腎臓病でたんぱく質制限が必要になったとき、気をつけたいことは?
公開日: 2021年10月7日
慢性腎臓病と診断されると、医師から「たんぱく質制限が必要」と言われることがあります。腎臓の機能低下が進むと、なぜ、たんぱく質の摂取量を制限しなければいけなくなるのでしょうか。適切なたんぱく質制限を実践するために、腎臓とたんぱく質の関係を知ることから始めましょう。その上で、腎臓の状態(慢性腎臓病のステージ)に合わせたたんぱく質の適正量と、良質なたんぱく質を摂るための工夫を理解することが大切です。
1.なぜ、たんぱく質制限が必要?
1-1.腎臓の処理能力を超えたたんぱく質を摂ると、腎臓が疲れてしまいます
1-2. 人によってはたんぱく質過多の食事になっている場合も
2.ステージの初期なら軽い制限で大丈夫
2-1.eGFR値で自分のステージを確認
2-2. ステージによってたんぱく質の適正量が決まります
3.たんぱく質制限の食事で大切なことは?
3-1.ステージが進んだら、良質のたんぱく質を摂ることを重視
3-2. おかずからたんぱく質を摂れるよう、主食は低たんぱく調整食品に
4.まとめ
1.なぜ、たんぱく質制限が必要?
1-1.腎臓の処理能力を超えたたんぱく質を摂ると、腎臓が疲れてしまいます
腎臓の最も大切な役割は、「尿を作って体内の老廃物や余分な水分を、体の外に排せつすること」です。 たんぱく質は、体内で分解されて最終的に老廃物となります。
ここでいうたんぱく質は、食べ物として摂り入れたたんぱく質と、筋肉などの身体を構成するたんぱく質も含まれます。 筋肉などの身体を構成するたんぱく質が壊れたものも、老廃物となり腎臓から排せつされます。
食事からたんぱく質をたくさん摂ると、それだけ老廃物も増えることになります。大量の老廃物を尿として排せつするために、腎臓はとても忙しく働かなければならず、疲れてしまいます。
腎臓の機能を今以上に悪くしないためには、食事から摂るたんぱく質の量を、今の腎臓で処理できる範囲に制限する必要があるのです。
1-2.人によってはたんぱく質過多の食事になっている場合も
たんぱく質を制限するには、まず適正なたんぱく質の量を理解することが大切です。 実は現代の日本人の食生活は、たんぱく質が過多になっていることが多いのです。 では、食品にはどの程度たんぱく質が含まれているのでしょうか。
たんぱく質10gを含む食品の例
・鶏もも肉(皮つき):約60g
・さんま:約50g(約1/2尾)
・まぐろの切り身:約40g
・卵(Mサイズ):約80g(Mサイズ約1と1/2個)
・牛乳:約300g
・絹ごし豆腐:約200g(約2/3丁)
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_011.pdf
定番のメニューにもたんぱく質は多く含まれています。
例えば
・唐揚げ3つ(約100g):たんぱく質が17g
・鉄火丼1杯:たんぱく質が約40g
などです。
※参考:女子栄養大学出版部「外食・コンビニ・惣菜のカロリーガイド」
なお、身体を作る材料となる「必須アミノ酸」のバランスを整えるには、いろいろな食材からたんぱく質を摂ることが大切です。複数の食材からたんぱく質を摂れるように、1つの食材に偏らない食事を意識することも大切です。
2.ステージの初期なら軽い制限で大丈夫
2-1.eGFR値で自分のステージを確認
慢性腎臓病の重症度は、血清クレアチニン値からGFR(糸球体濾過値)の近似値を算出する「eGFR値」で判断します。eGFR値によって自分の腎臓のステージがわかり、ステージは以下の6段階に分かれています。
G1 eGFR値90以上:正常
G2 eGFR値60~89:正常または軽度低下
G3a eGFR値45~59:軽度~中等度低下
G3b eGFR値30~44:中等度~高度低下
G4 eGFR値15~29:高度低下
G5 eGFR値15未満:末期腎不全
参考:東京医学社「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf
2-2.ステージによってたんぱく質の適正量が決まります
たんぱく質の適正量は慢性腎臓病のステージで分けられ、標準体重からたんぱく質量を計算します(標準体重=身長[m]×身長[m]×22)。
例)標準体重60㎏の人の1日の摂取目安
●G1~G2の場合
たんぱく質量:過剰な摂取をしない(78gを超えないようにする)
塩分量:6g以下
(1日のたんぱく質摂取量の目安の一つとして、【標準体重×1.3g】で計算した量を超えないようにする)
●G3aの場合
たんぱく質量:48〜60g
塩分量:6g以下
(1日のたんぱく質摂取量の目安の一つとして、【標準体重×0.8〜1.0g】で計算した量にする)
●G3b以上の場合
たんぱく質量:36〜48g前後
塩分量:6g以下
(1日のたんぱく質摂取量の目安の一つとして、【標準体重×0.6〜0.8g】で計算した量にする)
参考:日本医学社[「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf)
※たんぱく質量の目安量は、個人の症状等によって異なります。詳しくは医師や管理栄養士に確認しましょう。
G1~G2はたんぱく質制限はありませんが、たんぱく質の過剰な摂取は控えましょう。G3は軽い制限が必要になりますが、多く摂りすぎてしまったときは前後の食事で調整しましょう。
3.たんぱく質制限の食事で大切なことは?
3-1.ステージが進んだら、良質のたんぱく質を摂ることを重視
ステージがG3b以上になると、たんぱく質を1日40g程度に制限することになります(標準体重60㎏の場合)。少ない適正量の中で、できるだけ質の良いたんぱく質を摂る必要が出てくるのです。 質の良いたんぱく質を含むのは、肉、魚、卵、豆腐などです。
3-2.おかずからたんぱく質を摂れるよう、主食は低たんぱく調整食品に
質の良いたんぱく質は、おかずとなる食品に含まれているのですが、ごはん、パン、麺類などの主食にもたんぱく質は含まれています。 例えば、6枚切りの食パン1枚に約6g、茶わんに軽く1杯のごはん(150g)に約4g(※)と、意外と多くのたんぱく質を主食から摂ってしまうことになります。
主食のたんぱく質をカットし、その分のたんぱく質をおかずから摂れるようするために活用したいのが、「低たんぱく質調整食品」です。パン、ごはん、パスタ、うどんなどさまざまな食品があり、通信販売などで購入することができます。管理栄養士などに聞いてみるといいでしょう。
※参考:女子栄養大学出版部「腎臓病の満足ごはん」
4.まとめ
慢性腎臓病の人はたんぱく質を摂りすぎないことが大切ですが、「たんぱく質制限が必要と言われたから」と極端にたんぱく質を控えると、やせすぎたり筋力が低下したりして、かえって腎臓に悪い影響を与えてしまうことがあります。食事療法は、できる範囲で無理なく行うことが大切です。主治医や管理栄養士からアドバイスを受けながら、“腎臓に優しい食事”をゆるく長く続けていくようにしましょう。
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