読む、えいよう

飲んでいる薬によっては納豆を食べないほうがいいって本当?

2383

納豆は栄養価が高く、日頃から食事に取り入れている方も多いと思います。 一方で、「血液をサラサラにする薬」を飲んでいる人は、納豆を食べない方がよいという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。 具体的にどのような薬がダメなのか、また、そのように言われている理由や注意事項を分かりやすく解説していきます。

おいしい健康いまなら30日間無料おいしい健康いまなら30日間無料

納豆と飲み合わせがよくない薬とは?

「血液をサラサラにする薬」にもいろいろな種類がありますが、その中でも納豆と一緒に摂取することを避けるべき薬はワルファリン(商品名:ワーファリン)です。 ワルファリンには血液を固まりにくくし、血栓をできにくくする働きがあります。

血液が固まるためには、血液凝固因子であるプロトロンビンなどが必要になります。プロトロンビンが肝臓で産生されるのを手助けするのがビタミンKであり、ワルファリンはこのビタミンKの働きを妨げることで血液を固まりにくくしています。

なぜ納豆を食べてはいけないのですか?

例えば、文部科学省から公表されている 日本食品標準成分表2020年版(八訂) によると、糸引き納豆には100g中に600μgのビタミンKが含まれています。さらに、納豆に含まれる納豆菌は腸内でビタミンKの生合成を促進する働きを持っています。そのため、ワルファリンを服用中の人が納豆を食べることで、ワルファリンの作用を減弱させてしまいます。

その結果、薬自体をきちんと用法用量を守って飲んでいても、正しい効果が発揮されず、血液凝固や血栓生成が促進してしまうおそれがあります。

治療中の心筋梗塞の再発作が起こってしまうなどの報告もあり、軽く見てはいけない飲み合わせと言えるでしょう。

少しの量なら食べても大丈夫ですか?

2385

ワルファリンを服用中は少量でも納豆を食べることは避けるべきだと言われています。 健常者に少量の納豆(10g)を摂取させたところ、血中のビタミンKは48時間後も摂取していないときの2倍以上に増加することが報告されているため(※1)、たとえ少量であったとしてもワルファリンの服用中は納豆を食べることは避けましょう。

※1 医薬ジャーナル. 1997;33:2559-2564

また、加熱すればビタミンKが分解され、摂取してもよいのではないかと考える患者さんもいるようですが、ビタミンKは非常に熱に強いビタミンであることが知られているため、加熱によってもワルファリンとの相互作用は回避できないと考えるべきでしょう。

時間をあければ食べても大丈夫ですか?

ワルファリン服用中は時間をあけたとしても納豆を食べることは控えるべきでしょう。 上述したように、少量摂取でも48時間後に摂取していないときの2倍以上のビタミンKが血中に残っていることや、ワルファリン服用中に納豆を100g摂取すると、血の固まりやすさを示すトロンボテスト値は3日以上も影響を受けることが報告されています(※2)。

※2 Kudo T: Warfarin antagonism of natto and increase in serum vitamin K by intake of natto. Artery 17: 189-201, 1990

明確に何日空ければ大丈夫というデータが少ないため、ワルファリン服用中の納豆は我慢するに越したことはありません。

患者さんの中には半日あければ大丈夫と考えて、ワルファリンを朝に服用し、納豆を夕食に食べていたという事例もあるのですが、ワルファリンの効果が十分に得られず、血液が固まりやすくなってしまうので自己判断での調整はやめましょう。

どうしても納豆が食べたいときは?

2384

納豆を毎日食べている人にとっては、急に医師や薬剤師から「やめてください」と言われてもなかなか受け入れられないかもしれません。

そんな時は、処方元の医師や薬の説明をしてくれる薬剤師に相談してみるとよいでしょう。 「血液をサラサラにする薬」はワルファリン以外にも種類があるため、その人の生活にあった薬に変更できることもあります。例えば、リバーロキサバン(商品名イグザレルト)やアピキサバン(エリキュース)などがあります。

ワルファリンと納豆の摂取時間をずらしたり、少量の摂取に留めたりしても上記のような有害事象が報告されているので、くれぐれも自己判断で摂取しないようにしましょう。

ちなみに、納豆の原料である大豆にはビタミンKはそれほど多く含まれていないため食べても問題ありません。また、納豆と同じくねばねばした食品であるオクラや山芋も服用前と変わらず摂取して大丈夫です。

納豆以外にも食べてはいけないものは?

ビタミンKがワルファリンと納豆の飲み合わせに大きな影響を及ぼす因子であるということがお分かりいただけたかと思います。ですので、ビタミンKを含む食材は避けるのが望ましいです。以下に主なビタミンK含有食材を示します。(単位:μg/100g)

2373

※クリックすると拡大します
出典: 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

上表で見て頂いたように、緑黄色野菜にはビタミンKを多く含むものが多いため、一度にたくさん食べることは控えましょう。しかし、ひとつひとつ成分を確認しなければならないとなると患者さんにとってはそれだけで負担になってしまい、薬を飲むことが面倒くさくなってしまいかねません。それでは本末転倒です。

ワルファリンを服用中の患者さんが特に避けるべき食材をあげると、ずばり「納豆」「青汁」「クロレラ」の3つです。これらの食材には特に多くのビタミンKが含まれているため、薬の効果を明らかに減弱させてしまいます。

上表に記載のないクロレラについて少し加筆します。クロレラも健康によいイメージがあるため、サプリメントとして意識的に取り入れている人も多いかもしれませんが、葉緑素が豊富で、ビタミンKが多く含まれている可能性が高く注意が必要です。製品によって含まれるビタミンKの量には差がありますが、ワルファリン服用中は基本的には控えると安心です。

<参考文献>
「Warfarin適正使用情報 第3版」(株式会社エーザイ)
「ワーファリン錠0.5mg/ワーファリン錠1mg/ワーファリン錠5mg/ワーファリン顆粒0.2% 医薬品インタビューフォーム」(株式会社エーザイ)
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)

「読む、えいよう」をもっと読みたい

あわせて読みたい
腎臓病のカリウム制限 押さえておきたいポイント
「納豆」の注目したい3つの栄養素とは?

おいしい健康いまなら30日間無料おいしい健康いまなら30日間無料
監修
登美斉俊先生
慶應義塾大学薬学部薬剤学講座教授。東北大学薬学部卒。博士(薬学)。富山医科薬科大学助手、カリフォルニア大学ロサンゼルス校博士研究員を経て、2009年より慶應義塾大学薬学部において教育研究活動に従事。専門領域は薬物動態学、生物薬剤学で、特に胎盤を介した薬物透過機構や胎盤が妊娠維持や出産に果たす役割についての研究を行っている。
編集:おいしい健康編集部
監修:登美斉俊先生
文:岩本千明