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糖尿病では、なぜ塩分制限が必要?

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撮影:寺澤太郎

糖尿病は血糖コントロールが重要なため、糖質制限やカロリー制限ばかりに目が向きがちです。でも、もうひとつ、糖尿病は塩分制限も必要なことをご存じですか? 

この記事では、なぜ糖尿病の人が塩分を制限する必要があるのか、そして食事で無理なく塩分制限をしていくコツを解説します。

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1.糖尿病の食事で盲点になりやすい食塩

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1-1. 塩分を摂り過ぎると高血圧を招く恐れが

塩分を摂り過ぎて血液中の塩分濃度が上がると、塩分濃度を下げるために、体の組織から血液に多くの水分が取り込まれます。取り込まれた水分によって血液の量は増加し、血液を送り出すのにより大きな力が必要になります。これが塩分と高血圧の関係です。

高血圧になると常に血管に負担がかかるため、血管が傷ついたり、柔軟性がなくなって動脈硬化を起こしやすくなったりします。

1-2.高血圧は糖尿病の合併症の発症リスクを高める

糖尿病にとって高血圧が怖いのは、動脈硬化によって狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの合併症を起こすリスクが高まることです。

中でも腎機能が低下する糖尿病性腎症の発症には注意が必要です。糖尿病性腎症は、進行すると腎不全となり、最終的には人工透析が必要になることが少なくありません。

1-3.糖尿病の人はもともと高血圧になりやすい

糖尿病の人は、糖尿病を持っていない人に比べて高血圧の割合が多いことが分かっています。ちなみに高血圧の人も、そうでない人に比べて糖尿病の頻度が高めです。

1-4.塩分の摂取は1日6g未満を目指して

日本人の成人が目標とすべき1日の食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満です。※1 特に高血圧を合併している方は、男女とも6g未満に抑えたいところ。※2 1食2gを目安とするのが理想です。 塩分を減らすコツは、食材選びや調理法、食べ方などいろいろあります。できることから始めて、減塩生活に慣れていきましょう。

2. 食塩を減らすコツ

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2-1.調理のポイント

●だしで味つけする

こんぶ、煮干し、かつお節などでとっただしのうま味を加えると、塩分が少なくてもおいしく食べられます。汁ものや煮物、炊き込み、おひたしなどいろいろな料理に使いましょう。

●酸味・辛味・香りを使う

レモンやすだちなどの柑橘類やお酢、唐辛子やカレー粉などのスパイス、しょうが、にんにく、みょうがなどの香味野菜を使いましょう。酸味や辛味、香りをプラスすると、独特な風味で十分おいしくなります。

●油脂で香りとコクを出す

みそ汁やスープなどの汁物に、ごま油やオリーブ油などを1滴たらすと、コクとうま味が加わり、薄味でも満足できます。

●香ばしさを加える

肉、魚、野菜を網で焼き目をつけるように焼くと、香ばしさが増して食塩が少なくても物足りなさを感じにくくなります。

●減塩調味料を利用する

減塩しょうゆ・減塩みそなど、塩分を控えた調味料が市販されているので、これらを利用するのも方法です。ただし、いくら減塩商品でも大量に使っては食塩の摂り過ぎになるので、使うのはあくまでも少量にしておきましょう。

●新鮮な食材を使う

新鮮な食材や旬の食材は、素材そのもののうま味や風味が強いので、蒸したりゆでたりするだけで味つけなしで食べられます。肉や魚は、すだちやレモンの汁をかけたり、香味野菜と合わせたりしてもいいでしょう

2-2.食べ方の工夫で減塩はできる

●みそ汁は1日1杯までに

みそ汁1杯にはおよそ1.2gの塩分が含まれるので、1日1杯までを目安にしましょう。※3 具を多くして、汁の量を減らすのもおすすめです。

●麺類のスープは飲まない

麺類のスープには塩分が多く含まれます。具はすべて食べても構いませんが、汁はできるだけ残すようにしましょう。

●外食や市販のお弁当・お惣菜を食べるなら量を減らす

外食やお弁当・お惣菜のメニューには食塩が多く使われており、中には1日の目安となる食塩量を超えるものもあります。下の表を参考にして、すべて食べきらずに残すようにするか、食べる頻度を調整してみてください。食品についてくるソースやケチャップなどの調味料もなるべく使わないようにしましょう。

【1食で2.0g以上の食塩が含まれる食品】
食品       食塩摂取量
さばのみそ煮定食  6.7g
レバにらいため定食 3.4g
ステーキ定食    4.9g
チキンカレー    3.4g
江戸前ちらし    3.6g
ラーメン      6.0g
月見うどん     5.6g
天ぷらそば     4.9g
スパゲティカルボナーラ 2.9g
ソース焼きそば   2.5g
豚汁        2.2g
カップめん(ラーメン/80g) 5.3g
カップめん(うどん/80g) 5.1g
紅ざけ弁当     3.3g
*すべて1食あたりの食塩量。カップめんは汁をすべて摂取した場合
(※4、5より抜粋)

●加工食品やコンビニ弁当は表示をよく見る

加工食品・市販の総菜・コンビニ弁当などを購入する場合は、栄養成分表の「食塩相当量」を確認して、食塩量が少ないものを選びましょう。「ナトリウム」の表示だけで「食塩相当量」の表示がない場合は、ナトリウム400mgを食塩相当量約1gとして換算してください。

例えば、おにぎりに「ナトリウム800mg」と表示されていた場合、食塩相当量は800÷400=2で2gとなります。

3. まとめ

“減塩食はまずい”と思われがちですが、そんなことはありません。食品の塩分を意識しながら、この記事で紹介した方法を実践していると、2~3週間もすれば薄味に慣れてきます。最初から全部実行しようとするとストレスになるので、麺類のスープを残す、普段使っている調味料を減塩タイプにするなど、手軽にできることから始めるのがおすすめです。 

<参考>
厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病性腎症」
厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」
綿田裕孝、高橋徳江 監修「糖尿病の満足ごはん」(女子栄養大学出版)
田中逸 著「セミナー糖尿病アドバイス」(日本医事新報社)
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準​2020年版」
※2 日本糖尿病学会「糖尿病ガイドライン2019」
※3 「調理のためのベーシックデータ(第5版)」(女子栄養大学出版部)
※4 「毎日の食事カロリーガイド改訂版」(女子栄養大学出版部)
※5 「塩分早わかり第3版」(女子栄養大学出版部)

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文:高橋裕子
監修:おいしい健康管理栄養士
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