日本病態栄養学会 おいしい健康

がん治療中の患者さんのための支援食 全国医療機関の管理栄養士さんによるレシピコンテスト 結果発表

各病院施設の管理栄養士が「がん治療中の患者さんのための支援食」として
それぞれ自慢のメニューを発表。
地域性、調理の簡便さ、がん治療の支援の工夫、
コンセプトの明確さなどを審査基準に、受賞レシピが決定しました!

レシピコンテスト開催にあたって

関西電力病院疾患栄養治療センター管理栄養士 / 日本病態栄養学会理事 北谷直美先生

「レシピコンテスト」は「第17回大会」で特別企画として初めて設けさせていただきました。全国各施設の治療食を病態栄養に適した栄養療法を基本に、美味しさや簡便さをコンテストという形で競い合う、地域の特性や施設の工夫を学ぶことによって、参加者の皆さまと共に楽しむことができる場となっています。日本病態栄養学会から多くのレシピを広く紹介することで、患者様の食事療法の助けとなり、QOLが向上することを期待しています。

関西電力病院疾患栄養治療センター管理栄養士 / 日本病態栄養学会理事

北谷直美先生

レシピコンテスト 受賞レシピの発表

  • 受賞レシピ発表の様子
  • 受賞レシピ発表の様子
  • 受賞レシピ発表の様子
  • 受賞レシピ発表の様子
  • 受賞レシピ発表の様子
  • 受賞レシピ発表の様子

最優秀賞 焼きおにぎりだし茶漬け 聖隷三方原病院(静岡)

焼きおにぎりだし茶漬け
聖隷三方原病院(静岡)

このレシピについて

さっぱりとしたものしか食べられないという患者さんのために考案した一品です。「肉や魚、米飯のにおいが気になる」「味を感じにくい」など、化学療法や放射線療法で食欲がないときでもおいしく食べられます。主食と汁物を兼ねており、エネルギー、水分、塩分を摂取することができます。少量で用意することにより見た目の圧迫感が軽減され完食しやすくなり、満足感も得られます。ごま油のコクや梅の酸味が加わって食べやすく、鰹だしのイノシン酸のうま味による食欲増進効果もあります。だし汁、梅干し、あられ、ごはんと、それぞれ異なる食感が楽しめる点もポイントです。冷凍しておいた焼きおにぎりを使えば、さらに簡単に作ることができます。

学会長賞 とん平焼き 関西電力病院(大阪)

とん平焼き
関西電力病院(大阪)

とん平焼きは大阪のB級グルメとして親しまれている鉄板焼きの一種です。化学療法中に味覚変化を起こした患者さんは濃くはっきりした味を好む傾向がありますが、ソースはそのような患者さんにも適した調味料です。とん平焼きの卵や豚肉に含まれるたんぱく質は除脂肪体重を維持し、食物繊維を含む野菜は腸内細菌叢の恒常性維持につながります。味覚変化を起こした患者さんにも「ソースの味がよかった」「食べやすかった」と好評でした。
調理は電子レンジでも可能で、男性でも簡単に作ることができます。チーズやちくわ、ねぎなどを使ってアレンジしたり、マヨネーズをかけてエネルギーをアップしたりすることもできます。

審査員特別賞 最優秀ポスター賞 すだち酢のちらし寿司 徳島大学病院(徳島)

すだち酢のちらし寿司
徳島大学病院(徳島)

「さっぱりしていて食べやすく、少量でおいしく栄養をとることができ、治療をサポートする家族にとっても毎日の食事に生かせるような工夫を取り入れる」ということをコンセプトに考えました。さっぱりとした寿司はがん治療中で食欲のない患者さんでも食べられることが多く、子どもから大人までみんなに愛される料理です。徳島の名産品「すだち」を取り入れ、よりさっぱりした口当たりにしました。
すだち酢は、炒め物やホイル焼き、酢の物、冷ややっこなど、他のさまざまな料理にも活用することができ、食事のバリエーションが広がります。ちらし寿司は一度にたくさん作って少量ずつ冷凍保存しておき、体調のよい時に食べることも可能です。

奨励賞

スープカレー

スープカレー

札幌医科大学附属病院 (北海道)

スープカレーは北海道の郷土料理の一つで、地元では季節を問わず年間を通して食べられています。ルーカレーよりも脂質や塩分が少なく、食物繊維が多いのが特徴です。濃度が低いためサラッとした口当たりで、スパイスの香りが食欲の回復を助けてくれます。当院では、化学療法などによる味覚異常のある患者さんに適した食事として、サフランライスやマンゴーラッシーなどと組み合わせて提供しています。一般常食でも人気の献立で、病院食が味気ないという患者さんからも好評です。

プチサラダクレープ

プチサラダクレープ

大阪医科大学附属病院 (大阪)

「少量で栄養補給になり、さっぱりとしていて食べやすくおいしい」をコンセプトに考案しました。それぞれのクレープの具にたんぱく質源を入れており、チーズやマヨネーズを加えることでエネルギーがアップするため、栄養補給にも適しています。パンで挟むのではなく、半分に切ったクレープ生地を使用し野菜と一緒に巻くことで、小さく、軽く、さっぱりと、一口で食べられるようにしました。クレープの中身がそれぞれ異なっているので、味の違いを楽しむこともできます。患者さんからは、「さっぱりしていて食べやすい」「小さいから全部食べられました」という声をいただきました。調理工程が簡単なので、誰でも作ることができます。

朴葉寿司

朴葉寿司

岐阜勤労者医療協会 みどり病院 (岐阜)

朴葉のよい香りが食欲をわかせてくれるとともに、初夏のさわやかな雰囲気も感じさせてくれる献立です。酢飯のほどよい酸味が、ターミナル期で食欲が落ちている患者さんや口腔内に違和感を訴える患者さんにも好評です。具材に漬物を使用しているので、高齢の方には特に喜ばれます。調理の際、ラップの上において作るので、巻きすは必要ありません。朴葉に酢飯を巻いてから10分程蒸すことで、香りがいっそう引き立ちます。また、食器が朴葉に変わることで見た目の華やかさを増し、嗅覚だけでなく視覚からも刺激をもたらしてくれます。パターンの決まった食事に新鮮な喜びを提供してくれ、食思不振の中でも食べてみたいと思える一品です。

じゃこと高菜のパスタ

じゃこと高菜のパスタ

久留米大学病院 (福岡)

福岡名物「高菜漬け」を使用した一品です。福岡県では高菜はなじみのある食材で、チャーハンにしたり、油炒めにしたりして食べられています。おうちの味を味わっていただけるようにという思いも込めて、高菜を使ったメニューを考えました。「パンチのある味つけのほうが、食欲がわく!」という患者さんの声から、味付けはやや濃いめにしています。青じそやトマトのさわやかな風味によってしっかりした味付けでもさっぱりといただくことができ、「果物だったら入るんだけどな」「肉や魚のにおいが駄目で運ばれただけでもつらい」という患者さんにも食べていただくことができています。通常の半分量にすることで、全量摂取の満足感も得られます。

昆布おにぎり

昆布おにぎり

富山大学附属病院 (富山)

昆布の消費量が多い富山県では、昆布製品が日常的に食べられています。薄い昆布や昆布の表面を削ったものが「黒とろろ昆布」、肉厚の昆布の内側を削ったものが「白とろろ昆布」です。黒とろろはしっかりとした味で、ほのかに酸味があります。白とろろはふわっとした食感で塩味とうま味が口の中に優しく広がります。昆布には、酸味、うま味、塩味、甘味が絶妙のバランスで含まれています。酸味とうま味の相乗効果で唾液の分泌が促されやすくなり、塩味が少なくてもおいしく食べることができます。また、おにぎりとすることで食べやすい形となり、食事負担も少なくなります。慣れ親しんだ味が、安心と温かさを感じさせてくれる一品です。

さば缶トマトカレー

さば缶トマトカレー

新古賀病院 (福岡)

「がん治療に効果的な栄養素がおいしくとれる料理を、ご家族や患者さんご自身が手軽に作れるように」との思いから考案したレシピです。EPAは炎症性サイトカインの産生を抑制することが知られており、体重の増加やQOLの改善なども報告されている栄養素ですが、EPAを豊富に含む魚を使った料理は生臭さから化学療法中の患者さんには敬遠されがちです。魚の生臭さはカレーにすることで軽減し、トマトを加えさっぱりと食べられるようにしました。カレーの香りとスパイスの刺激によって食欲もアップします。常備しやすい缶詰を使用することで食材の調達や下処理の手間を省いており、調理も簡単で、鍋を使わず電子レンジで手軽に作ることも可能です。

さば缶南蛮漬け

さば缶南蛮漬け

国立病院機構 渋川医療センター (群馬)

「料理に手間はかけられないが、がん治療に効果のある食事にしたい」という声を受け、誰でも手軽に作ることができ、栄養価にも優れたレシピを考えました。さばの缶詰を使用するため加熱調理はレンジのみで、火を使う必要がありません。すし酢の使用により細かい計量も不要です。さばにはEPA、DHAが豊富に含まれているため、炎症抑制効果が期待できます。酢がにおいを抑えており、さっぱりと食べることができます。便秘気味の方にはきのこを加えたり、口内炎がある方にはマヨネーズで口当たりをまろやかにしたり、味覚の低下がある方やにおいが気になる方にはカレー粉を使ったりと、症状に合わせてアレンジを加えてもおいしくいただけます。

小田巻蒸し

小田巻蒸し

東京都保健医療公社 東部地域病院 (東京)

小田巻蒸しとは大きめの茶碗蒸しにうどんが入った料理で、紡いだ麻糸を巻いて玉にした苧環(おだまき)から名付けられたとされる大阪の郷土料理です。化学療法の副作用で食事摂取が困難な患者さんからは、卵を使った料理、喉越しがよく細くて食べやすいそうめん、口内炎でも食べられる口当たりのよいなめらかな料理、味覚異常があっても食べやすい味のはっきりした料理のリクエストが多くあるため、それらを踏まえて考案しました。におい過敏の方には冷たくして食べていただくこともできます。あんをかけることで味にメリハリがつき、飲み込みやすくなります。化学療法中の患者さんだけでなく、ターミナル期の患者さんにも喜ばれています。

ふわふわお好み焼き

ふわふわお好み焼き

徳島赤十字病院 (徳島)

徳島県は関西が近いこともあり粉物が好きな人が多く、お好み焼き、たこ焼き、焼きそばなどはどの年代にも好評のメニューです。また、ソース味は食欲不振の患者さんにも人気があります。この「ふわふわお好み焼き」はシフォンケーキの作り方を応用しているため、口内炎などで肉やいかのような硬いものが食べられない患者さんにも無理なく食べていただくことができます。化学療法の副作用で口内炎や歯茎の腫れがある患者さんからも「やわらかいのに見た目がよい」「味付けがはっきりして食欲が出る」との声をいただいています。エネルギーをとりたい場合はマヨネーズをトッピングしたり、好みの具材をプラスして作ったりすることもできます。

浮島のスープ仕立て

浮島のスープ仕立て

東京都教職員互助会 三楽病院 (東京)

口どけのよいメレンゲと冷たく甘いアングレーズソースは、においや刺激がなく、食欲が低下したときや味覚障害時でもおいしく摂取できます。全量摂取しやすいように量も調整し、達成感や満足感を得られるようにしました。目でも食事を楽しめるよう彩りのよい果物を選び、食事への意欲向上につながるよう工夫しています。味に変化をもたらしてくれるベリーソースを別添えにしているため、最後までおいしく食べることができます。「メレンゲが口の中でとけておいしい」「甘いだけでなくラズベリーソースやレモンのさわやかさがあって食べやすい」という声もあり、治療中でも食べることがつらくならないよう五感に考慮した一品です。

手作りなめらか豆腐〜一丁二味

手作りなめらか豆腐〜一丁二味

鈴鹿回生病院 (三重)

がん患者さんに必要な栄養素の一つであるたんぱく質をおいしくとれるレシピを考えました。「肉や魚はにおいが駄目で食べられないけれど、豆腐は好き」という方がいます。しかし豆腐も毎回同じ味付けで食べていると飽きてきてしまうため、タレを別添えにして、お好みの味に調節できるようにしました。豆乳から手作りした豆腐は、手間なしなのに本格的で食べやすく、つるんとした食感で喉越しのよい仕上がりです。タレにMCTオイルを加えることで、エネルギーアップと食欲亢進が期待できます。MCTオイルを加えても味の邪魔にならず、食べやすいと好評です。主食や野菜との相性がよいので、ごはんや麺と一緒に食べることもできます。

たまご豆腐のおかゆ

たまご豆腐のおかゆ

かなめ会 山内ホスピタル (岐阜)

食事摂取が少ない方に食べたいものを尋ねると「具なしの茶碗蒸し」や「雑炊」など、軟らかくて少し塩味の効いたメニューを選ばれる方が多くいます。それらを組み合わせて、お粥にあんをのせ卵豆腐を盛り付けることで「卵どんぶり」風のメニューにしました。味と彩りのアクセントに梅と絹さやを添えています。お粥やたまご豆腐は口当たりがよく飲み込みやすいため久しぶりの食事でも食べやすく、消化がよくておなかにもやさしい一品です。お粥自体には塩をつけずあんで甘辛くしているので、口内炎があってもしみにくく、お米のほんのりした甘さが感じられ食欲が出ます。一口でもエネルギーやたんぱく質などを効率よく摂取することができます。

抹茶白玉かき氷

抹茶白玉かき氷

戸畑総合病院 (福岡)

食欲が低下している中でも頑張って食べようとするあまり、食事の時間を苦痛に感じている患者さんが多くいます。そのような方やご家族に「食事を楽しみにしてほしい」という思いから考案しました。かき氷は口腔内で溶けるため、さっぱりと食べることのできる一品です。通常は水で作る氷を牛乳に変え、グリーンティーの粉末を加えることでおいしさとエネルギーのアップを図っています。牛乳には少量の寒天を追加し、シャキシャキとした食感をプラスしました。コーヒーや紅茶にフレーバーを変更したり、家にあるものでトッピングを代用したりしてもおいしくできます。簡単に作ることができ、食思アップにつながるメニューです。

日本病態栄養学会

日本病態栄養学会とは

患者を対象とした代謝栄養学の情報交換のため、臨床医、栄養学研究者、管理栄養士が一堂に参加して疾患の病態研究を行い、効率の良い栄養療法の実践と新たな治療法の開発を1998年に設立しました。


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