こんなときどうする? 少しの工夫で誰でも楽しく食事ができる 片手調理の7つのアイデア

ケガや病気で片手が使えなくなったり、日常生活での動作に支障が出たりしたとき、どのように食事を作って食べればよいのでしょうか?

今回お話を伺ったのは、家庭料理を中心に、手軽に作れるおいしいレシピを多数ご紹介されている料理研究家の重信初江さん。ご自身にも骨折の経験があり、片手での調理や食事づくりに試行錯誤したそう。 重信さんならではの、いつでもおいしく楽しく食事をするためのアイデアをまとめてみました。忙しいときの調理にも役立ちます。

手をスムーズに使えないと
食事作りのハードルが上がりがち

手を思うように動かすことができないと、料理に家事に、日常の多くの動作が滞ります。お料理をすることはもちろん、食べること、片付けることもとても大変です。

「調理のなかで特に大変なのは、『切る』工程。包丁を使うときは、片方の手で包丁を握り、もう片方の手は食材を押さえる必要があります。片手だけで包丁を使うと刃先がすべったりずれたりして、危険です」(重信初江さん、以下同)

同時に、火を使う工程もハードルが高め。

「まず両手鍋は扱いにくく、鍋が重いと運ぶのが何といっても大変です。フライパンで炒めものをするとき、片手だとしっかり混ぜ合わせることが難しい場合もありますね。揚げものは、片手しか使えないときはやけどの心配も高まります。無理せず、揚げものはお惣菜を買うなど、上手に手を抜くことも大切です」

手が使えなくても食事を作るためには、準備段階から調理まで、いろいろな工夫が必要です。

どんなときもおいしく食べられる
調理のアイデア

では具体的にどんな部分に工夫の余地があるのでしょうか?


「ちぎる」「すくう」
包丁を使わないという発想を

「包丁を使わなくても食材を切ることは可能です。 例えば、切らずにちぎる。レタスやキャベツといったやわらかい葉野菜なら、包丁で切るよりもちぎるほうがラク。一口大ほどにちぎって料理に使ってみましょう。また、お豆腐はスプーンですくってもいいんですよ」


電子レンジで加熱をすると、
「切る」「つぶす」「裂く」がラクになる

「かぼちゃやいも類は、ラップに包んで加熱をすることでやわらかくなります。フォークなどでつぶしやすく、また、力を入れずにスッと切ることもできます。なすは加熱をするとかんたんに裂けるので、そのままサラダにしてもいいですね。

野菜の下ごしらえでは通常『ゆでる』ことが多いですが、手が思うように使えないときは、お湯を沸かしたり湯切りをしたりする工程が億劫になりがち。電子レンジなら手間をかけずに短時間で加熱ができ、切ったりつぶしたりする工程がよりラクになります」


カット野菜や加工品に頼るのも手

カット野菜や缶詰は、食材を切る必要がないのも魅力のひとつ。
「手が使えないと食事の内容がマンネリになることも。市販のカット野菜や缶詰を活用することで料理がバラエティ豊かになり、楽しいものになります。カット野菜と缶詰を具にしてスープにするのも手軽です。思うように手が使えないと気分が下がりがちですが、加工品を活用することで調理の手間が少なくなり食事はぐっとおいしく、楽しい気持ちがよみがえります。ふだんあまり使わない人も、ぜひ使ってみてはいかがでしょう」


こんな時こそ乾物の出番!
軽くて扱いやすく便利です

「家に常備していることの多い乾物は、調理しづらいときの救世主でもあります。ひじきや乾燥ワカメ、高野豆腐など、切らずに使えるものは特に便利。乾物はどれも重量が軽いので、ケガや病気のときの買い物でも、体への負担を軽減できます」 乾物は栄養価が高いものが多いので、なおさらとりいれたいものです。


ほうれん草より小松菜。
下ごしらえがかんたんな食材選びもポイント

調理の工程はなるべく省略したいものです。
「例えばアク抜き。ほうれん草は栄養価が高く手に入りやすい食材ですが、アクがあるため下ゆでをするのが基本です。一方、同じ葉野菜の小松菜は、アク抜きが不要。料理でほうれん草を使うところを小松菜で代用すると食事づくりが少しラクになりますね。またブロッコリーは栄養豊富で馴染みがありますが、房に分ける工程が手間です。市販の冷凍のもので代用するなど、臨機応変に対応しましょう」

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ブロッコリーは冷凍のものであれば、小房に分けられているので便利です。

買い物の量・重さを抑えるのも
ひとつの知恵です

体が思うように動かないときは、買い物も重労働です。
「骨折をしたときに実感しましたが、買い物のとき、いつものように重たいものを持てないので、重さや大きさはネックになります。乾物はとても軽量なので買い物がスムーズ。食材を選ぶときは、重さやカサ、量などもイメージしながら購入するといいですね」


片手で肉や魚も切れるのが
キッチンばさみ

食品を切ることを想定して作られているキッチンばさみ。重信先生はふだんから活用しています。
「韓国料理屋さんに行くと、店員さんが鍋に入った肉をはさみで豪快に切ってくれますよね。キッチンばさみは、厚い肉や魚、もちろん野菜など、いろいろな食材をジョキジョキ切ることができます。使うシーンはさまざまで、肉や魚はまな板の上で切るだけではなく調理中の鍋やフライパンのなかで切ってもいいのです。またボウルに食材をとれば、ボウルのなかで食材がある程度固定されるのでハサミを入れやすく、切りやすくもなります。キッチンバサミなら片手だけで食材を切ることができるので、手が使えないときに非常に便利ですし、まな板など洗い物が減るのでふだんから出番があります。家に一丁あると重宝しますよ」

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食材をボウルにとってみると、食材があちこちに逃げずに切りやすくなります。


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鶏肉をキッチンバサミで小さく切っているところ。片手しか使えないときは、まな板のうえで包丁を使って肉を切るのはすべってとても危険です。生の肉をキッチンばさみで切るのもすべってうまく切れないことも。肉を鍋に入れ、調理をしているときにキッチンばさみを使うと、すべらずに簡単に切ることができます。


突然のケガや病気で手を思うように動かせなくなったときも、食事をきちんとして栄養をとることは大切にしたいですよね。 お惣菜やお弁当を買って食べてももちろんいいですが、少しでも調理アイデアを知っておけば食事がもっと豊かになるはずです。 キッチンばさみをはじめ、ほかの調理道具もうまく活用して、調理や食事を楽しんでいきましょう。


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プロフィール
重信初江先生
料理研究家。料理研究家のアシスタントを経て独立。家庭にある身近な素材で作る、簡単でおいしい毎日のおかずに定評がある。おふくろの味から本格エスニック料理まで幅広いメニューが人気で、雑誌やテレビなど多方面で活躍中。著書に『遅夜スープ』(宝島社)、『ササッと15分!ひとりごはん』(講談社)など多数。最新刊に『がんばらない晩ごはん献立』(Gakken)。


取材・文・写真 / 鈴木 有子