「心のえいよう」料理研究家 小田真規子さん 繰り返し作ることが、料理を楽しむ秘訣に
公開日: 2021年5月17日
「月刊おいしい健康」
では、料理研究家の方々にレシピを考案していただいています。「料理を考え、作ること」を仕事にしている方々は、どのような考えで料理に向き合っているのでしょうか。また、心身ともに健やかでいるためにどのようなことに気をつけているのでしょうか。「心のえいよう」と題して、お話を聞いていきます。
失敗を怖らがずに、作ってみてほしい
とんかつや唐揚げ、チャーハンにオムライス……。カロリー(エネルギー量)が高いという印象の強い料理ですが、月刊おいしい健康5月号では、これらを食べてダイエットというテーマに挑戦しました。レシピを考えてくれたのは料理研究家の小田真規子さん。
脂質を抑えるコツや、噛み応えを出す工夫をふんだんに盛り込んでいるので、我慢しなくても食べられるのです。これから体型が気になる季節がやってきます。ダイエットをしたい人も、リモートワークで運動不足の人も、ぜひ取り入れてみてください。
「定番のおかずばかりなので、繰り返し作ってみてほしいです。ダイエットや料理って、最初にうまくいかないと諦めてしまいがちですが、続けることが大切だと思うんです」と小田さん。
うまく揚げられなかった、炒めすぎてしまった、という時には、そこで諦めずにまた作ってみる。体重が減らないからと食事管理をやめるのではなく、続けてみる。行動することが経験となって積み重なると、いつか結果となって見えてくると話します。
「失敗を恐れずに、わからないことをネガティブに捉えずに、やってみてほしい。例えば、ただ野菜を茹でるだけでも、うまくいかなかったら、次は茹で時間を変えてみようとやってみることが前進になります。何度か作るうちに前に作ったものとの違いを考えるようになるはずです。どうしておいしくできたのか、なぜうまくいかなかったのか。それをいつも考えることで、料理は確実にうまくなりますから」
年に数回しか作らないごちそうよりも、日々の定番おかずを繰り返し作ること。バリエーションを増やす前に、まず、いくつかの定番をうまく作れるようになれば、毎日の料理はぐっと楽になるはずです。
疲れた時は、紫、緑、赤の野菜を
小田さんは、長年、料理初心者の気持ちに寄り添い、ていねいでわかりやすい基本のコツを伝え続けてきました。手がけた著書は100冊以上になります。企業へのレシピ提案の仕事も多く、多忙な日々のなかでどのように体調を管理しているのでしょうか?
「疲れた時は、これさえ食べたら大丈夫という食材を決めています。私はビタミン剤を飲めない体質なので、できるだけ食事から摂るようにしていて、紫玉ねぎやトマト、ブロッコリー、パプリカなどをよく食べます。紫、赤、緑の3色を意識して口にしていますね」
茹でたブロッコリーと角切りにしたトマト、スライスした紫玉ねぎでサラダにしたり、スライスしたパプリカと紫玉ねぎに、柔らかく茹でて潰したブロッコリーをマヨネーズとあえたり。同じ食材でも、切り方や火の通し方を変え、いろいろなサラダにしているのだそう。これを食べると安心という食材が決まっていれば、疲れた時にも億劫にならずに作れます。
「あとは、かたいものを食べるのも好きで。ストレスが溜まっているなと思ったら、テレビを見ながら氷をガリガリ食べる。市販のかちわり氷は常備しているし、冬なられんこんとかシャキシャキ食べられる食材を選ぶようにして。かたいものを食べて口を動かすと、何だかすっきりするんです(笑)」
リフレッシュしたい時には、できるだけ外に出て歩くようにしているとも話します。楽に歩ける靴を選び、なるべく長く歩くように。
「ミュージシャンの動画を見るのも気分転換になります。楽しいし、映像がとてもきれいで刺激を受けています」
時代に合わせて、基本を伝え続けること
昔は、休みの日になると評判の店へ足を運び、食事をして勉強するという時間も多くありました。しかし、今はエネルギーを使う先が変わってきたのだそう。
「休みは本を読む時間に。自分が料理の世界に入ったころに読んでいたものを読み直しています。鈴木登紀子先生や小林カツ代先生、城戸崎愛先生などの本。やっぱり語り継がれている方たちの魅力は、レシピの素晴らしさはもちろんのこと、そこに込められているポリシーがあるからなんだな、と。ライフスタイルは真似できなくても、考え方は取り入れられるので改めて振り返っているところです」
「基本」や「定番」は、普遍なものだと思われがちです。しかし、時代が変われば料理する人や環境も変化し、基本や定番もそれに合わせる必要を求められることもあります。小田さんは、自分なりの基礎を大事にしながらも、ブラッシュアップさせるために、さまざまな考え方を取り入れてきたのです。
「唐揚げひとつとっても、どんな環境で暮らしている人に向けてのものなのかで提案するものが変わるんです。自分がいいと思うことだけでなく、さまざまな先生のポリシーを勉強しながら、試作を繰り返して考えています。ただレシピを提案するのではなく、『へぇ』と思えるポイントを組み込むことを大切にしています」
今回の月刊おいしい健康では、まさに「へぇ」と言いたくなるコツがたくさん。小田さんが長年大切にしてきた基本と、日々考え続けている工夫が込められたレシピです。気になるものがあったら、ぜひ作ってみてください。一度だけでなく、何度も繰り返し作るうちに、料理する時間がきっともっと楽しくなるはずです。