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夏の食生活と血糖コントロール[夏の血糖コントロール:第2回]

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気温が高い夏は、食欲が落ちやすいという人も多いのではないでしょうか。食欲が落ちることで夏場に体重が減る人も多く、糖尿病の患者さんにとって、夏は血糖コントロールがしやすい季節とも言えます。しかし食欲の低下は、別の問題を引き起こす原因になることも。

そこで「夏の血糖コントロール」についての第2回となる本記事では、夏の食生活の注意点について筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科の矢作直也先生にお聞きしました。夏バテによる食欲不振が引き起こすデメリットと、夏の食生活で心がけるポイントをご紹介します。

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夏の食生活の乱れは食欲不振から

夏に食欲が低下する、いわゆる「夏バテ」の状態は、なぜ起こるのでしょうか?

主な原因と考えられているのが、「自律神経の乱れ」です。通常、人間の体は自律神経が働くことで、血管を拡張・収縮させて体温を一定に調節しています。しかし夏の暑さや冷房による寒暖差で自律神経が乱れると、体温調節が難しくなり、体のさまざまな機能に不調が起きるのです。

その不調のひとつが、食欲の低下。自律神経は胃腸の働きも制御しているので、自律神経が乱れると胃の働きが低下し、食欲不振につながります。

では、食欲不振になることが糖尿病の患者さんにとって、どんなデメリットをもたらすのでしょうか?

矢作先生によると、一番のデメリットは「食事の時間やバランスが乱れること」だそう。食欲がわかないと、「食べたくないから後にしよう」「食べられるものだけ食べよう」と、食事の時間と量が不規則になりがちなのだとか。

糖尿病の血糖コントロールの基本となる食事療法において、規則正しい食事で血糖値の変動リズムを整えることはとても大切です。その基本がおろそかになると、「3食の食事以外に間食を取るようになったり甘い飲み物で小腹を補ったりしてしまう人が多い」と矢作先生。糖尿病患者さんにとって、望ましくない食生活に発展してしまうのです。

また矢作先生は、「食生活が不規則になる以外にも、食欲不振が引き起こす夏特有の食事は、血糖コントロールに悪影響をもたらす可能性があり注意が必要です」と言います。

夏に注意したい食生活とは

炭水化物に偏った食事

食欲がなくなる夏、よく食卓に上がるのが、そうめんやひやむぎ、冷やし中華などの麺類です。そういった「主食1品で手軽に済ませよう」という炭水化物のみの食事は、必然的に食物繊維やたんぱく質、ビタミン類が不足しがちになります。そのため、炭水化物ばかりを摂取することになり、ブドウ糖の生成量も増加することに。麺類のみの食事は、高血糖になりやすいと言えます。

冷奴などのたんぱく質のおかずや、トマトなど野菜を組み合わせて食べるのがおすすめです。麺類は食塩も多くなりがちなので、汁を飲むのは少しだけにしておきましょう。

甘くて冷たい食べ物

暑い日に食べがちなのが、アイスやゼリー、果物など。冷たくてさっぱりとしたものは、暑い日でものどを通りやすく、手軽に食べられます。しかし、どれもエネルギー量が高いため、それだけで満足してしまう場合も。きちんと食事をとらずに過ごす一因になってしまいます。

また、意外に糖質が多いのが果物。果糖・ブドウ糖・ショ糖などの単純糖質が果物には多く含まれ、これらは血糖値を上げる原因となります。

1日3回の食事からしっかりとエネルギーをとって、アイスなどの甘くて冷たい食べ物はたまの楽しみにとどめましょう。どうしても食べたいという場合は、栄養成分表示を確認して、エネルギーが低い商品を選んでください。

食生活への意識を再確認して

夏場に食生活が乱れる原因「夏バテ」。これを改善するためには、「基本に立ち返って、“食事をきちんととる”という意識を持つことが重要」だと矢作先生は言います。きちんと食べる時間を決めて、主食だけでなくおかずも食べるように心がけましょう。

「どうしても食欲がわかない場合は、3食を2食にしても問題ありません。その場合は、間食や飲み物など、食事以外でお腹を満たさないように意識することが大切です」(矢作先生)。

まとめ

食欲不振は食生活の乱れを引き起こし、血糖コントロールに悪影響をもたらす食事を摂りやすくなる原因に。 もちろん、すべての人が夏に食欲不振になるわけではありません。しかし、夏は炭水化物に偏った食事や、甘くて冷たい食べ物のとりすぎが増えやすいことを覚えておくと良さそうです。

夏場も基本を忘れず、規則的にバランスのよい食事をとることを意識し直しましょう。

<参考> 日本成人病予防協会 監修:健康管理コラム「夏バテ予防」 https://kentei.healthcare/info/column/?p=3485

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監修
矢作直也先生
筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科准教授。東京大学医学部卒。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院特任准教授を経て、2011年より筑波大学准教授(ニュートリゲノミクスリサーチグループ代表)に。医師として糖尿病やメタボリックシンドロームの診療にあたりつつ、研究者としてニュートリゲノミクス研究を推進。薬局と医療機関との連携による糖尿病早期発見プロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」の展開など、活動は多岐にわたる。著書に『遺伝子制御の新たな主役 栄養シグナル』(羊土社)など。
編集:おいしい健康編集部
監修:矢作直也先生
文:山本二季
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