大豆のチカラで健康のためにできることを。

まめけん

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大豆は日本人にとって古くからなじみのある食品。
大豆の一粒には、
たんぱく質や食物繊維、
ビタミン、ミネラルなど多くの種類の
栄養素が詰まっています。
まめけんでは大豆がもつ食材としての
魅力や科学的な知見に基づく
健康課題への有用性を発信していきます。

筋肉量キープに大豆を
25歳過ぎたら
日々の食事に
大豆をプラス

いつまでも健康でいるためには
筋肉量を維持することが重要です。
若いころからの食習慣、
特に十分なたんぱく質の摂取が鍵を握ります。
さらに、植物性たんぱく質、動物性たんぱく質を
バランスよく摂ることが効果的だということを
明らかにしたのが徳島大学医学部 医科栄養学科
生体栄養学分野教授の二川健先生。
たんぱく質と筋肉の関係について
元日経ヘルス編集長の西沢邦浩氏が
お話を伺いました。

フレイルリスクをチェックして
筋肉を守るための行動を

西沢氏

高齢になっても自立して健康的な毎日を送るためには、フレイル予防が重要だと聞きます。まずは、フレイルについて教えていただけますか?

大豆のイラスト
二川先生

フレイルとは、加齢にともなって心と身体の活力が衰える状態のことをいいます。元気で自立した高齢者が、いきなり寝たきりや介護が必要な状態になるわけではなく、フレイルの時期があって徐々に介護が必要になっていきます(図1)。
要介護状態になってから心身の状態を回復させるのは難しいですが、フレイルを予防することや、フレイルの段階で改善することは可能であり、健康寿命の延長に繋がると考えられます。

図1.フレイルは要支援・要介護の前段階 図1.フレイルは要支援・要介護の前段階

図1.フレイルは要支援・要介護の前段階

西沢氏

フレイルはどのように診断されるのでしょうか?
また、フレイルになるリスクがあるのはどんな人ですか?


二川先生

フレイルの診断には統一された基準はないのですが、主要な診断方法としてはCHS基準(表1)とFrailty Index(注1)を用いたものです。
端的に変化が表れるのは歩行速度です。駅から家まで以前より時間がかかるようになったとか、同年代の友だちと歩いていて遅れてしまうなどの自覚があったら、要注意です。
フレイルという概念には身体機能だけでなく認知機能の衰えも含まれますが、根本には筋肉の減少があると考えられます。ですから、運動習慣のない人、運動不足の人はフレイルになりやすいですね。女性の場合は閉経によるホルモン量の変化で骨も筋肉も急速に衰えるので注意が必要です。

表1.日本人の身体的フレイル基準-改訂J-CHS 基準- 表1.日本人の身体的フレイル基準-改訂J-CHS 基準-

表1.日本人の身体的フレイル基準-改訂J-CHS 基準-
上記5つの項目のうち3つ以上に該当するものをフレイル、
1つまたは2つに該当するものをプレフレイル、
いずれにも該当しないものを健常とする
(引用: Satake S and Arai H,Geriatr Gerontol Int.
2020 Oct;20(10):992-993)

注1)Frailty Indexとは、症状、兆候、疾病、障害、検査値など
多面的な項目を30項目以上検討し、検討した項目数に占める該当数の割合を計算し0-1の実数で表す評価手法のこと。

西沢氏

ということは、フレイル予防には筋肉の維持が重要ということですね。筋肉を維持するための行動は何歳頃から意識して始めるべきでしょうか?

大豆のイラスト
二川先生

成長期は特別なトレーニングをしなくても筋肉が増えますが、成長による筋肉量のピークは25歳ごろで、その後、筋肉は年々減少していきます(図2)。ですから、25歳を超えたら筋肉量を維持する努力が必要です。何歳になっても運動と食事で筋肉を増やすこと、筋肉の減少を食い止めることは可能なので、今すぐ取り組みを始めることをおすすめします。

成長期を過ぎたら、動物性だけでなく、
植物性たんぱく質の摂取が必要

大豆のイラスト
西沢氏

筋肉量を増やすために重要な栄養素というとまずたんぱく質が挙げられます。
たんぱく質には肉・乳などの動物性と大豆などの植物性がありますが、筋肉量を増やすことを考えると、摂取するたんぱく質の種類に注意を払う必要がありますか?

二川先生

筋肉を作るという面では必須アミノ酸を豊富に含む動物性たんぱく質のほうが適しているといっていいでしょう。特に卵白やホエイ(乳清)はアミノ酸バランスが優れています。成長期の若い世代であれば、動物性たんぱく質に偏っていても特に問題はありません。
成長のピークを過ぎ、かつ運動習慣がない人は、筋肉が徐々に減少していくため、これを食い止めることが必要です。
そこで注目したい植物性たんぱく質に、大豆たんぱく質があります。大豆たんぱく質には、筋たんぱく質を分解する(筋肉の減少)酵素「Cbl-b(ユビキチンリガーゼ)」の働きを阻害する作用があるからです。

また、私たちが行った大豆(植物性たんぱく質)とホエイ(動物性たんぱく質)の配合比率を変えたエサをラットに与えた試験では、大豆とホエイを1:1の比率で配合したものが、筋委縮率(筋肉量の減少率)が最も低いことがわかりました。カゼイン、大豆、ホエイたんぱく質のみが配合されたエサを与えた場合と比較しても、最も効果的に筋肉減少を抑えたのです(図3)。

図3. 植物性たんぱく質と動物性たんぱく質摂取による筋委縮率比較 図3. 植物性たんぱく質と動物性たんぱく質摂取による筋委縮率比較

図3. 植物性たんぱく質と動物性たんぱく質摂取による
筋委縮率比較

(出典: 二川健ら.(2017).大豆たん白研究.

この結果からも筋肉を守るためには、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を1:1くらいのバランスで摂るのがいいと思います。筋肉の成長ピークである25歳を超えていて、今の摂取たんぱく質が動物性に偏っている方は、少しずつ植物性たんぱく質を摂る習慣をつけて欲しいと思います。

運動不足の人こそ
大豆を食べてほしい

西沢氏

先生は、運動不足の人の食事に大豆を追加し、筋肉に対する効果をみる研究を行っておられますね。

大豆のイラスト
二川先生

運動不足気味のタクシー運転手の皆さんに協力していただいて調査を行いました(※1)。25名の運転手さんに1ヶ月間、夕食に全員同じ日替わり弁当を食べてもらい、半数の12名にはさらに蒸し大豆50g(たんぱく質8g相当)を追加で食べてもらいました。夕刻から深夜にかけて仕事をされているので、夕食といっても一般の朝食か昼食にあたるイメージです。そして、調査期間中、特に運動はしてもらいませんでした。

大豆の写真
西沢氏

大豆をプラスすることで筋肉にどんな変化が表れましたか?


大豆の写真
二川先生

1ヶ月後に筋力テストを行ったところ、蒸し大豆摂取グループは非摂取グループと比べて握力、垂直跳びの成績が伸びるという結果が得られました。そこで太ももの筋肉の断面積を計測したところ、大豆非摂取グループは減少していたのに蒸し大豆摂取グループはわずかですが増量していました。特に運動をしていないのに筋肉が増えていたのです。
この結果からも、運動不足の人、あるいは病気などで運動できない人には、筋肉減少を抑制する効果が期待できる大豆たんぱく質をおすすめします。

大豆のイラスト

丸ごと大豆を朝食で
摂るのがおすすめ

西沢氏

1960年ぐらいまでの日本人はたんぱく質の7割ぐらいを植物性で摂取していたというデータがあります(※2)。植物性たんぱく質が、日本人の長寿にも関わっている可能性はありますか?

二川先生

そうですね。欧米では健康志向の強い人でも植物性たんぱく質をほとんど活用できていないのですが、幸い日本には昔から大豆を多用する食文化があり、豆腐や納豆をはじめ優れた大豆製品がたくさんありますから、日々の食事が長寿に寄与していたのかもしれませんね。

大豆料理の写真
大豆料理の写真
西沢氏

様々な大豆製品があるなかで、何を選ぶのが良いでしょうか?


二川先生

豆腐や豆乳も良いのですが、私は、蒸し大豆や煮豆というかたちで丸ごと食べるのが良いと考えます。丸ごとの大豆に含まれる食物繊維やポリフェノール、ビタミンなども筋肉量の維持に効果を発揮します(※3)。もちろん納豆もおすすめです。私は、もともと納豆が苦手だったのですが、大豆の研究を始めてから、毎日、食べるようになりました。

西沢氏

大豆を食べるタイミングとしては、いつが良いですか?


二川先生

アミノ酸のサプリメントなどはトレーニング直後に摂ると良いといわれますが、食事でたんぱく質を摂る場合は消化・吸収の時間が必要なので、運動前に摂ることをおすすめします。
1日の中だと朝食で摂ったほうが筋肉量の増加率が高いという研究報告もあります(図4)。 朝からお肉をたっぷり食べるのは少々重く感じるかもしれませんが、納豆や煮豆などの大豆製品ならおいしく食べられるのではないでしょうか。 ぜひとも朝食に大豆をプラスしてください。

筋重量の増加率のグラフ 筋重量の増加率のグラフ
大豆のイラスト

図4. 筋重量の増加率
マウスを朝食(活動期のはじめ)または夕食(就寝前)に
たんぱく質を多くとる2群に分けると、朝食群のほうが
筋肉量の増加が多かった。
この研究で、筋肉量の違いには体内時計が
関係することが確認された。
(引用: Cell Rep.2021 Jul 6;36(1):109336.

西沢氏

先生は大豆を活用した宇宙食の開発にも関わっておられるそうですね。


二川先生

はい、宇宙船や月面、火星で人類が暮らすようになったら、食事の中心は大豆になると考えています。たんぱく質、脂質、糖質、ビタミンなど生命の維持に必要な栄養素をバランス良く含み、水耕栽培が可能で数ヶ月で収穫できるのですから、宇宙食に最適です。
SDGsの視点からも環境負荷が大きい畜産を植物性たんぱく質で代替することが絶対に必要となるはずです。大豆は日本人にとって古くから馴染みのある食品ですが、未来を拓く最先端の食品でもあるのです。


西沢氏

日本人を支えてきた大豆が宇宙でも活躍する未来がくるとは。ほんとに大豆の可能性の大きさを感じますね。

二川氏の写真

二川 健氏
徳島大学医学部 医科栄養学科生体栄養学分野教授
宇宙食品産業・栄養学研究センターセンター長、宇宙航空研究開発機構有人宇宙技術部 宇宙医学生物学研究室主幹研究員ほか。ヘルスバイオサイエンス研究部生体栄養学分野教授を経て、2015年より現職。専門は、分子栄養学、宇宙生物学。無重力下での問題を緩和する機能性宇宙食の研究を、高齢化社会にも役立てることを提唱している。

西沢氏の写真

西沢 邦浩氏
早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長を務める。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総合研究所 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、 『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房) など。

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