糖尿病で朝食が大切な理由
公開日: 2021年7月28日
「朝は忙しい」「食欲がない」などの理由で朝食を抜いていませんか? 中には「朝食を食べないほうがやせる」「血糖値が上がらない」と思っている人もいるのでは? これは大きな間違いです。朝食の欠食は、糖尿病を悪化させるリスクがあります。
この記事では、糖尿病の人が朝食を抜くと、体にどのような影響があるのか、そして朝食も含めて食事はどのようにしてとったらいいのか、について解説します。
1.朝食を抜くと一日の血糖値が不規則になる
1-1. 朝食を食べる・食べないで血糖値はどう変わる?
1-2. 糖尿病の人は朝の空腹時血糖が高い
1-3. 朝食を抜くと昼食後血糖値が上昇する
2.規則正しい食事が血糖値を安定させる
2-1.1日3食、なるべく同じ時間に食べよう
2-2. 朝食はなるべく早い時間に食べよう
2-3. 遅い夕食が朝食の欠食の原因に
2-4. 朝食では食物繊維を多めにとろう
3.まとめ
1.朝食を抜くと一日の血糖値が不規則になる
1-1. 朝食を食べる・食べないで血糖値はどう変わる?
下のAとBのグラフは、食事のとり方と血糖値の変動を表すグラフです。1日3回規則的に食事をとった場合と朝食を抜いた場合、血糖値はどのように変化するのでしょうか?
A.1日3食、規則正しい食事をとったときの血糖値の変化
B.朝食を欠食したときの血糖値の変化
1日3回規則正しく食べれば、血糖値は安定します。ところが、朝食を抜くと、たとえ1日に摂る総エネルギーが同じでも、昼食前には血糖値が極端に下がり、昼食後と夕食後に急激に上昇します。
朝食を抜くと、健康な人でも血糖値が不安定になりますが、インスリンがうまく作用しない糖尿病であれば、なおさら血糖値のコントロールが悪くなります。
1-2.糖尿病の人は朝の空腹時血糖が高い
インスリンの基礎分泌は、体内時計によって1日の中で変動しており、19~20時ごろから低下し、夜間は少ない状態が続き、明け方4~5時ごろから上昇します。また、血糖値を上昇させるインスリン拮抗ホルモン(カテコラミン、コルチゾール)もインスリンと同期して推移しています。
健康な人は、インスリン基礎分泌とインスリン拮抗ホルモンが同期して推移するので、朝食の時間が遅くなったとしても朝食前の血糖値は変わりません。ところが、糖尿病の人は、インスリンの基礎分泌量や作用が低下しているため、時間の経過とともに相対的にインスリン拮抗ホルモンの作用のほうが強くなり、空腹時血糖が上昇します。
朝の空腹時血糖が高い日は、全体的に1日の血糖が高くなりやすいことがわかっていますから、糖尿病の人が朝食を抜く生活を続けるのは、とても危険なことなのです。
1-3.朝食を抜くと昼食後血糖値が上昇する
「セカンドミール効果」という言葉を聞いたことがありますか? セカンドミール効果とは、1回目の食事が2回目の食事(セカンドミール)後の血糖値に影響を与えるという現象です。
朝食を食べることで、昼食後の血糖値を低く抑えられるということ。逆に、朝食を抜くとセカンドミール効果が得られないので、昼食後の血糖値が上がってしまいます。
2. 規則正しい食事が血糖値を安定させる
2-1.1日3食、なるべく同じ時間に食べよう
糖尿病の食事療法は、血糖値のコントロールをして、合併症を予防することにあります。過食を避け、偏食せずに規則正しい食事をすることが大切です。不規則な時間に食べたり、欠食したりすると1日に食べる量やエネルギーが同じでも、規則正しく食べた場合と比べて、血糖値の変化が不規則になり、血糖値をコントロールしにくくなります。
血糖値の変動をできるだけ少なくするため、1日に必要なカロリーを3回に分けて1食でとるエネルギー量もそろえるようにしましょう。3回の食事は5~6時間おきに、なるべく同じ時間に均等に食べると、血糖コントロールがうまくいきます。
2-2.朝食はなるべく早い時間に食べよう
1.2で述べたように糖尿病の人は朝食が遅くなると、食後の血糖値も高くなります。
また朝食が遅くなれば昼食までの時間が短くなり、朝食後に上昇した血糖が下がりきる前に昼食を食べることになり、昼食後の血糖が上昇します。朝食を早い時間に食べれば、昼食まで十分に時間を空けられるので、昼食前の血糖値が下がりやすく、昼食後の血糖上昇を抑えられます。ぜひ早寝早起きの生活リズムを整えて、朝早い時間に朝食をとりましょう。
2-3.遅い夕食が朝食の欠食の原因に
インスリン基礎分泌は日内リズムがあるので、夕食が遅いと翌朝の朝食前血糖値が高くなってしまいます。
また、夜遅い時間に食事をとると、食事からとったエネルギーが消費されにくく、体脂肪として蓄積されやすくなります。翌朝、食欲がなくて朝食を欠食したり、遅くなる原因にもなります。夕食は寝る2~3時間には終えるようにしましょう。
2-4.朝食では食物繊維を多めにとって
朝食でも炭水化物、たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミンをバランスよくとるという基本は同じです。その中で、「セカンドミール効果」を上げるためには、朝食で玄米、海藻類、キノコ類など、食物繊維が豊富な食品をとるのがおすすめです。主食がパンの人は、全粒粉パンにするのも方法です。
3. まとめ
毎日、規則正しい食事をとって血糖をうまくコントロールすることが糖尿病改善のカギとなります。仕事や介護などで朝食を欠食したり、食事時間がバラバラになりがちな人も、血糖コントロールのことを意識して、できるだけ同じ時間に食事ができるようにしたいですね。まずは早起きして、朝食をきちんと食べることを目指しましょう。
<参考>
綿田裕孝、高橋徳江 監修「糖尿病の満足ごはん」(女子栄養大学出版)
田中 逸 著「セミナー糖尿病アドバイス」(日本医事新報社)
田中 逸 著 日本内科学会雑誌105巻3号 「第43回 内科学の展望 予防と治療を考える2 時間代謝学に基づく効率的な食事と運動を考える」
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