痛風・高尿酸血症のよくある誤解10選
公開日:
2021年1月28日
最終更新日:
2021年8月17日
「痛風」という病気について、みなさんどのようなイメージを持っていますか?
「卵を1日3つ食べ続けると発作が起こる」「魚卵を食べすぎるとなる」なんて思っていませんか?
実は、これらは誤りです。
痛風や、その原因となる尿酸という物質について、患者さんが誤解していることがたくさんあります。
このコラムでは、よくある10の誤解を紹介し、みなさんが正しい対策をとれるようお手伝いします。
【誤解その1】プリン体は悪者である
【誤解その2】尿酸値が高くても痛風にならない人がいる
【誤解その3】尿酸値が高いのはすべて生活習慣が悪いためである
【誤解その4】肥満と尿酸値は関係ない
【誤解その5】痛風患者はフグの白子を絶対に食べてはいけない
【誤解その6】食事で尿をアルカリ化すれば尿酸値が下がる
【誤解その7】果物はヘルシーだから尿酸値にも良い
【誤解その8】焼酎は尿酸値を上げないから、いくら飲んでも良い
【誤解その9】運動すれば尿酸値は下がる
【誤解その10】のどが乾いたら何か飲んでいるので水分は十分
【誤解その1】プリン体は悪者である
→すべての生物の細胞にあるDNA、RNAの半分はプリン体であり、プリン体がなければ生きていけません
尿酸とは「プリン体」という物質の老廃物で、通常は血液の中と尿の中に溶けていて、尿や便、汗から体の外に排せつされます。
悪者と考えられがちなプリン体ですが、すべての生物の細胞にあるDNA、RNAの主な成分です。実はヒトが生きる上で不可欠な物質なのです。
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【誤解その2】尿酸値が高くても痛風にならない人がいる
→高い尿酸値が持続することで痛風を発症します。尿酸値が高ければいずれ痛風を発症する可能性があります
尿酸が体の中で増えすぎてしまい、血液の中に含まれる尿酸の濃さが7.0mg/dLを超えると、「高尿酸血症」と呼ばれます。尿酸値が7.0mg/dLを超えると必ずすぐに痛風が起きるわけではないので、「尿酸値が高くても、痛風にならない人もいる」と考えている方がいます。しかし、尿酸値が高い状態が続けば、いずれは痛風が起きる可能性が高くなります。
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【誤解その3】尿酸値が高いのはすべて生活習慣が悪いためである
→生活習慣が関係しますが、尿酸値はある程度は遺伝で決まりますので、セルフケアには限界があります
かつて痛風は「ぜいたく病」と言われていましたが、尿酸値の上昇には生活習慣と遺伝の両方が関係することがわかってきています。多くの場合は、遺伝的な要因がある人が尿酸値の上がる生活を続けた結果、痛風になると考えられます。
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【誤解その4】肥満と尿酸値は関係ない
→尿酸値は肥満と強く関係があり、痩せれば下がります
内臓脂肪を減らせば尿酸値が下がりやすくなります。
尿酸の材料となるプリン体のうち、食事からは全体の2〜3割。残りの7〜8割のプリン体はエネルギー代謝・新陳代謝によって体内で作られます。ですからプリン体が多く含まれる食品を控えるより、エネルギー量全体を抑えることが、尿酸値を下げるためには効果的です。
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【誤解その5】痛風患者はフグの白子を絶対に食べてはいけない
→プリン体はたまの楽しみ。上手に付き合いましょう
尿酸値が高い場合に食事で注意すべきこととして、かつてはプリン体の制限が大事だとされていました。しかし現在は、エネルギー量を抑えることが重要と考えられています。とはいえ、食事からのプリン体の摂り過ぎは避けましょう。高尿酸血症の人は1日のプリン体の摂取量を400mg未満にすることが適切とされています。
プリン体が特に多い、白子やレバー、えび、いわし、かつおなどは「たまの楽しみ」と考えて、毎日食べることは控えましょう。
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【誤解その6】食事で尿をアルカリ化すれば尿酸値が下がる
→アルカリ性食品では尿酸値は下がりません。ただし、尿路結石の予防になります
尿酸値が高くなると痛風発作のほかに、尿路結石という病気になる可能性があります。
体全体から排せつされる尿酸の量は1日計約700mg。その7割程度は尿から排せつされます。尿酸は通常、弱酸性であり、アルカリ性の液体に溶けやすいという特徴があります。尿をアルカリ化する食品をとることで、尿酸が尿に溶けやすくなり、結晶化するのを防ぐことができます。
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【誤解その7】果物はヘルシーだから尿酸値にも良い
→実は果物に含まれる果糖が尿酸を増やします
果物に含まれている果糖(フルクトース)には尿酸が作られるのを促す働きがあるため、尿酸値が高い人にとって果物は残念ながらヘルシーな食べ物とは限りません。
果糖は体の中で尿酸が作られるのを促すため、果物の食べ過ぎは尿酸値を上げることがわかっています。
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【誤解その8】焼酎は尿酸値を上げないから、いくら飲んでも良い
→アルコール自体に尿酸値を上げる作用がありますので、酒の種類によらず酔えば必ず尿酸値は上がります
プリン体の量はアルコールによって異なり、焼酎よりもビールのほうがより多くのプリン体が含まれます。
しかし、そもそもアルコール自体に尿酸値を上げる働きがあるので、どんな種類のお酒でも飲めば尿酸値は必ず上がってしまいます。
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【誤解その9】運動すれば尿酸値は下がる
→激しい運動をすると尿酸値が一時的に急上昇します。極端な行動は尿酸値上昇につながります。
尿酸値を下げるには肥満の解消が効果的なので、体を動かすこと自体はいいことです。ただし、激しい運動をすると尿酸値は一時的に急上昇してしまいます。
急に痩せようとして無理な運動をしたり、絶食などの極端な食事制限をしたりすると、かえって一時的に尿酸値が上がってしまいます。
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【誤解その10】のどが乾いたら何か飲んでいるので水分は十分
→のどが渇いていなくても、こまめな水分補給を
高尿酸血症の人は、1日に2リットル以上の尿を出すことが望ましいとされています。
「のどが乾いたら何か飲む」だと、水分が不十分な可能性があります。のどが乾いていなくても、食事と一緒、食事と食事の間、就寝前、夜間といったタイミングで、こまめに水分を摂るのがおすすめです。
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痛風・高尿酸血症について、もっと詳しく知りたいという方はぜひ、山中寿先生(医療法人財団順和会山王メディカルセンター院長 国際医療福祉大学医学部教授)監修の「病気と食事のきほん」痛風・高尿酸血症をご覧ください。
<参考>日本痛風・核酸代謝学会・編集『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』(診断と治療社)
<参考>山中寿・著『尿酸値を下げたいあなたへ』(保健同人社)
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山中寿先生
医療法人財団順和会山王メディカルセンター院長、国際医療福祉大学医学部教授。1980年三重大学医学部卒業。83年東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手、85年米国スクリプス研究所研究員、91年東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師、97年同助教授、2003年同教授、08年同所長。20年より現職。