読む、えいよう

「心のえいよう」料理研究家 藤井恵さん 無理なく、手間なく、料理を楽しめるように

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「月刊おいしい健康」 では、料理研究家の方々にレシピを考案していただいています。「料理を考え、作ること」を仕事にしている方々は、心身ともに健やかでいるためにどのようなことに気をつけているのでしょうか? 「心のえいよう」と題して、お話を聞いていきます。

気軽に、手間なくできるお弁当を

新型ウイルスの心配をしながらも、季節はめぐり、うららかな春がやってきました。新年度を迎え、お弁当生活が始まるという話を耳にするように。
「月刊おいしい健康」4月号のテーマは「#家弁」。家族のために作るなら、あなたのお昼用にも作ってみてはどうでしょう?  リモートワークの日にも、お弁当があれば作業の手を止める必要もなく、ぐっと気持ちが楽になります。もちろん、休みの日だって、家族みんなでお弁当を食べてもいい。きっと、いつもと違うランチ時間になるはずです。あえて、家でお弁当を。それが「#家弁」です。

朝作っておくのですから、できるだけ手間はかけたくありません。朝ごはんを作りなら、負担なくできるお弁当にしたいもの。料理研究家の藤井恵先生が実現してくれました。

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7種のお弁当は、肉も魚もあれば、野菜もたっぷり。焼くのも茹でるのも、小さめのフライパンひとつさえあればできるので、時間も手間もかかりません。

藤井さん自身、二人の娘さんのために15年間もお弁当を作り続けてきました。料理研究家として働きながら、家事をこなしながら、なおかつ、お弁当も作らなければならない。さすがの藤井さんも毎日作るにはどうしたらいいか思案したと言います。

「お弁当の本を見ると、いろいろなおかずがたくさん詰まっているものが多くて。運動会や遠足といった特別な日だけならいいですが、毎日これでは続けられないと思ったんです。朝って忙しいでしょう? 朝ごはんも作るし、子供たちを着替えさせるといった準備もあれば、送り迎えもある。その日の仕事も段取りしたいし。だから、できるだけシンプルにして、組み合わせのパターンも決めることに。気軽に作れるようにしたいと考えたんです」

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おかずは1品か2品でいい。たんぱく質と野菜が摂れればよし。味つけも凝らずに、調味料は少なく。そう決めたらぐっと気持ちが楽になったと振り返ります。

「例えば、炒めものなら、肉と野菜、きのこ類をたっぷり入れれば一品で十分。魚を焼いたら、あとは野菜を茹でて和え物にすればいい。そういうパターンができると、あれこれ悩まなくてもすむので、二日酔いでも作れたくらいなんです(笑)。無理をしないようにしたおかげで、お弁当作りを続けることができました」

15年間、どんなに仕事が忙しくても、慌ただしい朝でも、お弁当を作り続けました。親子ゲンカをした日もしかりです。

「ケンカの理由は忘れてしまいましたが、その日に作ったお弁当は覚えています。あまりに腹が立ったので、ごはんもおかずもぎゅうぎゅうに詰め込んで1kgもあるお弁当にしたんですよ(笑)。娘も意地になって食べてきましたね。空っぽのお弁当箱がかえってきたので笑ってしまいました」

夕飯の後はプライベートと決める

娘さんたちは成長し、藤井さんのお弁当作りは終わったものの、料理研究家としての仕事は続いています。日々、忙しく働くなかで、どんなことに気を配ってすごしているのでしょうか?

「自宅が仕事場ですし、料理という日常のことが仕事になっているので、境目がはっきりしません。どんな時も、つい料理のことを考えてしまうと休まらないので、夕飯からはプライベートの時間として意識するようにしています」

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お酒好きな藤井さんらしく、ちょっと飲みつつ、リラックスしながら夕ご飯の支度を始めるそう。できるだけ、夜に仕事はしないように。

「なんでもぱっとやりたい性格なんです。だから、お酒を飲むのも早いし、お風呂の時間も短いし、やることが終わったらすぐ寝ちゃう。仕事があるときは朝早く起きてやればいい、としています」

コロナ禍前は、仕事が済んだら近所のお店へ行き、お酒を楽しむ時間も息抜きだったそう。帰りはあえて家まで歩き、酔い覚ましの散歩を楽しんでいたことも。

「新しいお店を見つけるのも好きだし、話題のお店に行くのも楽しいし、おいしい料理とお酒をいただける時間っていいですよね。自分で食べたいものを作るのもいいし、誰かが作ったものを食べたい時もある。そういう時間があると、仕事もがんばれます。料理するのも、食べるのも好きで、それが仕事にできているのは本当に幸せなことだと思っています」

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そう話しながら、テキパキとお弁当のおかずをスタッフに分けてくれます。気がつくと、その傍らには、韓国海苔やたくあん、韓国風おでん、えごまの葉などが並んでいます。

「自分たちで好きに手巻きキンパ(韓国のり巻き)にして食べましょう」(ソーシャルディスタンスを保ち、衛生面に気をつけていただきました)

食べる側も楽しく、作り手も手間なくできる。そんな藤井さんの姿勢が、手巻きキンパにも反映されていました。
「どんなことも、無理なく、ぱっとやりたい性格だから」と言いますが、その姿勢から生まれたお弁当のロジックは、たくさんの人の気持ちを楽にしてくれます。あなたのお弁当ライフも、きっと変わるはず。ぜひ「#家弁」を、取り入れてみてください。

撮影:鈴木泰介
編集:おいしい健康編集部
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