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食品で誤嚥しないために

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夏〜秋に旬をむかえるぶどう。
「巨峰」や「ピオーネ」など、ぶどうの中でも粒が大きい品種は、食べごたえがあっておいしいですよね。

このような粒が大きいぶどう。乳幼児の保護者の方や高齢の方は、食べるときに少しだけ気をつけてください。誤嚥(ごえん)をすることがあります。

噛んだり飲み込んだりする力が弱い方は注意

誤嚥とは、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまうことをいいます。

通常、飲食物は口に入れてよく噛んだあと、唾液とともに食道を通って胃に入ります。
飲食物がのどを通過するときは、喉頭蓋(こうとうがい)が気管をふさいでフタの役割をするため、飲食物が気管に入ってしまうことはありません。

乳幼児の場合、まだ歯が生えそろっていない子が多く、噛む力が不十分。飲み込む機能も未発達で、吐き出すこともまだ上手にできません。そのため、誤嚥しやすいといえます。

高齢の方の場合は、加齢に伴って誤嚥が起こりやすくなります。
唾液の減少により滑りが悪くなったり、飲み込みにくくなったり、噛む力や飲み込む筋力が低下したり、反射神経が弱まることで飲み込んだときに気管をふさぐタイミングがずれたりすることが主な原因。
また、病気や薬の副作用で誤嚥しやすくなる場合もあります。

特定の食品を避けることでは予防できない

どうして粒の大きなぶどうに気をつけなければいけないかというと、誤嚥しやすい形状といえるからです。

ぶどうは、みずみずしくて弾力があり、表面がツルツルしています。
丸い形状のものは口に入れると誤ってのどにツルッと入りやすく、喉頭蓋がフタをする前に気管に入り込んでしまうことがあるのです。

また、粒の大きなぶどうは、気管を塞ぎやすい大きさといえます。
なぜなら、乳幼児の気管の径は1cm未満、大人は2cm程度といわれていて、ぶどう1粒の大きさが2〜3cmとすると、ちょうど気管のフタになりやすい大きさなのです。
気管が塞がれてしまうと、息ができなくなり窒息につながることがあります。

これは、ぶどうに限りません。

厚生労働省の保育施設などの事故防止ガイドラインによると、乳幼児の場合はミニトマトやご飯、ゼリーなど、ざっと30以上の食品に危険性があり、調理の工夫が必要であると示されています。※1

消費者庁によると、高齢の方ではおかゆ類・もち・ご飯・肉の順に多いものの、どの食品が原因かわからないケースがいちばん多いようです。※2

食べやすい大きさに切り、よく噛むことが大切

「こんなに誤嚥の原因になる食品が多いと、防ぎようがない」
「食べるの・食べさせるのが怖い」と思ってしまいますよね。
けれど、そうではありません。予防する方法はあります。

誤嚥を防ぐには、食事を食べやすい大きさ・やわらかさに調理することがいちばん。
それから、水分でのどを潤すこと、よく噛んでから飲み込むことも大切です。
のどが潤っていないと食事がつかえたり、大きいものを噛まずに飲み込むと気管の入り口を塞いだりするリスクがあるからです。

誤嚥を防ぐ食べ方のポイント・共通

1)小さめに切るなど、食べやすい大きさにする
2)食べる前にお茶や汁物を飲み、のどを潤しておく
3)よく噛んでから飲み込む

乳幼児の保護者の方のポイント

1)食事中は大人がそばにいる
2)よく噛むように、声かけをする
3)きょうだいがいる場合は、小さな子に危険な食品を与えないように言い聞かせる
4)遊びながら、歩きながら、寝転びながら食べさせない(正しく座らせて、食事に集中しなくなったら切り上げる)
5)食事中に驚かせない



乳幼児の場合、食べ物を前歯でかじり取ることや、自分で一口大が調節できるようになることも大切なので、手づかみで食べさせるときは約4cm以上の大きさに切って出すといいでしょう。

どうして約4cm以上なのかというと、3歳の子どもが大きく口を開けたときの大きさが約4cmだからです。
かじり取らないと食べることができないため、丸飲みの予防になります。

ただし、パンなどやわらかいものだと、約4cm以上にしたとしても、口いっぱいに詰め込んでしまうことがあります。
そのようなときは保護者の方が手を添えて、前歯で噛み切るように声をかけましょう。これを繰り返すことで、自分の一口大がわかるようになってきます。

万が一、食べ物が詰まったときのために、応急手当の方法をおぼえておくと、いざというときに慌てません。
気管が数分塞がれてしまうだけで、命を落とす可能性もあります。以下のサイトを参考にして、備えておきましょう。

政府インターネットテレビ「窒息事故から子どもを守る」

食べ物による窒息事故を防ぐために(食品安全委員会)


乳幼児の場合、スーパーボールなどのおもちゃなどでも誤嚥することがあります。口に入れてほしくないものは、乳幼児の手が届かないところにしまっておきましょう。 「トイレットペーパーやラップの芯を通るものは危険」とおぼえておくといいですね。

参考/※1 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(厚生労働省)、※2 御注意ください、高齢者の窒息事故!(消費者庁)、食品による子供の窒息事故に御注意ください!(消費者庁)

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士