いつものご飯に「麦」を加えて栄養価&食べごたえUP
公開日: 2020年7月29日
食事に制限があるけれどおなかいっぱい食べたい、バランスのよい献立をつくるのが難しい...、という悩みをお持ちではありませんか。
献立を考えるときには、おかずのことに重きをおきがちですが、文字どおり食事の中心になる「主食」にも注目してみましょう。
スーパーのお米コーナーをのぞくと、白米以外の穀類も販売されています。使ったことがない、なじみがないから買わない、という方が少なくないかもしれませんが、穀類の調理はとても簡単で、白米にない栄養素を豊富に含むものもあります。今回はそのなかでも、麦を使った「麦ご飯」についてご紹介します。
「主食」が大切な3つの理由
麦について知る前に、献立における<主食の大切さ>について考えてみましょう。
三大栄養素(エネルギー産生栄養素)と呼ばれるものには炭水化物(糖質と食物繊維の総称)、脂質、たんぱく質があり、これらは人間の体を動かすエネルギー源となります。このうちの炭水化物が穀類の主成分です。
呼吸や体温の維持など、生きていくためにはエネルギーが使われ、動かず安静にしていたとしても、成人女性でおよそ1200kcal、成人男性でおよそ1500kcalが1日で必要になります。仕事や家事、運動などをすれば、それ以上のエネルギーが必要です。
よく「バランスの良い食事」が大切といわれますが、一般の健康な人で、炭水化物50〜65%、脂質20〜30%、たんぱく質13〜20%という比率で食事をすることが理想的なバランスといわれています※1。つまり、エネルギーのうち約半分は炭水化物からとる必要があるのです。
なお、糖尿病の患者さんの場合は、炭水化物50〜60%、たんぱく質20%、残りを脂質というバランスが推奨されています※2。
糖質は、たんぱく質や脂質よりも優先して体や脳のエネルギー源として使われますが、糖質が不足すると集中力の低下や疲労につながるだけでなく、不足分がたんぱく質からエネルギーとして使われてしまうため、筋肉量が落ちる原因にもなります。しかし、反対にとりすぎると脂肪として蓄えられてしまうので、摂取バランスに注意しましょう。
①穀類の主成分である炭水化物(糖質+食物繊維)は主要なエネルギー源
②1日に必要なエネルギーの50〜65%を炭水化物からとるのが理想的
③集中力を高め、疲れにくい体をつくるうえで炭水化物が必要不可欠
不足しがちな食物繊維を押麦でカバー
炭水化物には糖質と食物繊維が含まれますが、食物繊維は1日に女性で18g以上、男性で20g以上とることが推奨されています(男女ともに18〜64歳の場合)※3。しかし実際には、男女(20〜59歳)ともに平均13g前後しか1日に食物繊維をとれていません※4。
そこで、おすすめしたいのが「押麦」です。
麦というと、製粉してパンや麺類などに加工されることが多い「小麦」を思い浮かべる方が多いと思いますが、ビールの原料や麦茶などに使われるのが「大麦」で、大麦を調理しやすくするため平たく加工したものが押し麦です。
押麦は精白米と比較すると、食物繊維の総量が約24倍※5。食物繊維には水に溶けやすいものと溶けないものの2種類あり、それぞれ違う役割をするのでどちらもとる必要がありますが、両方をバランスよく含むのが押麦の特徴です。
またそのほかに、糖質の分解や代謝を助けたり、肌や髪の健康を保つ栄養素ビタミンB群や、強い抗酸化力のあるビタミンEも含んでいます。
白米の一部を押麦に置き換えるだけでOK
押麦の栄養価が高いとはいっても、それだけでは食べにくいため、白米に混ぜて炊くのがおすすめです。
ご飯茶碗一杯(150g)で食物繊維量を比較してみましょう。たとえば1日の3食すべてを白米のご飯から押麦2割のご飯に替えだけで、4.5gも食物繊維がとれる計算になります。
150g中の食物繊維量※6
白米のみ 0.5g
麦ご飯(押麦2割) 1.5g
麦ご飯(押麦3割)2.3g
麦ご飯(押麦5割)3.5g
押麦の割合を増やすほど食物繊維量が増えますが、食物繊維が多いと、おなかが張ったり、逆にゆるくなることもあります。慣れるまでは、白米の2割を押麦に置き換えるところからはじめて、好みや献立のバランスに応じて押麦の割合を増やしていくとよいでしょう。
炊き方はとても簡単。押麦は下ごしらえがいらないのも魅力です。
①といだ白米を炊飯器の内釜に入れて、白米の分量に合わせた水を目盛り通りに注ぎます。
②押麦をそのまま加え、さらに追加の水(押麦の倍量)を加えてさっと混ぜます。
③30分ほど浸水させ、あとは普通に炊いて蒸らせばできあがり。
白米を2合(300g)使用する場合の押麦と追加の水の目安量です:
・押麦を2割にするとき:押麦60g、追加の水120ml
・押麦を3割にするとき:押麦100g、追加の水200ml
・押麦を5割にするとき:押麦220g、追加の水440ml
※割合は、炊き上がり時の麦ごはん全体量に対する押し麦の割合です。
消化の力が弱いお子さんや年配のご家族がいる場合は、白米だけで炊いて取り分け、麦ご飯をめしあがる方の分だけ、15分ほどゆでた押麦をあとから白米のご飯に混ぜてもいいですね。押麦はまとめてゆでて、冷凍しておくと便利です。もしくは、麦ご飯をまとめて炊いて、冷凍しておくのも◎。
押麦はプチプチとした食感で、白米よりも噛みごたえがあり、咀嚼する分、満腹感も得やすくなります。いつもと同じ重量を食べるのでも、食べごたえや栄養価の満足度を上げることができます。
いいことづくめの麦ご飯、さっそく今日から試してみませんか。
※1、3 厚生労働省,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※2 日本糖尿病学会(南江堂),『糖尿病診療ガイドライン2019』編・著
※4 厚生労働省,「平成30年国民健康・栄養調査」
※5 文部科学省公表,「日本食品標準成分表(七訂)」
※6 文部科学省公表,「日本食品成分表2015年版(七訂) 追補2018年版」
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