糖尿病性腎症の食事とは?切り替え方のポイント
公開日: 2021年9月7日
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと合併症が起こることがあり、「糖尿病性腎症」はそのひとつです。
血糖コントロールをメインとした糖尿病用の食事療法を行ってきた方が、糖尿病性腎症と診断された場合、食事の考え方を変えなければいけません。
血糖コントロールを続けつつ、腎機能をこれ以上低下させないための食事へと切り替える必要があります。
糖尿病食との違いや制限が必要なものなど、糖尿病性腎症に適した食事について解説します。
1.なぜ糖尿病で腎臓が悪くなるの?
1-1.糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症のひとつ
1-2.なぜ糖尿病食から切り替えないといけないの?
2.糖尿病性腎症の食事とは?
2-1.進行度によって食事療法が変わります
2-2. 全ステージ共通:食塩の多い食品は控える
2-3.第3期以降はたんぱく質量の調節が重要になります
2-4.第4期以降カリウム制限のある方は、カリウムの多い果物や野菜は量を調整します
2-5. 食品を4つに分類すると適量がわかりやすいです
3.まとめ
1.なぜ糖尿病で腎臓が悪くなるの?
1-1.糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症のひとつ
糖尿病は、血糖値を下げるホルモンのインスリンが十分に働かなくなり、血糖値が高い状態が続く病気。高血糖が続くと合併症を発症するリスクが高まります。
合併症には急性合併症と慢性合併症があります。慢性合併症は主に血管障害で、特に細い血管が集まっている眼・腎臓・神経に起こる細小血管障害は、糖尿病の三大合併症といわれています。
高血糖により腎臓の血管に障害が起こり、腎臓の働きが低下するのが「糖尿病性腎症」。今の日本では、人工透析を受ける人の原因の第1位は糖尿病性腎症です。
1-2.なぜ糖尿病食から切り替えないといけないの?
糖尿病の食事療法の目的は、適正なエネルギー量の食事をバランスよく食べること。人により分量は前後しますが、大まかなイメージとしては、ご飯はお茶碗1杯、肉・魚などは片方の手のひらに乗るくらいの量、野菜や海藻・きのこなどは両手いっぱいに乗るくらいの量を食べるようにします。
しかし、糖尿病が原因で腎臓の働きが低下すると、体内の老廃物(尿素窒素、酸性物質)やカリウム、リン、ナトリウムなどがうまく排泄できなくなっていきます。 これらが体内に蓄積していくと、尿毒症やアシドーシス(酸血症)、血管の石灰化、高血圧、むくみなどが起こります。
そのため、食事から摂るたんぱく質、カリウム、リン、ナトリウム(塩分)の量を調節する必要が出てくるのです。
2.糖尿病性腎症の食事とは?
2-1.進行度によって食事療法が変わります
糖尿病腎症のステージは1~5期の5段階に分かれ、ステージによって食事の考え方が変わります。
<ステージごとの食事療法>
・第1期(腎症前期)~第2期(早期腎症期):糖尿病食、高血圧があれば塩分制限
・第3期(顕性腎症期):たんぱく質制限、塩分制限
・第4期(腎不全期):たんぱく質制限、塩分制限、カリウム制限
・第5期(透析治療期):軽いたんぱく質制限、塩分制限、カリウム制限、リン制限(血液透析の場合)
2-2.全ステージ共通:食塩の多い食品は控える
急に薄味にすると食事がおいしくなくなり挫折しやすいので、まずは食塩の多い食品は食べる量を減らして調整しましょう。
「みそ汁を半分の量にする」「かける調味料はできるだけ少なくする」などを意識するだけでも減塩になります。
2-3.第3期以降はたんぱく質量の調節が重要になります
糖尿病性腎症の食事療法は、たんぱく質、食塩、カリウム、リン(第5期、血液透析の場合)を制限しつつ、適正なエネルギー量を摂ることが求められます。
難しそうに感じるかもしれませんが、たんぱく質を多く含む食品には、カリウム、リンも多く含まれているので、たんぱく質を制限すれば、自然とカリウム、リンも減らせます。たんぱく質は、肉や魚などおかずになるような食材に多く含まれるので、たんぱく質の量を減らすことで塩分量も少し減ることになります。
たんぱく質が多く含まれるのは、肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品など。「おかずの中心になる食品に多い」と覚えておくといいでしょう。
次に多いのが主食類なので、ごはん、パン、めん類などは低たんぱく食品を活用するのもおすすめです。主食のたんぱく質量を抑えることで、良質なたんぱく質を含む肉類や魚介類などの量を増やすことができます。
2-4.第4期以降カリウム制限のある方は、カリウムが多く含まれる果物や野菜について知りましょう
果物や野菜はカリウムが多いので、食べ過ぎないようにすることが重要です。どの果物や野菜にカリウムが多いのかを調べ、カリウムの多いものは食べる量を控えめにします。なお、野菜はゆでることでカリウムの量を減らすことが可能です。
2-5.食品を4つに分類すると適量がわかりやすいです
糖尿病性腎症の食事は「主食」「たんぱく質源となる食品」「野菜」「果物」の4つに分類すると、それぞれの適量を把握しやすくなります。
●主食
1食ごとに、ごはん、パン、めん類をどれか1品食べます。パンや麺類にはご飯よりもたんぱく質や塩分が含まれるため、主食はなるべくご飯を選びましょう。たんぱく質量を1日30~40gに制限する場合は、低たんぱく食品を利用するといいでしょう。適切な主食の量は個人差があるので、医師や管理栄養士に相談してください。
●たんぱく質源となる食品
医師や管理栄養士から指示されたたんぱく質量の範囲で、いろいろな食品から摂るようにしましょう。そのためには、食品に含まれるたんぱく質量を把握することが重要です。
<食品に含まれるたんぱく質量>
豚ロース赤身薄切り1枚(40g):約9g
鶏むね皮なし60g:約14g
鶏もも皮なし60g:約11g
さけ2/3切れ(60g):約13g
あじ中1尾(60g):約12g
木綿豆腐(100g):約7g
厚揚げ(60g):約6g
納豆1p(40g):約7g
卵1個(50g):約6g
※1より抜粋
※これらの中から何種類か組み合わせて、医師や管理栄養士から指示があった1食あたりのたんぱく質の量にしましょう
※魚や肉の種類や部位によって異なるので、詳しくは医師や管理栄養士にご相談ください
●野菜
1食あたり70gを目安とし、1日に200g程度食べます。
●果物
適量はそれぞれを1日に100g程度です。
3.まとめ
食事療法は継続することに意味があります。まずは糖尿病食との違いを理解し、「何をどれくらい食べていいのか」の目安を知ることから始めましょう。そして、目安の食事に慣れ、習慣として定着するよう、医師や管理栄養士と相談しながら、食事療法に取り組んでいきましょう。身体に必要なエネルギー量を摂取しつつ、腎臓に負担をかけない食事療法を行うことで、糖尿病性腎症の進行を緩やかにすることが期待できます。
参考:長坂昌一郎 監修「糖尿病性腎症の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)
参考:黒川清 監修「腎臓病食品交換表 第9版 治療食の基準」(医歯薬出版)
※1 日本糖尿病学会 編著「糖尿病腎症の食品交換表第3版」(文光堂)
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