潰瘍性大腸炎の患者さん2名にお集まりいただき、座談会を開催。
第3回は「わたしのほんね」に寄せられた「家事・育児・生活・仕事」に関する声に対して、
ご自身の経験をもとにご意見を伺いました。
参加メンバー

まこさん
(治療歴3年/33歳・就職活動中)
介護施設で働いていたが、潰瘍性大腸炎の診断を受けたことをきっかけに退職。病院の就労移行支援でサポートを受けながら就職活動をしている。

ミントさん
(治療歴28年/42歳・パート)
もともと看護師・保健師として働いていたが、現在はフルリモートの会社で事務の仕事を行っている。長年にわたり治療を続けながら、出産や育児も経験。

家事、育児、日常生活における
お悩み、改善したいこと
家事、育児、日常生活におけるお悩みや改善したいことについての
投稿を集めました。
みなさんが共感できるお声はありますか?

私も子どもがいますが、病気を抱えながらの家事や育児はとても大変でした。症状の悪化につながるため、冷房のきいたスーパーに長時間いることも難しくて…。
夫に代わりに買い物に行ってもらったり、隣町に住む母に家事や育児を手伝ってもらったりしていました。このような身近な人たちのサポートは、ありがたかったですね。家事の負担を減らすために、冷凍食品や宅配なども積極的に利用していました。

この投稿は共感できます。私も体調が悪化して、1日中トイレから離れられない時期がありました。この時期は本当に辛かったですが、就労移行支援を受けている病院の看護師さんが大きな支えになりました。辛いときのアドバイスや、不安なときの「大丈夫ですよ」というお声がけのおかげで、気持ちが楽になりましたね。

私も、発症した頃から漠然とした不安や緊張を感じていました。大学生のときには軽いパニック障害も経験。心療内科の先生に相談して、抗不安薬を飲んでいた時期も。治療歴が長いこともあり、結婚、妊娠などライフスタイルの変化に伴って新たな不安や悩みが出てくることもありました。
そんなときに助けになったのは主治医の存在です。この先生とは20年以上の付き合いになりますが、症状や治療に限らず、プライベートなことまで何でも相談することができます。

それは羨ましいです。実は、主治医の先生とうまくコミュニケーションを取れないと感じています。ほかの患者さんが待っていることを考えると、短い診察時間の中で相談すること自体ためらってしまって…。同じ病院にいる炎症性腸疾患を専門にする看護師さんは話しやすいので、困ったことがあると、今はその方に相談するようにしています。

日常生活で行ってきた工夫、
取り組んで良かったこと
日常生活で行ってきた工夫や、取り組んで良かったことの投稿をご紹介します。
みなさんも同じような経験がありますか?

「やりたいことをやろう」という姿勢に共感できます。私は昔から音楽が好きで高校3年生までピアノを続けていたんですが、潰瘍性大腸炎になってから十数年ぶりにピアノを再開しました。こんなふうに楽しめる時間が、前向きな気持ちにつながると思います。

私は学ぶことが好きで、腸活アドバイザーやリフレクソロジーの勉強をしていた時期があります。セルフケアにつながるのではと期待して資格も取りましたが、腸活の勉強をしたおかげでレパートリーが増えて、家族にも「料理がおいしくなった」と好評で嬉しいです。
また、この病気になってからSNSを始めました。同じ病気の患者さんとDMでやりとりすることがありますが、優しくて丁寧な方が多い印象です。みんなで支え合っている感覚を持つことができて、SNSを始めて良かったと思っています。

食事について「制限」と言われ続けると辛いですよね。最近視聴したオンライン講座で、栄養士さんが「制限ではなくコントロールと捉えると気持ちが楽になりますよ」とアドバイスしてくださいました。とても印象的で、私自身救われるような思いになりました。
また私の場合、主治医の先生が取ると良い食材について教えてくれるので、食事内容を考える上で役立っています。食事を作るときには、具体的に使いたい食材を検索して、出てきたレシピを参考にすることが多いです。

私の場合は、養護教諭だった母が食事のサポートをしてくれています。病気の診断を受けた直後に「どれが食べられたか、食事の記録をしていこう」と提案してくれて、その前向きな姿勢に助けられました。

仕事との付き合い方
(お悩みや課題、行ってきた工夫)
仕事との付き合い方についての投稿を集めました。
みなさんは、病気を抱えながら仕事を続ける上で、
どんなことを心がけていますか?

職場の理解があることが羨ましいです。以前看護師として働いていた職場は病気への配慮をしてくれず、ハードな部署に配属され体調が悪化した経験があります。その後は専業主婦を経て、フルリモートの事務職に転職。負荷の少ない仕事だと、気持ちや疲れへの悪影響も少ないと感じるので、体調に合わせて仕事内容を選ぶことも大切だと思います。

現在は就職活動中ですが、病気について理解されなかったらご縁がなかったと考えるようにしています。潰瘍性大腸炎の患者であることを理解してくれる職場を見つけたいですね。

ものすごく共感できます。私自身、発症前は介護の仕事をしていましたが、リーダーに昇格する直前に潰瘍性大腸炎の診断を受けました。あのまま働き続けられたら良かったのに…と思うことがあります。
現在は就職活動中ですが、次の職場で理解してもらえるように就労移行支援の一環で「自分説明書」という書類を作りました。これは、どんなときに辛いか、どんな場面で困るかなど自身の状態を具体的にまとめたものです。排泄のことなど直接言いにくい困り事も、この書類を渡せば良いので伝えやすくなると感じています。

私もこれまで働いてきた職場には、病気のことを伝えてきました。面接のときに伝えたこともあります。その方が自分の気持ちも楽になるように感じます。

患者さん・周囲の人たちへの
メッセージ
最後に、同じ潰瘍性大腸炎の患者さんや、
周囲の人たちへのメッセージを伺いました。

潰瘍性大腸炎の患者さんには「一人じゃない」と思ってほしいです。同じような患者さんたちが、たくさんいることを忘れないでください。
周囲の人たちの理解も大切だと思っています。潰瘍性大腸炎について理解する人が増えれば、患者さんの働きやすさにもつながるのではないでしょうか。そのためにはメディアで病気を紹介してもらったり、症状の1つである「腹痛」がどれくらいの痛みなのか伝えるためのツールがあったりするといいなと思っています。また、この病気の患者さんは一人ひとり症状が違うので、個別のサポートを強化してもらえるとありがたいですね。

潰瘍性大腸炎の患者さんは後悔しないように、やりたいことがあったら積極的に挑戦してほしいと思っています。その姿勢が、周りの人たちや同じ病気の患者さんの希望につながるでしょう。私自身、行きたいところには行くようにしてきましたし、やりたいことにはできる限り取り組んできました。食事に限らず、仕事や運動などで制限を受けることもあるかもしれませんが、他の患者さんのお話や各種サイトなどから色々な対策を知って、選択肢を増やしていってほしいです。
また、妊娠・出産で悩む女性の患者さんが相談しやすいように、この病気の領域でも女性の先生が増えるといいなと思っています。
編集部より
今回の座談会では、女性の患者さんに「家事・育児・生活・仕事」に関するお話を中心に伺いました。周りの人たちのサポートを受けながら、好きなことに取り組んだり、周囲の人たちとつながろうと工夫したり…。そんな前向きな姿勢が、とても印象的でした。
同じ潰瘍性大腸炎の患者さんに対しては心強いメッセージも。この病気と向き合う方たちが、明日を前向きに過ごせるヒントになれば嬉しいです。また今回のお話が、周囲の人たちの患者さんに対する理解につながればと思います。
※本記事は個人の方のお話をもとに構成しており、治療方法などの内容がすべての方に当てはまるわけではありません。