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「スイスの食卓から」第6回:世界有数のチョコレート消費大国、スイス。体にいい食べ方とは? 文・安藤友梨

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新年あけましておめでとうございます。2022年が始まりましたね。
スイスの大晦日は各家庭で親族や友人が集まってホームパーティーをしたり、盛大に花火をあげたりと非常に賑やかなものでした。

今年もコロナウイルスの影響で中止になってしまいましたが、本来はヨーロッパ有数の大きさを誇るレマン湖沿いで盛大なカウントダウンイベントが開かれるそうなので、1日も早く収束することを祈るばかりです。
今回はホームパーティーのお供にも最適な、スイス国民にとって欠かせないチョコレートについてご紹介します。

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チョコレート消費量トップクラス!スイス国民一人当たりの年間消費量はなんと約9㎏

リンツやレダラッハ、メゾンカイエにシュプリングリなど、スイスのチョコレートブランドは世界的にも有名です。
日本国内で取り扱いのある商品も多く、口にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
そんなチョコレート大国スイスですが、2020年の国民一人当たりのチョコレート消費量は何と約9㎏!(※1)
日本国民一人当たりの年間消費量はおよそ2㎏(※2)の為、約5倍となり、一般的な板チョコレートに換算すると、およそ200枚分に相当します。
驚くべきことに過去40年間は10㎏/人の大台を下回ったことがないそうで、それでも日本人からするとびっくりしてしまう数字ですね。

※1 参考:La consommation de chocolat en Suisse plonge à son plus bas depuis 40 ans

※2 参考:日本チョコレート・ココア協会

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chocolat a la casse(かち割りチョコレート)の販売店。

チョコレートはどのように生まれたかご存じですか?

スイーツとして広く親しまれているチョコレート。その起源はとても古く、紀元前15世紀頃まで遡ります。
チョコレートの原料となるカカオの栽培は、現在の中央アメリカやメキシコの湾岸地域で始まったとされています。
現地では貨幣として利用されたり、儀式の供物として利用されていたほか、上層階級の人々だけが口にできる飲料や高価な薬でもありました。
その後、17世紀頃にはヨーロッパにもチョコレートが広まり、貴族の間で飲み物として人気を博したものの、当時はまだ苦く、スパイスなどで香りをつけて飲まれていたようです。

18世紀に入ると、世界で初めてのチョコレート工場がスイスに開設され、スイス産の上質なミルクを加えたミルクチョコレートが誕生しました。
その後も砂糖を加えて食べやすくしたり、チョコレートバーを製造する技術が生まれたりしたことで、貴族に留まらず人々が広く口にできるようになります。
日本には「しょくらとを」の名で、当時鎖国中の18世紀終わり頃に長崎に伝わりました。
全国に知られるようになったのは第二次世界大戦後とされ、今日までに様々な種類やフレーバーのチョコレートが生まれています。

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海外でも柚子や抹茶など、日本ならではのフレーバーが人気。

チョコレートの原料、カカオに期待できる健康効果とは?

寒い季節になると特においしく感じられるココアやチョコレート。どちらもカカオ豆から作られる食品です。
カカオ豆を焙煎、破砕したのちに加熱、脂肪分を除いて粉末にしたものがココアパウダーとなり、加熱の際に甘みや香料などを加えて固形にしたものがチョコレートとなります。

カカオには抗酸化作用を持つカカオポリフェノールや、お腹の調子を整える食物繊維が豊富に含まれているほか、高血圧の予防に役立つカリウム、骨や歯の形成・代謝に必要なマグネシウムなどが豊富です。

特に注目したいのはポリフェノールです。ポリフェノール自体は多くの植物が持つ渋みや苦み、色素などの成分であり、その数は8000種を超えるとされています。
例えば、大豆イソフラボン→女性ホルモン様作用、茶カテキン→殺菌作用といったように、その種類によってさまざまな効果が期待できます。 カカオの場合、複数存在するポリフェノールの中でも特にフラバノールという種類が豊富。
フラバノールはココアの苦みを創り出す要素のひとつであり、抗酸化作用のほか、血圧やコレステロールを低下させ、心血管機能の改善に役立つ効果が期待できます。

以前チョコレートについて視聴者からの質問を紹介するスイスのニュース番組では、1日分の目安はビターチョコレート(カカオ70%以上)を2 かけ(板チョコ2マス分)、と栄養士さんが紹介していたことも。
健康を考えて食べるのであればカカオ含有量の高いチョコレートを選びましょう。

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すべてチョコレートで作られたナポレオン像。パリ サロンドゥショコラにて。

健康のためにはどう食べるのがベスト?チョコレートの選び方

ミルクにビター(ダーク)、ホワイト、近年ではルビーと様々な種類が存在するチョコレートですが、それぞれの違いはカカオの含有量にあります。チョコレートにはCODEX標準規格(国際食品規格)が設けられており、国によって基準が異なります。
ここでは、日本の基準(カカオ分/カカオマス、ココアバター、ココアパウダーの合算値)を基に説明します。

ホワイトチョコレート

主原料はカカオ豆から抽出した脂肪分であるココアバターで、乳製品や砂糖を加えて作られます。
カカオマスやココアパウダーのような苦みを持つ成分が含まれない為、とてもまろやかな味わい。
ホワイトチョコレートの場合、ココアバターの含有量は21%以上と定められていることもあり、チョコレートの中でもカロリーが高め。

ミルクチョコレート

カカオ分が21%以上であり、かつ乳固形分が14%以上含まれているのがミルクチョコレート。
カカオマスやココアパウダーが含まれているため、ポリフェノールが含まれています。
カカオ分が少ないため苦みが弱く、子どもにも食べやすい味ですが、砂糖が多く含まれているため食べ過ぎは禁物です。

ビター(ダーク)チョコレート

カカオマス含有量が40~60%のチョコレートを指します。商品によってはブラックチョコレートやダークチョコレートと呼ばれることも。
最近ではカカオ分70~90%のハイカカオチョコレートを指すときにも使われる名称です。
砂糖やミルクの含有量が少なくカカオ分が多いため、4種の中で最も苦みや渋みをダイレクトに感じられるチョコレートです。

ルビーチョコレート

スイスで開発され、2017年に発表されたチョコレート。第4のチョコレートとも呼ばれています。
鮮やかなピンク色はカカオの持つ天然色素に由来するもの。カカオ分は約30%とミルクチョコレートと同じくらい。ベリー系の酸味をほのかに感じることができます。

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ルビーチョコレート。ドライベリーとの相性がよく、見た目も素敵です。

間食(200kcal/日)としてチョコレートを食べる場合には、板チョコレート約30g程度(165kcal)を目安としましょう。ビターチョコレートはカカオ分が多い分、含まれる脂質も多くなります。

現在、ポリフェノールは厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準において明確な推奨量は定められていません。
しかし、国内外でその有効性が着目され数多くの研究が進んでいるほか、欧州食品安全機関によって推奨値が定められている国も存在します。
今後日本でもさらに研究が進むことに期待したいですね。

まとめ

今回はチョコレートについてご紹介しました。
毎日チョコレートを食べる方はあまり多くないかもしれませんが、これからチョコレートが店頭に並ぶ機会が増える今、手に取る際はカカオ分に着目して選ぶようにしたいですね。
甘いものはあまり食べないという方には、カカオ分80%くらいのダークチョコレートを1かけ、ビーフシチューやカレーに加えるのがオススメです。味に深みが出ますよ。
今月も最後までお読みいただきありがとうございました!

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
撮影・文:安藤友梨