「産後うつかも」と思ったときの食事
公開日: 2020年10月15日
妊娠中や産後は、女性ホルモンの急激な変化などにより、からだだけでなく心も不安定になりがちです。
ちょっとしたことで落ち込んだり、不安になったりすることもしばしば。
やる気がわいてこなくて「料理をしたいのにできない」というジレンマを抱えている方も少なくないはずです。
気分が落ち込んだときに、簡単に作ることができて、栄養素も摂れるレシピを紹介します。
気分の落ち込みが2週間以上ありませんか?
「産後うつ」という言葉を知っていますか?
産後3カ月以内に発症することが多いうつ病のことで、産後女性のおよそ10%にみられます。
マタニティーブルーズはたいてい1〜2週間でおさまりますが、産後うつの場合は気分の落ち込みや、子育てに自信が持てないなどの症状が2週間以上続くのが特徴です。
産後は女性ホルモンの急激な変化はもちろんのこと、もともとうつ病を抱えていたり、妊娠中から精神的に不安定だったり、育児をだれにも頼れない環境であったり、さまざまな要因によって発症するといわれています。
2016年、「自殺で亡くなった妊産婦が、東京23区で10年間(2005〜14年)で63人に上った」というニュースが報じられました。*1
自殺で亡くなった方の数は、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍で、妊娠・出産期の死因として自殺が最も多いことがわかりました。
すでに欧米では、産後うつをはじめとする精神疾患による自殺が少なくないことが知られています。
産後は赤ちゃんのお世話が中心の生活となり、自分の食事もままならない方が多いのではないでしょうか?
また、まとまった睡眠時間がとれないというのもよくあることです。
食事や睡眠がきちんととれていないと、からだだけでなく、心にも変調をきたします。
「もしかして、産後うつっぽいかも」と思ったら、家族や友人・近所の方などのサポートを受けたり、自治体や民間のサービスなどを利用したりして、食生活を含む生活習慣を立て直しましょう。
*1 妊産婦自殺 10年で63人…東京23区 産後うつ影響か(毎日新聞)
和食をきほんにすると栄養が整いやすい
産後の約2カ月間は産褥期といい、体力を回復させる期間でもあります。
この間は、十分な休養と栄養が必要です。
食事は自分に必要なエネルギー量(カロリー)を摂り、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン・ミネラル類のバランスを整えることがきほんになります。
母乳育児の方は、お母さんと赤ちゃんの健康のために、妊娠前よりも栄養素を多めに摂りましょう。
妊娠後期に引き続き、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物を、それぞれいつもより多めに摂ることを意識するといいでしょう。
けれど、産後はからだも心も疲れきっていて、いちいちカロリーを計算したり、献立を考えるのは現実的に難しいもの。
実践しやすい方法として「日本の伝統的な和食を摂る」ことをおすすめします。
ある調査で「地中海式食事」(地中海に面したイタリア、ギリシャなどで食べられている伝統的な食事。特徴は、野菜、果物、オリーブオイルが豊富で、それに穀類、適量の赤ワインが加わり、肉類や乳製品は少なめ)が「西洋式食事」に比べて、うつ病のリスクを低下させることがわかっています。
けれど、日本人がいきなり「地中海式食事」を実践するのは簡単ではありません。
和食は日本人にとって健康的な食事であるといえますし、食べ慣れた味でもあります。
けれど、和食にも欠点が2つあります。
①しょうゆやみそなどを使うので塩分量が多くなりがちな点
②乳製品が摂りにくい点
減塩和食にして、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を摂ることを心がけるといいでしょう。
負担の少ない産後おすすめレシピ
産後うつっぽいなと思ったときに、簡単に食事が摂れるレシピを紹介します。どれも簡単なレシピばかりなので、普段は料理をしないというパートナーの方でも作りやすいと思います。ぜひ、リクエストしてみましょう。
■納豆やしらすなどをのせるだけのどんぶり
■鉄・葉酸・食物繊維が摂れる鍋
■みそ汁でたんぱく質を補いましょう
■見た目が華やかな乳製品を使ったデザート
毎食1品だけでは栄養素が偏ってしまいがちなので、以下のポイントを参考に、余裕のあるときに取り入れてみてください。
・副菜に、卵やしらす干し、油揚げ、鶏ささ身などのたんぱく質を意識して取り入れる
・卵や豆類、貝類など、鉄分が含まれる食材を積極的に摂る
・海苔やわかめなどの海藻類、ほうれん草や枝豆などの野菜など、葉酸が含まれる食品も意識的に摂る
ただし、葉酸は水に溶ける水溶性ビタミンのため、お湯でゆでるのではなく、ラップ等に包んで電子レンジで調理したり、スープに丸ごと入れたりすると摂取しやすくなります。
参考/産後うつ病について教えてください(日本産婦人科医会)、妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル(日本産婦人科医会)、e-ヘルスネット 妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療(厚生労働省)、うつ病の毎日ごはん(女子栄養大学出版部)、妊産婦のための食事バランスガイド(国立健康・栄養研究所)
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画像提供:ピクスタ