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「スイスの食卓から」第5回:冬の味覚ジビエとは?スイスのクリスマスとともにご紹介! 文・安藤友梨

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スイスでは短い秋が終わり、雪が降り始めています。 街中では11月の下旬頃からクリスマスの装飾が始まっていて、早くも年末の気配を感じられるようになりました。 今回は、寒い季節にスイスでよく食べられているジビエや、クリスマスの様子についてお伝えします。

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そもそもジビエとは?

ジビエ(gibier)とはフランス語で〝狩猟鳥獣やその肉〟を指します。日本でもフレンチレストランで提供されるほか、近年ではファストフード店でハンバーガーのパティに使用されるなど、注目を集めています。

その種類は多く、国によっても異なりますが、鳥類ではカモ、アヒル、ハト、キジ、ウズラ等、獣類ではシカ、イノシシ、シャモア、ウサギ等が狩猟の対象とされます。

ヨーロッパでは狩猟シーズンが訪れると精肉店やスーパーマーケット、マルシェなどで新鮮な肉を手に入れることができますが、中には羽毛や毛皮、頭がそのままついているものも。 日本ではまず見かけることがない光景の為、初めて見る方は驚いてしまうかもしれません。 国ごとに伝統的な料理法が受け継がれているなど、とても身近な食べ物です。

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精肉店のショーウィンドウ。羽や頭がそのままついていて、迫力があります。

スイスで人気のジビエ料理とは?

スイスではジビエの中でもシカとイノシシが特によく食べられています。 特に有名な料理は、鹿肉をハーブやワインと煮込んだシチュー(civet de cerf)で、レストランではベリーのジャムや紫キャベツの蒸し煮、甘く煮た栗などを添えて提供されるほか、スーパーマーケットではチルドパックの状態で販売されています。

イノシシも同様に、ワインでマリネしたあと、プラムやリンゴなどのフルーツと共に煮込んでシチューにしたり、柔らかな部位をローストしたりして提供されます。

筆者のおすすめはウサギ肉です。クセが無く、たんぱくな味わいのウサギは鶏肉に近く、調理が簡単な為ジビエ初心者でも安心です。こちらでは生クリームやマスタードなどと煮込んで食べます。

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こちらはスーパーマーケットの精肉コーナーの様子。右上にはウサギ肉も。

ジビエ肉の栄養価って?注意点はある?

代表的なジビエ肉の栄養価を見てみましょう。

アカシカ(100gあたり)

牛ヒレ肉と比べるとカロリーは約半分、脂質は10分の1、そして1.2倍の鉄分が含まれています。 お肉をたくさん食べると、どうしても脂質を多く摂ってしまうことになりがち。しかし、鹿肉は脂身が少なく貧血の予防に役立つ鉄分が多く含まれていることから、女性にとって特にうれしい食材ですね。

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鹿肉のシチュー。よく煮込まれておりスプーンで簡単にほぐせます。

イノシシ(100gあたり)

豚肩ロースと比べるとエネルギーや脂質はあまり変わりませんが、約4倍の鉄分と約3倍のビタミンB12を含んでいます。

ビタミンB12は血液を作る為に欠かせないほか、神経の伝達機能を正常に保つ働きがあります。 スイスではシチューとしてお馴染みですが、それ以外にもミンチにしたお肉と根菜で作るパスタソースや、お肉のテリーヌ、生ハムなど様々な調理法があります。ジビエ肉の中では獣特有の匂いが強く下処理に時間がかかってしまうものの、手間をかけた分、おいしさに繋がります。

ウサギ(100gあたり)

100gあたりのエネルギーは約130kcalと、エネルギーは皮つきの鶏むね肉と同じくらいです。 また、約400㎎のカリウムが含まれていることも特徴です。カリウムは体内の余分なナトリウムと結合して排出する手助けをしてくれることから、むくみ改善が期待できます。

日本ではあまりウサギを食べることはありませんが、ヨーロッパでは牛や豚、鶏と同じくらいメジャーなお肉です。加熱することで肉質がぎゅっと引き締まる為、煮込み料理やミンチにしたテリーヌ、パテなどに使われることが多いです。

マガモ(100gあたり)

たっぷりと脂がのった皮の見た目から、「高カロリーでは」と身構えてしまう方もいるかもしれません。

しかしカモの脂には、血中のコレステロール値を下げる働きがある不飽和脂肪酸が比較的多く含まれています。かと言って食べ過ぎてしまうことは避けたいですが、鴨南蛮のようにスライスしたお肉を適量食べる分には問題ないでしょう。

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フィレの状態で売っている鴨肉を使えば調理も簡単です。この日はかも南蛮そばにしていただきました。

ジビエを調理するときの注意

ジビエ肉を食べる際は、基本は食中毒のリスクを避けるためにも中心温度75℃以上で1分以上で加熱しましょう。ミディアムレアのステーキなど、加熱が不十分な状態で食べることは避けてください。

くわしくは厚生労働省のガイドラインをご確認ください

日本とはこんなに違う!スイスのクリスマスの過ごし方

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ジュネーブ市内の様子。スイスの国花であるエーデルワイスの装飾が素敵です。

今年も残すところ1ヵ月を切りましたね。ここからはスイスのクリスマスについてご紹介したいと思います。

日本ではケーキやチキン、プレゼントなどを用意して賑やかに過ごすイメージですが、スイスをはじめヨーロッパでは午前中に教会へ礼拝に行き、家族そろって自宅でディナーを頂く日とされています。

そして、なんとクリスマスケーキは食べません! 代わりに、12月1日からクリスマスまでの期間、クリスマスビスケット(クッキー)を食べて過ごします。 家庭ごとに手作りすることも多く、スパイスやアイシングがたっぷりと使われた、温かみを感じる味わいです。

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クリスマスビスケットの一種。カラフルなアイシングがたっぷり。

また毎年、本物のモミの木をクリスマスツリーとして飾るのですが、その期間は12月25日から1月6日までと日本より長いことも特徴のひとつです。1月6日を過ぎると縁起が悪いとされることから、各家庭では一斉に片付けが始まるそう。日本のお正月飾りと少し似ていますね。

冬の風物詩であるクリスマスマーケットは、今年もスイス各所で開催されています。 オーナメントやリース、手作りキャンドルなどの装飾品や、冷えた身体を温めるグリューワイン(スパイスやフルーツ入りのホットワイン)にホットチョコレート、ソーセージにチーズフォンデュなどおいしそうな食べ物の屋台がずらりと並びます。

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ヌガーやドライフルーツ、パート・ド・フリュイ(ゼリー菓子)が山積み!スイスの人は甘いもの好きが多いようです。

まとめ

今回はジビエとクリスマスについてご紹介しました。 日本ではあまり見かけない食材も多いですが、季節限定のおいしさを楽しむ良い機会となるかもしれません。興味のある方はぜひお試しください!

今年も「スイスの食卓から」をお読みいただきありがとうございました。

参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
文:安藤友梨