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腎臓病のカリウム制限 押さえておきたいポイント

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慢性腎臓病が悪化して、腎臓の機能低下が進むと、身体にたまった余分なミネラルがうまく排泄できなくなっていきます。ミネラルのひとつであるカリウムはナトリウムを身体の外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立つ栄養素。しかし、慢性腎臓病ではカリウムが体内に蓄積すると、「高カリウム血症」となり、命にかかわる不整脈を起こすこともあります。そのリスクを防ぐには、食事で摂るカリウムの量を抑えなければいけません。カリウムを摂りすぎないようにするにはどのような工夫が必要なのか、そのポイントを紹介します。

目次
1.腎臓病はなぜカリウム制限が必要になるの?
1-1.腎臓の機能が低下すると老廃物を排泄機能が低下してきます
1-2.腎臓病が進行すると余分なミネラルも排せつできなくなります
2.カリウムを摂りすぎないためには
2-1.カリウムが多い食品を理解しましょう
2-2. カリウムを減らせる調理法を活用しましょう
2-3.カリウムが多い食品は?
3.まとめ

1.腎臓病はなぜカリウム制限が必要になるの?

1-1.腎臓の機能が落ちると老廃物を排せつする機能が低下してきます

腎臓には、血液をろ過して尿を作る、体内の水分量をコントロールする、ホルモンを分泌するなどの働きがあります。特に、尿を作って体内の老廃物や余分な水分を体外に排泄するのは、腎臓にしかできない仕事です。

1-2.腎臓病が進行すると余分なミネラルも排せつできなくなります

慢性腎臓病の重症度は6段階に分かれており、5段階目のG4(高度低下)と6段階目のG5(末期腎不全)になると、余分なミネラル(カリウムやリンなど)も体外へ排せつすることができなくなってしまいます。

G1 正常または高値
G2 正常または軽度低下
G3a 軽度~中等度低下
G3b 中等度~高度低下
G4 高度低下
G5 末期腎不全

カリウムは筋肉の収縮に関わるミネラルなので、余分なカリウムが体内に蓄積されていくと、筋肉が麻痺を起こします。最初は手足にしびれを感じる程度ですが、蓄積量が増えて「高カリウム血症」になると心臓の筋肉が麻痺し、命にかかわる不整脈が起こるリスクが高まります。高カリウム血症とは血清カリウム値5.5mE/ℓ以上のことで、血清カリウム値7.0mE/ℓ以上で心停止を起こす可能性があります。

2.カリウムを摂りすぎないためには

2-1.カリウムが多い食品を理解しましょう

腎臓の機能が低下して余分なカリウムを排せつできなくなってきたら、必要以上のカリウムを摂らないようにしなければいけません。 カリウムの量が多い食品は野菜やいも類、果物です。

●野菜
野菜は調理前のひと手間でカリウムを減らすことが可能です。 葉物野菜は特にカリウムが溶け出しやすく、生のほうれん草100g(約1p)のカリウムは690mgなのに対し、ゆでたほうれん草は343mg。 ゆで汁にカリウムが溶け出しているので必ずゆで汁は捨てましょう。

●いも類
いも類は全体的にカリウムが多いので、食べるのは少量にとどめます。いも類はゆでてもカリウムが損失しにくいです。 例えばじゃがいも皮なし100g(1/2個)当たりのカリウムは410mg、じゃがいも皮なし水煮100g当たりのカリウム330mgとなっています。

●果物
果物の缶詰はカリウムが少なめですが、シロップにはカリウムが多く含まれているので、シロップは捨てましょう。 例えばみかん100gに含まれるカリウムは150mgですが、みかん缶詰(缶汁を除く)の場合は75㎎です。

2-2.カリウムを減らせる調理法を活用しましょう

カリウムは水に溶けやすい性質があるので、下ゆでしたり水にさらしたりすることで、カリウムの量を減らすことができます。

<カリウムを減らす調理法>
●加熱調理の前に下ゆでする
炒める、揚げる、煮るなどの調理前に、切った食材をたっぷりの湯でゆでます。ゆで汁は捨ててください。 葉物野菜はゆでたあと水に浸し、冷ましてから水けをよく絞ります。

●生で食べるものは水にさらす
ボウルにたっぷりの水を張り、切った食材を10分以上浸しておきます。長時間水にさらす場合は、途中で水を変えます。

食材を細かく切り、表面積を増やした状態でゆでたりさらしたりすると、切断面からカリウムが流れ出やすくなります。 ゆでたりさらしたりしたあとはざるに取り、しっかり水けを切ります。

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2-3.カリウムが多い具体的な食品は?

カリウム制限が必要になったら、1日のカリウム摂取量を医師や管理栄養士から指示があった数値に調整するようにします。カリウム量をコントロールするために、含有量が多い食品を知っておきましょう。

<100g当たりのカリウム含有量が多い食品>
●野菜(生)
ほうれん草690㎎
枝豆590㎎
小松菜500㎎
水菜480㎎
春菊460㎎
西洋かぼちゃ450㎎
そら豆、れんこん440㎎
セロリ、カリフラワー410㎎

●いも類(生)・きのこ類(生)・海藻類(乾)
里いも640㎎
さつまいも480㎎
長いも、カットわかめ430㎎
まつたけ、じゃがいも410㎎
エリンギ340㎎

●果物類
干しあんず1300㎎
干しぶどう740㎎
干しプルーン730㎎
干し柿670㎎
アボカド590㎎
バナナ360㎎
メロン350㎎

※1を基に作成

3.まとめ

慢性腎臓病が進むとカリウム制限が必要になりますが、カリウムはほとんどの食品に含まれています。カリウムを考えて食事することは大切ですが、一方でビタミンや食物繊維が不足しやすかったり、低カリウム血症になってしまったりすることもあります。同じ食品ばかり食べないように、またカリウムが多い食品を一度に食べないようにして、うまくコントロールしましょう。

参考:「透析・腎移植の安心ごはん」(女子栄養大学出版部)
※1「八訂食品成分表2021」(女子栄養大学出版部)

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
文:東 裕美
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