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【管理栄養士監修】腎臓にいい食べ物はある?慢性腎臓病の食事療法

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何らかの腎障害が3カ月以上続くと「慢性腎臓病」と診断されます。腎臓の機能を今より低下させないようにするには、食生活の改善が欠かせません。
では、腎臓にいい食べ物はあるのでしょうか。実は腎臓の機能を長持ちさせる食べ物が特にあるわけではなく、大切なのは食べ方です。
まず取り組むべきなのは「減塩」です。さらに腎機能が低下し病気が進んだ場合は、たんぱく質やカリウム、リンの摂取量を意識する必要も出てきます。慢性腎臓病と診断された場合の食事療法について解説します。

目次
1.減塩して腎臓の負担を減らしましょう
1-1.食塩を減らして腎機能を保護します
1-2.減塩生活は自分ができることから始めましょう
1-3.調味料や加工品の食塩をチェック
1-4.加工品の「隠れ食塩」に注意
1-5. 調理法で無理なく減塩しましょう
1-6.食べ方を変えるだけでも減塩に繋がります
2.病気が進んだら意識したい栄養素とは?
2-1.たんぱく質制限は医師に相談
2-2. さらに病気が進んだらカリウム、リンを意識
3.まとめ

1.減塩して腎臓の負担を減らしましょう

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1-1.食塩を減らして腎機能を保護します

食塩を摂りすぎると、血液中の食塩濃度や浸透圧が高くなり、それをもとの濃度に戻すために水分が必要となり、体に水分を溜め込みやすくなります。からだに入った水分は血液に集まるため、血液の量が増えて血圧が高まります。腎臓は血管が多い臓器なので、血圧が高くなると負担が大きくなります。

また、血液中の食塩は腎臓から尿中に排せつされますが、機能が低下した腎臓にとって、多くの食塩を排せつするのは大きな負担になります。

このような理由から、慢性腎臓病と診断されたら、食塩を減らす必要があるのです。

1-2.減塩生活は自分ができることから始めましょう

国が定める、健康な人の1日あたりの食塩摂取目安量は男性7.5g、女性6.5gです。(※1)
しかし、実際の1日あたりの食塩摂取平均量は20歳以上の男性10.9g、女性9.3gです。(※2)

血圧が高い人や腎機能が低下している人は、食塩は1日6g(小さじ1杯)までとされていますが、最初からこの量を目指すのはかなり困難です。平均量を大きく上回っている人は、まず1日10g(小さじ2杯程度)を目指しましょう。

また、「食塩は1日6gまで」とすると難しく感じるかもしれませんが、塩分をとりすぎた時は次の食事で減塩を意識するなど、前後の食事で調整すると続けやすくなります。

1-3.調味料や加工品の食塩をチェック

減塩は調味料の食塩を意識することから始めましょう。 例えば、下記のように工夫すると食塩を減らしやすくなります。

●調味料はかけるのではなく、皿にとってつけて食べる

冷奴や目玉焼き、餃子、焼肉などを食べるときはソースやしょうゆなどの調味料をかけるのではなく、いったんお皿に出して、つけて食べるなど工夫をすることで食塩を減らせます。 ただし、お皿に出しても多くつけてしまっては意味がないので注意しましょう。

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●食卓にしょうゆやソースを置かない

調味料が食卓にあると、味に変化が欲しくてついついかけてしまいがち。食塩のとりすぎを防ぐには、食卓にしょうゆやソースなどの調味料を置かないようにするのも効果的です。

●お菓子を食べる場合は塩分0.5gくらいに収める

スナック菓子やせんべいなど、菓子類にも塩分が含まれているので、食べる量には注意が必要です。菓子類から塩分をとるのは避けたいですが、もし食べる場合は商品の「食塩相当量」などを確認し、1日に菓子類からとる塩分量は0.5gくらいに抑えましょう。(※3)

1-4.加工品の「隠れ食塩」に注意

漬物、ベーコンなどの加工肉、ちくわなどの練り製品は塩分が多いので、食べる量に気をつけましょう。

主食に含まれる「隠れ食塩」にも注意が必要です。実は食パン(6枚切り)の1枚には0.8gほどの食塩が含まれています。(※3)
さらに麺類はスープの塩分だけでなく、麵自体にも食塩が含まれていることを考える必要があります。 例えば
・うどん(ゆで)124g…塩分0.7g
・中華めん(ゆで)200g…塩分0.4g
・スパゲッティ(ゆで)240g *1.5%食塩水でゆでた場合 …塩分1.0g
となります。(※3)

加工食品のパッケージに記載されている「食塩相当量」を確認し、できるだけ食塩控えめの商品を選ぶようにしましょう。

1-5.調理法で無理なく減塩しましょう

●香味野菜やハーブを使う

ねぎ、しょうが、にんにくなどの香味野菜や、パセリ、バジル、ローリエなどのハーブを料理に加えると、塩分が少なくてもおいしく感じられます。

●香ばしさを加える

野菜、肉、魚などをグリルや網で焼いて香ばしさを出すと、薄味でも物足りなさを感じにくくなります。

●だしや食材のうまみをきかせる

昆布や煮干しなどでとるだしは、調味料の代わりになります。また、きのこやトマトなどうま味の強い食材を使うと、少ない塩分でも、満足感のある味になるでしょう。

●新鮮な食材を使う

新鮮な食材や旬の食材はうま味や風味が強いので、調味料をあまり使わなくても料理にメリハリがつきます。

●減塩調味料を使う

減塩調味料を使えば、簡単においしく減塩できます。ただし、きちんと計量して使うことが大切です。
また、減塩調味料はカリウムが含まれていることが多いので、カリウム制限がある方はパッケージをよく確認してください。

1-6.食べ方を変えるだけでも減塩に繋がります

●みそ汁は1日1杯までに

みそ汁1杯には約1.5g(※4)の食塩が含まれるため、1日1杯を目安にしましょう。具材を多くして汁を少なめにすることでも塩分を減らせます。

●麺類のスープは飲まない

例えばラーメンをスープまで飲み干すと、下記のように1杯で1日の塩分摂取目標量になってしまいます。

しょうゆラーメンの場合(※3)
・スープを含めた塩分含有量4.5g
・麺と具のみ食べた場合:塩分摂取量1.2g
・麺と具とつゆ半分飲んだ場合:塩分摂取量2.9g

もし食べるときは、スープを残すようにしましょう。

●料理の味にメリハリをつける

すべて薄味だと食事を楽しめない場合は、一品だけしっかり味をつけ、献立にメリハリをつけるといいでしょう。

2.病気が進んだら意識したい栄養素とは?

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2-1.たんぱく質制限は医師に相談

腎臓病がある程度進むと、たんぱく質を制限する食事療法が必要になることがあります。 「たんぱく質制限」とは、肉、魚、大豆製品などを減らし、油脂や炭水化物(砂糖など)で必要なエネルギーを補う方法です。

たんぱく質制限は難しく、中途半端に行うとエネルギー不足になり、筋力が低下してしまう恐れがあります。かかりつけ医に相談し、管理栄養士の指導を受けながら行ってください。

2-2.さらに病気が進んだらカリウム、リンを意識

腎臓病がさらに進むと、カリウム、リンなどのミネラルを体外に排せつするのが難しくなります。カリウムが増えすぎると筋肉が麻痺し、最悪の場合は心臓の筋肉が麻痺して命にかかわることもあります。

カリウムが多く含まれる生野菜や果物は、食べる量に注意しましょう。ゆでたり、水にさらしたりして、カリウムの量を減らす工夫も必要です。

リンが増えすぎるとカルシウム値が低下し、骨が弱くなるなどの心配があります。しかし、たんぱく質を制限するとリンも自然と少なくなるので、カリウムほど気にしなくて大丈夫です。

3.まとめ

慢性腎臓病の食事は、できることを無理なく「続ける」ことが大切です。 できる範囲で食事記録をつけて、栄養素の過不足を管理栄養士にチェックしてもらうのもおすすめです。かかりつけの病院や自治体の保健センターにいる管理栄養士などに相談してみてください。

※1  厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
※2  厚生労働省「国民・健康栄養調査(令和元年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000710991.pdf
※3 女子栄養大学出版部「減塩のコツ早わかり」
※4 女子栄養大学出版「毎日の食事カロリーガイド(改訂版)」

参考:東京医学社「エビデンスに基づく CKD診療ガイドライン2018」
参考:女子栄養大学出版部「食事療法はじめの一歩シリーズ 腎臓病の満足ごはん」

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
文:東 裕美