きいため、ほかの天ぷらよりも吸油率はぐんと高くなります。

じゃがいもの場合、切り方の違いによる吸油率はこんなふうに。

  • くし型切り/皮付き4分割……2%
  • 拍子木切り/1cm角5cm長さ……4%
  • せん切り/5mm角5cm長さ……5%
  • 薄切り/1.5mm厚さ……15%


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写真左からくし形切り、拍子木切り、せん切り、薄切り

カロリーを計算をすると、100グラムのじゃがいもをくし形切りにして揚げたものは97キロカロリーなのに対し、薄切りのものは210キロカロリーと2倍以上にもなります。

薄切りじゃがいも、要はポテトチップス。ほかの切り方と比べると吸油率は雲泥の差。ポテトチップス好きな方は、この数字を頭の片隅におきつつ、適量をおいしくいただきましょう。


2.衣の量は少なく、薄く付ける

小麦粉や片栗粉、パン粉などの粉類は油を吸いやすく、衣を付けた揚げ物は素揚げに比べて吸油率が高くなります。鶏肉を例にしてみましょう。

  • 素揚げ……5%
  • 唐揚げ(片栗粉)……8%
  • 天ぷら(小麦粉・卵)……15%


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写真左から素揚げ、唐揚げ、天ぷら

上記のように吸油率には開きが出ます。衣を付ける際はできるだけ粉をはたいて量を少なくしたり、天ぷら衣の量を少なくするとよいでしょう。


3.パン粉は乾燥、細めを選ぶ

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同じパン粉でも乾燥、生パン粉では吸油率に違いがあります。乾燥したものよりも生パン粉のほうが油を吸いやすいのです。

吸油率を下げてカロリーを抑えるには、生よりも乾燥パン粉、さらには先に書いたように表面積を小さくするべく、細めのパン粉を選びましょう。


揚げ焼きはヘルシー?

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ここまで調べて、ふと疑問が。これまでに何度となく「揚げ焼きは少ない油で調理するのでヘルシー」だということを耳や目にしてきましたが、上記で書いてきた理論だけでいうと、揚げ焼きの吸油率が低いということにはなりません。

実際に、通常の揚げ方と少量の油で揚げるいわゆる「揚げ焼き」の吸油率に大差はありません。油の量が多いと素材をカラッと揚げることができ、揚げ焼きは使う油の量を減らすことができます。それぞれのメリットを考えながら、調理法を選ぶとよいでしょう。

違いを知った上で、賢く食べる

素材の表面積や付ける衣の量によって吸油率が変わることが分かりました。吸油率を下げ、摂取カロリーを低くするという点においては、材料は大きめに切り、何もつけない「素揚げ」がおすすめです。

ひとの体には油分も必要ですので、やみくもに油の摂取を減らす必要はありませんが、ぜひおいしく健康的に揚げ物とのお付き合いを!


参考資料/調理のためのベーシックデータ 第5版(女子栄養大学出版部)

写真・文/ミヤタナツ ※写真は1枚目を除く

編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
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