読む、えいよう

災害時、お母さんと赤ちゃんに必要な栄養と備蓄リスト

東日本大震災、3.11から10年が経ちました。10年ひと昔とはいいますが、昨日のことのように思い出される方も多いことでしょう。災害はいつ、どこで起こるかわかりません。これから赤ちゃんを迎えるご家庭、赤ちゃんが生まれたばかりのご家庭は、赤ちゃんのための災害への備えがまだできていない場合もあると思います。今回は、赤ちゃんの命をつなぐ災害時の栄養について、家庭で備えておきたいものをご紹介します。 1582

1)母乳の赤ちゃんにも「ミルク」

母乳で育つ赤ちゃんにとって、最良の栄養は母乳です。 けれど、母乳は自然と湧いて出てくるものではありません。 お母さんがじゅうぶんに食事や水分を摂り、心とからだが健やかであることが大前提。赤ちゃんが頻回に飲むことで母乳は分泌されます。 授乳中のお母さんの食事は、妊娠前よりも+350kcal/日必要であると推定されています。(※1) 妊娠・授乳中ではない成人女性よりも、多くのエネルギー量を食事から摂らなければならないのです。

もし、災害でお母さんがじゅうぶんな食事や水分が摂れない状況になったとしたら、どうでしょう。さらに災害による不安やストレスで心身ともに弱ってしまったとしたら…。 母乳が出なくなる可能性が、容易に想像できます。

そんな万が一のときのために、母乳の代わりとなる育児用ミルクの備蓄が欠かせません。 清潔な水が手に入れられない、湯を沸かすことができない状況も考えられますので、調乳の必要がない「液体ミルク(乳児用調整液状乳)」や、使い捨ての哺乳びんや紙コップを用意しておくと、より安心です。

ミルクや、母乳とミルクの両方で赤ちゃんを育てられているご家庭も、育児用ミルクを少し多めに購入しておくなど、備えをしておきましょう。

2)お母さんには「缶詰」「野菜ジュース」

災害が起こると、スーパーなどが閉まり、食料が入手しにくくなることがあります。 授乳中のお母さんにはじゅうぶんな食事が必要ですので、食品の備蓄は必須です。 一時的に食べる量が減っても、すぐに母乳が止まったり、母乳に栄養がなくなったりすることはありません。けれど食事は元気の源。できるだけ備えておきたいですね。

避難所で配られる食料は、おにぎりやパン、インスタント食品、弁当などが多く、栄養が偏りやすくなります。また、ご家庭での食品備蓄も、米、カップ麺、レトルト食品など、炭水化物が主体となっている場合が多いのではないでしょうか。

災害時は、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しやすくなるといわれています。食品でいうと、野菜、果物、大豆・大豆製品、卵、魚、乳製品です。 生鮮食品は備蓄が難しいので、魚や野菜・果物の缶詰、野菜や果物ジュース、ビタミン・ミネラルが強化された菓子なども用意しておくといいでしょう。

3)離乳食主体の子には「ベビーフード」

離乳食が栄養の主体になっている赤ちゃんがいるご家庭は、ベビーフードの備蓄も行いましょう。
母乳・ミルクが主体の赤ちゃんであれば、災害時に母乳・ミルクの栄養で乗りきることができます。けれど、離乳食が主体になってくるとそうはいきません。

封を開けたらすぐに食べさせられるベビーフードが売られていますので、赤ちゃんの食べる量や月齢に合わせて備蓄をしておくと安心です。 使い捨てのアイスクリーム用のスプーンを用意しておくと、食器を洗えないときに重宝します。

食物アレルギーのお子さんの場合、アレルギー対応のベビーフードを備蓄しておきましょう。

ベビーフードがなくなってしまったら、大人用のおかゆやみそ汁、煮物などを取り分け、具をつぶしたり、湯で薄めたりして離乳食を作ってください。その際、衛生面には注意しましょう。

こまでの災害の教訓を生かして、お母さんや赤ちゃんがより安心して過ごせるために、さまざまな取り組みが行われています。 日本栄養士会は大規模災害時、乳児用ミルクや離乳食の提供などを行う「特殊栄養食品ステーション」を被災地に設置。妊婦さんや授乳中のお母さん、赤ちゃんに必要な栄養ケアをしています。

日本栄養士会「赤ちゃん防災プロジェクト」
https://www.dietitian.or.jp/jdadat/report/akachan/

自治体によっては、妊産婦さんや赤ちゃん向けの避難所の設置があります。お住まいの地域にあるか、調べておくと安心ですね。

※1 厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準(2020年版)」*
参考/公益社団法人日本栄養士会 日本栄養士会災害支援チーム 日本赤ちゃん防災プロジェクト「災害時における乳幼児の栄養支援の手引き」

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士