潰瘍性大腸炎の治療

監修:札幌医科大学附属病院 消化器内科 教授
仲瀬 裕志先生

潰瘍性大腸炎は、厚生労働省から「難病」
に指定されている疾患のひとつです。
発症原因が未だ不明で、
1970年代は稀な疾患とされていましたが、
近年、患者数は急激に増加し、
今後も増加傾向が続くと予想されています。
ここでは、潰瘍性大腸炎の症状や治療法について、
わかりやすくご紹介します。

潰瘍性大腸炎について

POINT
  • 患者数は全国に約22万人*
  • 発症年齢30代がピーク*
  • 患者性別の男女比はほぼ半々*
  • 症状は腹痛・下痢・血便など*
  • 薬物療法が中心
人物イラスト
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潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が生じることで、大腸の粘膜が傷つき、ただれたり(びらん)、はがれたり(潰瘍)する病気です。腹痛や頻回の下痢、血便などの症状がある『活動期』と、治療により症状が治まっている『寛解期』を繰り返す点が、この病気の特徴です。完治が難しい病気ですが、適切な治療を継続することにより、多くの人は寛解を維持することができます。

治療について

潰瘍性大腸炎の治療は薬物療法が中心で、軽症、中等症、重症まで症状の段階によって治療法が異なります。多くの場合、薬を投与することで大腸の炎症を抑え、腹痛・下痢・血便などの症状を軽減させた状態(寛解)に導くことができます。

治療の流れ

『活動期』には炎症を抑えて症状を軽減させるための『寛解導入療法』が、『寛解期』には症状が落ち着いている寛解状態を維持し、再燃を防ぐための『寛解維持療法』が行われます。それぞれの治療時期で使用する薬の種類が異なります。

POINT
POINT

主な治療薬

5-ASA製剤(5−アミノサリチル酸製剤)

軽症〜中等症の方に第一選択薬として使われ、活動期の腸管の炎症を抑えるとともに、寛解維持のためにも広く用いられています。飲み薬のほか、直接腸に薬を届ける注腸剤と坐剤があるので、症状や病変部位、希望に合わせて選択することができます。

ステロイド

主に活動期の炎症が強い方や5-ASA製剤で改善しない方に、寛解導入療法として飲み薬が用いられます。それでも効果がみられない場合や重症の場合は入院の上、ステロイド大量静注療法※が行われます。

※潰瘍性大腸炎のタイプが直腸型の場合、ステロイドの飲み薬や
大量静脈療法は慎重に行われます。

免疫調節薬・生物学的製剤・JAK阻害剤

炎症の程度が強く、5-ASA製剤やステロイドでも効果が不十分な場合や再燃を繰り返してしまう場合に使用されることがあります。

治療薬のイメージイラスト
治療薬のイメージイラスト

薬物療法以外の治療

軽症〜中等症であれば、薬物療法から始めるのが一般的ですが、内科的治療(薬物療法)を行っても効果が見られない場合は、外科的治療が検討されます。大腸穿孔(大腸に穴があく)、大量の出血がある、大腸がんを合併した場合などは、大腸を摘出する手術を検討することがあります。

妊娠・出産のこと

潰瘍性大腸炎の方も、安全な妊娠・出産ができます。妊娠中は使用できない薬などもあるので、主治医に妊娠の希望を伝えて治療の続行や変更、症状が悪化した場合の対処法など相談して治療方針を決めておくことが大切です。

食事のこと

『活動期』は病状が悪化している状態なので食事にも注意が必要ですが、『寛解期』では厳密な食事制限はありません。体調が優れないときは、消化器官に負担をかけないよう低脂肪、低刺激の食事がいいでしょう。

POINT

『活動期』の食事のポイント

  • 消化しやすく、高エネルギー、
    高たんぱくの
    食事を心がける
  • 脂質は控えめにする
  • 食物繊維の多い食材(ごぼう、
    たけのこ、
    きのこ類、こんにゃく、
    海藻類、豆類など)は、
    とりすぎに
    注意する
  • アルコール類、香辛料、
    カフェイン飲料、
    炭酸飲料は
    控えめにする

<参考>
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)「潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識」第4版(2020年3月改訂)


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