大豆のチカラで健康のためにできることを。
大豆は日本人にとって古くからなじみのある食品。
大豆の一粒には、
たんぱく質や食物繊維、
ビタミン、ミネラルなど多くの種類の
栄養素が詰まっています。
まめけんでは大豆がもつ食材としての
魅力や科学的な知見に基づく
健康課題への有用性を発信していきます。
ダイエットにサヨナラを!
ための“ダイエット”
大豆中心の
「朝たんぱく」
ダイエットとは!?
CONTENT
現代ニッポン人、特に女性は、
たんぱく質摂取に問題あり
やせだけでなく肥満の人も、メンタル不調の人もたんぱく質不足傾向!?
日本人の中でも特に若い女性には、たんぱく質の摂取量が不足している人が多いようです。20〜40代の女性が1日に摂るべきたんぱく質の目標量は、身体活動量が普通の人で65〜103gですが、平均摂取量は60.2~64.9gとなっており、その差は20代で最大35.1g、30〜40代で最大38.9gとなっています。
1日のたんぱく質目標量と平均摂取量(g/日)
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
*2 厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和4年)」
伊藤先生は、「当院の患者さんの食事を分析すると、約8割はたんぱく質不足。やせている人も、肥満の人も、メンタルが不調の人も、たんぱく質が足りていないことが多いのです。」といいます。間違ったダイエットや食習慣によってたんぱく質が不足し、それが一因となって心や身体に不調が出ているケースが多いのだそうです。
私たちの身体は、筋肉はもちろん脳も内臓も肌や髪や爪も、その大部分がたんぱく質でできています。酵素やホルモンも、たんぱく質が材料。たんぱく質不足は心と身体の健康にとって、とても大きな問題となるのです。
摂りたいのは朝のたんぱく質
あなたは、朝・昼・夕の3食のうち、どこかでたんぱく質をしっかり摂るよう意識していますか?忙しい朝は簡単な食事で済ませて、栄養バランスを考えるのは昼食と夕食、もしくは昼もあまり時間がないので夕食のみという方も多いかもしれません。「朝こそ、1日のたんぱく質摂取目標量の1/3より多く摂ってほしい。朝食で(食材の重さではなく)たんぱく質の量として30g、昼食と夕食でそれぞれ20~25gくらいの摂取を目指せるといいですね。」と伊藤先生。
たんぱく質を構成しているアミノ酸は寝ている間にも筋肉の補修などで消費され、朝は特に枯渇している可能性が高いので、意識的に補う必要があります。また、たんぱく質は分解されて体内で利用され、ためておくことができません。そのため、朝は多めに摂り、昼、夜もコンスタントに補充することが大切なのです。朝のたんぱく質が重要な理由はほかにもあります。
朝のたんぱく質が、その日の体調と
メンタルを整えてくれる
朝にたんぱく質を摂るメリット
-
代謝量を上げて、
太りにくい状態を作る - 筋肉量の増加率を高める
-
気分を向上させ、
対人関係が良好に - 夜の良質な睡眠を促す
3大栄養素の中でもたんぱく質は食後の熱産生によるエネルギー消費力が高く、体温を上げて代謝を高めてくれます。朝に充分な量のたんぱく質を摂ることで代謝が上がるので、そのまま元気に活動すれば、その日1日、太りにくい状態で過ごすことができます。(※1)
また、たんぱく質を朝食で摂った場合の筋肉の増加率が昼食や夕食の場合よりも高いという研究報告もあります。(※2)
筋肉が減ってしまうと代謝が下がって体脂肪を燃やしにくい体質になるので、体重を減らしたい人も筋肉量の維持・アップのために「朝たんぱく」は効果的なのです。
たんぱく質はホルモンの材料にもなります。「メンタル不調の原因のひとつは脳内ホルモンの不足。無理なダイエットを続けるうちに、気分が落ち込み、うつ状態になっている患者さんの多くは、たんぱく質が足りていません。」と伊藤先生。
逆に、朝からしっかりたんぱく質を摂っていると、前向きな気分になるだけでなく、対人関係も良くなるという研究結果(※3)があります。その日の仕事や勉強で成果を上げることにまで、朝のたんぱく質が一役買ってくれるのですね。
さらに、朝にたんぱく質を摂ることは良質な睡眠とも関係していることがわかっています。たんぱく質を構成するアミノ酸の一種である「トリプトファン」は、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の原料となる神経伝達物質の「セロトニン」を生成します。
「メラトニン」は朝、光を浴びてから14〜16時間後に分泌されるため、たんぱく質を朝食でしっかり摂り、日光を浴びることで、「メラトニン」の分泌を促し、良質な睡眠につながるのです。(※4)
大豆中心の朝たんぱくで
「正しいダイエット」!
ダイエットとは、正しい食事のこと
日本語ではもっぱら「やせること」という意味で使われている「ダイエット」ですが、英語で「DIET」は食事や食習慣を表す言葉。「日本でも正しい食事で心と身体を整え、健康に導くという意味で使ってほしい」と伊藤先生はいいます。ただ体重を減らすことだけを考える「間違ったダイエット」に取り組んできた人も、食生活を改善したいと考えている人も、「正しいダイエット」でヘルシー&きれいを目指してみませんか?
「正しいダイエット」のベースにしたいのが、朝のたんぱく質。忙しい朝に、たんぱく質が豊富な食事をするのは難しいと思われるかもしれませんが、朝食の定番食材の牛乳、ヨーグルト、チーズ、卵からは動物性たんぱく質を摂ることができます。そして、大いに活用したいのが、植物性たんぱく質が豊富に含まれる大豆製品です。動物性たんぱく質源に含まれないポリフェノールなどの抗酸化物質や食物繊維が含まれ、豆腐や納豆、蒸し大豆、高野豆腐、きな粉など、私たち日本人にとってなじみ深く、バリエーションも豊富な大豆製品は、朝食に手軽に食べられるたんぱく源として魅力的です。
動物性と植物性を
一緒に摂るメリットも
私たちの身体は、食事から摂ったたんぱく質を胃腸で分解してアミノ酸として吸収し、このアミノ酸を使って生命活動に必要なたんぱく質を合成しています。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は消化吸収にかかる時間にずれがあるので(植物性のほうがややゆっくり)、1回の食事で両方摂っておくと、たんぱく質合成に必要なアミノ酸の血中濃度が高い状態が長く続きます。朝は大豆だけ、昼と夕は肉や魚というメニューではなく、毎食、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の両方を摂るのがおすすめです。
朝のたんぱく質の中心にしたい
大豆のチカラ
大豆にはたんぱく質をはじめ、私たちの体調を整えてくれる様々な成分が含まれています。中でも、「正しいダイエット」に役立つ注目成分についてご紹介します。
大豆たんぱく質
植物性食品の中で豆類はたんぱく質を多く含みますが、中でも大豆は高たんぱく食品です。
また、大豆たんぱく質に含まれるβ-コングリシニンという成分には、内臓脂肪や血中の中性脂肪を減少させる効果があることがわかっています。(※5)
出典 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
大豆イソフラボン
大豆に含まれる大豆イソフラボンは抗酸化力が強いポリフェノールで、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをもっています。更年期症状を和らげたり、更年期以降の骨量減少を抑える作用、月経周期に伴う不調などを改善する作用などが確認されており、女性ホルモン分泌量が少ないときはそれを補うように、多いときは抑えるように、穏やかに働く成分です。
さらに、腸内で腸内細菌が大豆イソフラボンから作り出すエクオールという物質は、女性ホルモンを助ける働きだけでなく、食欲抑制効果があることもわかっています。(※6)
食物繊維
大豆は食物繊維が多い代表的食品のひとつです。オリゴ糖など腸内細菌の餌になる発酵性食物繊維も多いため、腸内環境を整えるのに役立ちます。また、発酵性食物繊維から作られる短鎖脂肪酸には肥満を抑える作用があることがわかってきています。(※7)
蒸し大豆はトップクラスの食物繊維量。
水溶性、不溶性の両方が摂れる!
出典 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
食物繊維の種類
サポニン
大豆に多く含まれる渋み成分であるサポニンが持つ抗酸化作用も注目されています。LDLコレステロール値を下げる、血流を改善するなどの働きが確認されているほか、抗糖化作用(※8)もあり、肌の調子を整える効果も期待できます。
今日からはじめる!
大豆中心の朝たんぱくごはん
~忙しい朝でもたんぱく質30gを摂るコツ~
大豆製品を中心に朝食でたんぱく質30gを摂る場合、大豆製品を2品以上、動物性たんぱく質を含む食品1品以上を目安に摂りましょう。
大豆製品・その他の食品に含まれるたんぱく質量
出典 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
*参考値
大豆中心の朝食例
-
※1
厚生労働省 e-ヘルスネット 食事誘発性熱産生/DIT(2024年10月閲覧) -
※2
Shinya Aoyama et al. Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock. Cell Rep. 2021:36(1):109336. -
※3
Sabrina Strang et al. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20;114
(25):6510-6514 -
※4
Fukushige H, Fukuda Y, Tanaka M, Inami K, Wada K, Tsumura Y, Kondo M, Harada T, Wakamura T,Morita T. Effects of tryptophan-rich breakfast and light exposure during the daytime on melatonin secretion at night. J Physiol Anthropol, 33(1): 33, 2014. -
※5
Mitsutaka Kohno et al. Decreases in Serum Triacylglycerol and Visceral Fat Mediated by Dietary Soybean β-conglycinin. Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, 2006:13(5), 247-255. -
※6
Takafumi Mizushige et al. Mechanism for Equol-Induced Anorectic Effect -Analysis of Free and Conjugated Equol Concentrations-. Soy Protein Research, Japan, 2012:15, 165-169. -
※7
Hidenori Shimizu et al. Regulation of host energy metabolism by gut microbiota-derived short-chain fatty acids. Glycative Stress Research 2019;6(3):181-191. -
※8
Masayuki Yagi et al. The Evaluation of Glycative Stress and Anti-glycation Effect. Oil Chemists’ Society 2018:第18巻 第2号:67-73.
伊藤明子(いとうみつこ)氏
小児科医、公衆衛生の専門医
赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。同時通訳者。二児の母。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科卒業。大学在学中から同時通訳に従事、米国大統領など国賓の通訳として活動。診療のほか研究、講演、メディア出演など幅広く活動。近著に
『医師が教える子どもの食事50の基本>』(ダイヤモンド社)
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