「スイスの食卓から」第3回:健康の秘密は地中海食にあり?イタリアの食生活をご紹介! 文・安藤友梨
公開日: 2021年10月11日
世界における長寿国ランキングは日本がトップですが、健康な人が多い国ランキングではなんとイタリアの方が上位!(※) 今回はその理由を探るべく、スイスのお隣イタリアの食についてご紹介します。
国内でも人気のイタリア料理。その特徴は?
日本でも気軽に食べることができるイタリア料理。 ピザやパスタ、カプレーゼといった定番のお料理はもちろん、今ではマリトッツォのようなローカルスイーツまで広く認知されるようになりました。
イタリアは日本と似た南北に細長く伸びる地形を持ち、都市ごとに様々な伝統料理がある、とても食文化豊かな国です。
温暖な南部はオリーブオイルやトマト、魚介類をふんだんに使ったシンプルな味付けの料理が多く、北部へ行くにつれて赤身の牛肉やチーズ、クリームを使う料理が増えるなど、地域ごとの気候に沿った多様な食が存在します。
地中海式食事法とは?健康との関係って?
イタリアをはじめ、ギリシャやスペイン、モロッコなど地中海沿岸の国々では古くから地中海式食事法(地中海食)と呼ばれるスタイルの食事方法が採用されており、2010年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。
特徴として、野菜や果物、豆類、全粒をはじめとする穀物をベースに、肉類よりも魚介類を多く摂取し、オリーブオイルを多くの料理にとり入れていることが挙げられます。
中でも健康効果が期待されるのはオリーブオイルです。
オリーブオイル、特にエキストラバージンオリーブオイル(酸度が0.8%以下、かつ風味官能検査で欠陥がみられないもの)に含まれる、抗酸化物質のポリフェノールやオレオカンタールといった天然有機化合物。これらは心血管疾患へのリスクを低減させ、健康寿命の延長に効果がみられると期待されており、現在も様々な国で研究が進んでいます。
そして、イタリアの一人当たりのオリーブオイル消費量はなんと年間8.2㎏! 食卓に欠かせない存在であることがわかります。
また、豊富に獲れる魚介類にはたんぱく質やカルシウムだけでなく、DHAやEPA、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸が含まれています。 これらも心血管疾患の予防に働きかけてくれる効果が期待されます。
日本と同じ!「引き算」スタイルの調理法
イタリアの食事はシンプルな調理法が主流です。
西洋料理は足し算、日本料理は引き算などと言われていますが、イタリアにおいてはシンプルな引き算の料理も数多く存在しています。 例えばサラダ。レストランでは旬の葉野菜にオリーブオイルを回しかけレモンを添えて提供されます。
なんともシンプルですが、レモンの酸味と香り、オリーブオイルのさわやかな辛味と苦みによって塩味がなくともさっぱり美味しく食べられます。その他にも旬の野菜を煮込んで作るカポナータや、イタリア版おふくろの味といわれるスパゲティ・ポモドーロのように、素材そのもののうま味を生かした料理方法が受け継がれています。
食材の味を損なわない調理方法は日本とも共通している部分がありますね。
数あるイタリアの名物グルメ、その一部をご紹介!
sarde a beccafico/イワシのパン粉焼き
シチリア島の郷土料理。新鮮なイワシにパン粉やオレガノ、レーズン、松の実などを混ぜたフィリングを挟んで焼いたもの。骨まで食べられることからカルシウム補給にぴったりです。
frittura di calamari /ヤリイカのフリット
筒切りにしたヤリイカにセモリナ粉(小麦粉の一種)をまぶし、オリーブオイルで揚げたとてもシンプルな料理。 噛み応えたっぷりのイカには、アミノ酸の一種でうま味の素となるタウリンが含まれています。タウリンは疲労回復に繋がるとされています。
panelle/ひよこ豆のフリット
イタリアのストリートフードであるパネッレ。ひよこ豆の粉を水で練って素揚げしただけとなんともシンプルですが、香ばしい風味が食欲をそそります。ひよこ豆は大豆と同じくらいの不溶性食物繊維を含み、お腹の調子を整える効果が期待されます。
insalata di polpo /タコのサラダ
柔らかく茹でたタコとレタス、エンダイブなどをオリーブオイルとレモン、塩でマリネしたサラダ。
タコもイカと同様に、うま味成分であるアミノ酸や疲労回復に繋がるとされるタウリンを含みます。
carpaccio/カルパッチョ
有名なイタリア料理の一つであるカルパッチョですが、元祖は魚ではなく生の牛ヒレ肉にチーズを削ってかけたものを指します(諸説あり)。牛の赤身肉に含まれるトリプトファンは、心身をリラックスさせたりストレスを軽減したりする効果があるセロトニンを産生します。
spaghetti alle vongole veraci/あさりのスパゲッティ
南イタリアでとてもポピュラーなあさりを使ったスパゲッティ。トマトを使うボンゴレ・ロッソ(赤)、バジルを使うボンゴレ・ヴェルデ(緑)、イカ墨入りのボンゴレ・ネロ(黒)など、お店によっていろいろな種類があります。 あさりには貧血の予防に効果的な鉄分や、ビタミンB12を多く含まれます。
Pappa al pomodoro/トマトのパン粥
固くなったパンを無駄にしないようにという考えから生まれたトスカーナ地方の家庭料理。 たっぷりのトマトとオリーブオイル、パン、ニンニクなどを煮込んで作られます。 暑さで食欲がない日にもさらっと食べられる、日本のお茶漬けのような存在です。
macedonia di frutta/フルーツサラダ
旬の果実を使って作られるフルーツサラダです。イタリアは個人あたりの果物の消費量が世界第三位ということもあり、一年を通して様々なフルーツが店頭に並んだり、街中にはフルーツジュースのスタンドもあります。
サボテンの実など、日本ではあまり見かけないものも。ビタミンや食物繊維を含むフルーツは毎日食べる習慣をつけたいところ。
まとめ
今回はイタリアの食生活についてご紹介しました。 エキストラバージンオリーブオイルを毎日摂取することは少々難しいかもしれませんが、肉類よりも魚介類を多く食べる、味付けは控えめにする、野菜や果物をしっかり食べるなど今日から実践できることも数多くあります。
日本ではレモンを酢に置き換えることで、お財布に優しくおいしく減塩につなげることができそうです。 健康な身体の為に、できることから試してみたいですね。
※ 参考:平均寿命世界ランキング・国別順位(2021年版) 、
These are the world’s healthiest nations
安藤友梨
北海道出身の管理栄養士。機内食の商品開発や、栄養ソフトのサポート経験などを経て現在はスイスで生活中。
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