読む、えいよう

「スイスの食卓から」第4回:今が旬の“ナッツ”の栄養って? 文・安藤友梨

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スイスも朝晩がとても冷え込むようになりました。
野生のリスがせっせと木の実を集めていたり、マルシェに採れたてのキノコが並んでいたりと、日本とはまた違った秋の訪れを感じられます。
今回は秋に旬を迎える食材のひとつ、ナッツについてご紹介します。

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アーモンド、くるみ、マカダミアナッツ…そもそもナッツとは?

マカダミア入りのチョコレートやくるみ和え、アーモンドミルクにピーナッツオイルなど、さまざまな食べ方と種類があるナッツ。
そんなナッツは正式には種実類と呼ばれており、固い外皮に覆われているもの(栗、ヘーゼルナッツ)や果実の核にある種子部分を食すもの(アーモンド、クルミ)、種子をそのまま食すもの(ケシ、ごま)など大きく3つに分類されています。意外なことに、ココナッツも種子類です。
また、マメ科のピーナッツ(落花生)は栄養組成がナッツと類似していることから種実類として分類されています。

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スイスのスーパーマーケットにて。子どもたちがおやつ用にすくっている姿がよく見られます。

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お隣フランスでも充実した量り売りコーナーの品揃え。写真はドライフルーツとナッツのミックスが多めです

スイスで手に入るナッツ

日本ではコンビニでも気軽に購入できるナッツですが、残念ながらスイスにコンビニは無いため、スーパーマーケットやデパートの食品コーナー、マルシェなどで購入できます。
ラインナップは、くるみ、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、カシューナッツ、アーモンド、ピスタチオ、ピーナッツ、マカダミアナッツ、パインナッツ、栗、ココナッツ、ペカンナッツ…等、日本よりも豊富!

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棚一面のナッツたち。料理用、おやつ、アペロ用(※)など様々です。
(※)アペロ…フランス語で食前酒を意味するapéritifから生まれた言葉。夕食前にワインと軽食を楽しみながらおしゃべりするフランスの習慣です。

くるみやアーモンド、マカダミアナッツなどは殻付きの状態で売っていることも多く、一家にひとつは殻を割るための道具が備わっているほど。
好みの量を選択できる量り売りや個包装で売られているもの、味付け済のもの、ドライフルーツとミックスされているものなど幅広い選択肢が用意されています。

「ナッツ=太る」は間違い?栄養素を知ろう

ナッツというと脂質が多いため「カロリーが高い」、「健康に良くない」といったイメージを持たれることもあります。
しかし、すべての脂質が体に悪いわけではありません。

ナッツには不飽和脂肪酸が多い

脂質は分子の違いから、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。 このうち、不飽和脂肪酸は体内で合成することができないため、食べ物からの摂取を必要とします(これを必須脂肪酸と呼びます)。

ナッツに含まれる脂質の多くは不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸)です。 これら不飽和脂肪酸に期待される健康効果として、一価不飽和脂肪酸は血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)濃度を下げる働きがあることから、動脈硬化症や狭心症、心筋梗塞といった心血管疾患の予防効果が期待されています。

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ある日のスーパー。ゴルフボールほどもある栗やくるみが山積みです。

さらに、多価不飽和脂肪酸はn-3系、n-6系の2つに分けられます。 ナッツにはn-3系の油も含まれます。 抗炎症作用による動脈硬化症や虚血性心疾患の予防効果が期待されています。

また、ナッツに含まれるそのほかの栄養素として、お腹の調子を整える不溶性食物繊維や、高血圧の予防に役立つカリウム、赤血球を作るために欠かせない葉酸、骨や歯の形成・代謝に必要なマグネシウムなどが豊富です。

脂質が多い分、糖質が少ないので、お菓子の代わりに間食として摂るのもおすすめです。

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秋になると街のあちこちに“Marron Chaud(焼き栗)”のスタンドがみられます。

効果別に選びたい!ナッツの食べ方をご紹介

日本でもお馴染みの各種ナッツの栄養素と食べ方についてご紹介します。スイスではローストして間食やアペロにいただくほか、鹿肉と煮込んだシチュー、香草と共に丸鶏に詰めて焼いたり、ラビオリのフィリングに加えたりすることも。もちろん時期によりますが、おつまみから主食まで幅広く登場します。

アーモンド

強い抗酸化作用を持つビタミンEが豊富。スライスアーモンドを衣として使うアーモンド揚げや、はちみつ漬けにしたものをヨーグルトに添えて食べてもおいしいですね。

カシューナッツ

甘みがあって食べやすいカシューナッツには、鉄分や亜鉛などのミネラルが豊富。 中華料理の定番鶏肉とカシューナッツの炒め物はもちろん、ローストしたカシューナッツをサラダへトッピングしても食感が良いアクセントに。

ナッツの中では脂質が少ない栗。加熱することで柔らかくなり子どもからお年寄りまで食べられます。食べる時は食物繊維やポリフェノールを含む渋皮付きのままがおすすめです。 渋皮ごと素揚げするとおいしく食べることができるほか、ポタージュもおすすめです。

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ヨーロッパの栗は大きいです!

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栗ご飯にしていただきました。

くるみ

ナッツの中でも特に多価不飽和脂肪酸を多く含みます(約50g/100g)。くるみオイルを使ったドレッシングや細かく刻んで和え衣として使うと、コクのある味わいを楽しむことができます。

ピスタチオ

栄養価の高さから「ナッツの女王」とも呼ばれ、日本でもブームが起きたピスタチオ。 カリウムの含有量はナッツの中でもトップ(970㎎/100g)であり、美肌効果が期待できるビタミンEなども含んでいます。ピスタチオ=スイーツのイメージも強いですが、栄養バランスを考えて無塩ローストタイプを選びましょう。

ピーナッツ

日本でも栽培が盛んで、とてもポピュラーなピーナッツ。ビタミンE、カリウム、葉酸などのほか、赤茶色の薄皮には食物繊維や抗酸化作用を持つポリフェノールの一種レスベラトロールが含まれています。 そのまま食べる時は薄皮付きを手に取りたいですね。

マカダミアナッツ

マカデミアナッツとも呼ばれハワイの定番お土産として認知度が高いナッツですが、保湿力の高さから食品に限らずヘアオイルやハンドクリームといった日用品にも使われています。 不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸が多く、LDLコレステロール値を下げる効果が期待できます。 朝食のグラノーラやシリアルに加えたり、ブレンダーを使ってナッツミルクを手作りしてみるのも良いでしょう。

まとめ

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市内でたまに見かける紅葉は、日本と同様に秋の訪れを感じさせます。

今回はナッツと、その栄養素についてご紹介しました。多くのナッツが秋から冬にかけて収穫されるため、今がまさに旬と言えます。不飽和脂肪酸をはじめ、さまざまなビタミンやミネラルを含むことから、毎日適量を摂る習慣をつけたい食べ物のひとつです。

また、しっかり噛んで食べることにより、満腹感を得やすく食べ過ぎ予防にもつながります。 そのままはもちろんお料理やドリンク、スイーツなど幅広く取り入れていきたいですね。

参考: スイス連邦食品安全獣医局FSVO Base de données suisse
Oregon State University 「ナッツの習慣的摂取推奨について」
厚生労働省 e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」

プロフィール
安藤友梨
北海道出身の管理栄養士。機内食の商品開発や、栄養ソフトのサポート経験などを経て現在はスイスで生活中。

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
文・安藤友梨
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