日々の生活のこと、治療のこと、仕事のこと、将来のこと・・・潰瘍性大腸炎とともに生きる患者さんの体験談を紹介します。


20年ほど前からたまに血便が出ていたが、痔だと思い込んでいた。あるときロールケーキを食べたことをきっかけに下痢が止まらなくなり、総合病院に入院。点滴治療後に受けた検査で、潰瘍性大腸炎と診断された。以降、調子がいいときは好きなものを食べて元気に過ごし、悪いときは仕事を休んで気持ちまで落ち込むなど、調子の波に翻弄されてきたが、6年前の出産前後から症状が落ち着き、現在も寛解を維持している。

20年ほど前から、血便が出るように。当時ほかの症状がなかったので痔だと思って放っていましたが、あるときロールケーキを食べたことをきっかけに下痢が始まりました。最初は生クリームにあたったのかなと思っていましたが、なかなか止まらず、総合病院の消化器内科を受診。1週間入院して点滴をしましたが一向によくならず、大腸の内視鏡検査を受けたところ、潰瘍性大腸炎と診断されました。

入院したのは看護師の母が勤める病院でした。検査を担当した先生の許可を得て、母も一緒に検査室に入り、モニターを見ていました。母は私の大腸のびらんを見て、潰瘍性大腸炎だとわかったのだと思います。「ああ~」とつらそうにため息をもらしていました。

その後大きな総合病院に転院し、主治医も変わりました。新しい先生は「今はいろいろな治療薬が出ているよ」と安心させてくれた一方で、「ひどくなったら大腸を摘出しなければならない」ということもおっしゃいました。
最初は言うのが恥ずかしくて、病気のことはまわりに隠しておこうと思いました。でもいろいろ調べているうちに患者には有名人もいるし、患者数も増えているので、むしろまわりに伝えて理解してもらったほうがいいのかもしれない、と思い直しました。

治療には紆余曲折ありました。最初に使った薬剤では効果が出ずに、ステロイドの坐剤や注腸剤、経口薬も使いましたが効果が見られず、入院して点滴治療を受けました。それでやっと落ち着きましたがその後も症状が安定せず、前の薬に戻ったりステロイドを使ったりと、とにかくいろいろな薬を使いました。
「もしこの薬が効かなかったら、次はこの薬があるよ」と先生はいくつかのパターンを示してくれたので、治療に関してはあまり不安がありませんでした。副作用や感染症のことも気になるので先生と相談しながら薬を選びましたが、なかなかこれという薬が見つからず、先生も手探り状態だったと思います。

治療を進める中、よくなったと思うと再燃し、なかなか寛解を維持することができませんでした。気持ちにも波があり、毎年夏になると調子が悪くなって3カ月くらい仕事を休み、入院や自宅療養といったことが続きました。調子が悪いときはこのまま仕事ができなくなるのかも、と落ち込みました。一方、寛解期に入るとすっかり元気になって好きなものを食べたり飲んだり。調子に乗って食べ過ぎてまた具合が悪くなったりしました。

ステロイドも使ってきました。使い始めて数年たったころ、顔がパンパンに腫れたり、テレビで食べ物を見ると無性に食べたくなったり、夜も眠れなくなるなど精神的にも不安定な状態が続き、ステロイドは中止することに。

ちょうどそのころに新薬の治験の案内があり、ステロイドをやめるきっかけとなりました。以降、再燃してもステロイドは使わずに治療を続けています。

40歳で出産しましたが、出産前後で寛解の状態になりました。現在はストレスがかかったときなどに体調が悪くなることもありますが、あまりひどくなることはなく、寛解状態を維持することができています。
先生はいつも私に寄り添ってくれます。寒くなるとトイレの回数が増えて困ると伝えると「腹巻きをするといいよ」とアドバイスをくれるなど、日常生活で困っていることを相談すると丁寧に対応してくれます。入院したときは毎日ベッドサイドに来て、10分ほど話をしてくれました。調子のよい今は、先生といろいろ話す時間は少なくなりました。たくさんの患者さんを診ている忙しい先生ですから、仕方がないかもしれませんね。

職場には病気のことを伝えており、なるべく仕事でストレスがかからないように気づかってもらっています。子どもが発熱したときには、すぐに帰宅させてもらえるなど、子育て面での配慮にも感謝しています。以前は調子が悪くて研修会に参加できなかったり、取りたい資格が取れなかったりということがあって、ほかの人から取り残されている感じがありました。
調子がよくなってからは、体調に不安なく仕事に取り組めています。もともとやりたかった仕事ができていますし、表に出る仕事や責任ある仕事もまかせてもらっているので、やりがいを感じています。
結婚したタイミングで実家の近くに住むようになったので、今は体調が悪いときに両親に手伝いに来てもらったり、子どもの世話をしてもらったりでとても助かっています。夫も料理や掃除などの家事を快く手伝ってくれます。
家族とのお出かけでは、ショッピングモールなどのエアコンが効きすぎているところには行きません。突然具合が悪くなると困るので、長期間の旅行も避けています。近くに出かけるとしても、トイレが不安でバスには乗れないので車で行きます。自分の病気のせいで、家族に我慢をさせていることがあると思うと心苦しいですが、みんなの支えがあるからこそ、私は病気と向き合っていけるのだと思っています。

調子がいいときに「また調子が悪くなったらどうしよう」と思うと、本当に悪くなってしまうものです。私も落ち込むことはありましたが、「自分はよくなる!」と信じ続けて、いい先生やいい薬に出会うことができました。しんどいときは「よくなれば、またおいしいものが食べられる。お酒だって飲める」とつらい時期のあとに楽しいことが待っている、と思うようにしてきました。
トイレが心配なら先にトイレのことを調べておけば、何とかなります。まわりにも「何度もトイレに行くかもしれないけれどよろしく」とか「辛いものを食べるとトイレに行きたくなるから、辛いものはパス!」などと伝えておけばOK。自分自身、あっけらかんとしていれば、まわりも特別なこととは思わず、案外気軽に対応してくれますよ。