糖尿病の食事はどうすればいい?押さえておくべきポイント
公開日: 2021年6月7日
病院で糖尿病と診断されて、「食事を見直してください」と言われたけれど、何を食べたらいいのかわからない…という方は多いことでしょう。 実は、糖尿病だからといって特別なメニューがあるわけではなく、食べてはいけないものも特にありません。 どんな食事をとればいいのか、押さえておきたいポイントを紹介します。
1.食事が治療の中心です
1-1. 糖尿病は「血管の病気」
1-2. 治療の目的は合併症を防ぐこと
2.食事のリズムや量、栄養バランスが大切です
2-1.3食しっかり食べて食事のリズムは一定に
2-2. 適正なエネルギー摂取量を知っておきましょう
2-3. 「主食+主菜+副菜」で栄養バランスが整いやすくなります
2-4. 1日20gを目標に食物繊維をとりましょう
2-5. 油のとり方を工夫しましょう
2-6. 塩分は控えめに
3.お酒やおやつは適量を上手に楽しみましょう
3-1.アルコールの摂取目安は1日25gまで
3-2.おやつは3食を前提に、エネルギー控えめで
4.まとめ
1.食事が治療の中心です
1-1. 糖尿病は「血管の病気」
そもそも糖尿病とはどのような病気でしょうか。
糖尿病とは、インスリンというホルモンの働きや量に問題があって、血液中のブドウ糖の量が多すぎる状態が続く病気です。 ブドウ糖は人間が活動するエネルギーになる物質で、血液中のブドウ糖の量を「血糖値」といいます。
血糖値が高い状態が続くと血管に負担がかかり、全身に悪影響が出るので、糖尿病は「血管の病気」とも呼ばれます。
1-2. 治療の目的は合併症を防ぐこと
治療の目的は、糖尿病でかかりやすくなる病気(合併症)を防ぐこと。主な合併症には腎不全、網膜症、しびれなどの神経障害があります。
治療は食事の見直しと運動が基本であり、状態によって薬による治療が加わります。なかでも食事は、治療で中心的な役割を担います。
体の中のブドウ糖は、食べ物や飲み物が消化、分解されてできたもの。ですからブドウ糖を増やしすぎないようにするには、食事がポイントになるのです。
2. 食事のリズムや量、栄養バランスが大切です
2-1. 3食しっかり食べて食事のリズムは一定に
血糖値を上手にコントロールするには、食事のリズムを工夫することが基本です。
朝食を食べずに昼食まで空腹の状態が続くと、昼食と夕食のあとに血糖値が急上昇しやすくなります。夕食をとり終える目安は、寝る3時間ほど前まで。 朝食から昼食、昼食から夕食までの間隔が短すぎる場合は、血糖値が下がらないうちにまた食事をするため、食後の血糖値がさらに高くなりがちです。
ですから3食きちんと食べて、食事のリズムを整えることが大切です。できれば毎日同じ時間に食事をとり、朝食・昼食・夕食の量を同じにすることが理想です。
2-2. 適正なエネルギー摂取量を知っておきましょう
適正なカロリー(エネルギー摂取量)は人それぞれ異なります。自分にとっての適正な1日あたりのエネルギー摂取量を知っておきましょう。目安量は、身長に対する標準体重と活動量から算出することができます。
適正エネルギー量(kcal/日)
=標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg)
標準体重(目標体重)
=身長(m)×身長(m)×22
【身体活動量の目安】
・やや低い(デスクワークが主な人)
25~30kcal/kg
・適度(立ち仕事が多い職業)
30~35kcal/kg
・高い(力仕事の多い職業)
35~ kcal/kg標準体重
2-3. 「主食+主菜+副菜」で栄養バランスが整いやすくなります
糖尿病ではエネルギー量だけではなく、栄養素のバランスも大切です。理想的なバランスは、1日の摂取エネルギーのうち炭水化物が50〜60%、たんぱく質が20%以下、残りが脂質とされています。
食事を「主食+主菜+副菜」の組み合わせにすると、栄養バランスがとりやすくなります。 主食とは、米・麺・パンなどの炭水化物を主な成分とする、エネルギー源になるもの。主菜は肉・魚・卵・大豆製品など、筋肉や血液など体を作る材料になる、メインのおかずです。副菜は、ビタミン・ミネラル・食物繊維の供給源になる、野菜などを中心としたサブのおかずを指します。
さらに1日の食事の中で果物や牛乳・乳製品、油を適度に取り入れれば、自然と栄養バランスが整います。
2-4. 1日20gを目標に食物繊維をとりましょう
食物繊維が豊富な野菜や果物、海藻、きのこ、玄米などの食品を積極的にとりましょう。 食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」があり、どちらも糖尿病に役立つ働きがあります。1日20gを目標に食物繊維をとりましょう。
主食の食品を玄米や麦ご飯などの食物繊維の多い食品に代えてみる、野菜やきのこ、海藻を意識して食べるなど、ちょっとした工夫で食物繊維がとりやすくなります。
また食事の時に、野菜など食物繊維を含むものを一番最初に食べると、食後の血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
2-5. 油のとり方を工夫しましょう
脂質は1gあたりのエネルギー量が高いので、油のとりすぎには注意する必要があります。 1食の中で「すべての料理が炒めもの」「どの料理にも油を使っている」ということがないようにしましょう。 揚げものは油が多いので、食べてはいけないわけではありませんが、体重と相談しながら、続けて食べないようにしましょう。
2-6. 塩分は控えめに
塩分をとりすぎると血圧が高くなり、血管に負担がかかります。すると糖尿病の合併症、特に腎臓の機能の低下を招いてしまいます。
1日の塩分量は1日あたり男性7.5g未満、女性6.5g未満を目指しましょう。理想的なのは6g未満です。
塩分を上手に減らしつつ満足感のある食事にするためには、だしのうま味をきかせることや、酸味・辛味を上手に取り入れることが秘訣です。
3. お酒やおやつは適量を上手に楽しみましょう
3-1. アルコールの摂取目安は1日25gまで
糖尿病の場合、毎日の楽しみになるお酒やおやつを止めなければいけないのか、気になるところですね。
血糖値がコントロールできていて医師から許可が出ていれば、お酒を楽しむことは禁止ではありません。ただし、アルコール摂取量には適量があり、糖尿病では「上限」として1日25gまでとされています。
アルコール25gはビールでは500ml、日本酒では1合程度です。お酒を飲む時は上限を超えないようにして楽しみましょう。
3-2. おやつは3食を前提に、エネルギー控えめで
おやつは少量でもエネルギー量が高く、1日のエネルギー摂取量をあっという間に上回ってしまいます。もしどうしても食べたい時は1日200kcal以下におさえましょう。
おやつを食べるために食事を抜いたり、栄養バランスがかたよったりすると、血糖値のコントロールに影響が出てしまいます。1日3食の食事ををきちんと食べることが前提です。
おやつを選ぶなら、素材に甘みがあり、ビタミンや食物繊維が補える果物や、ミネラルが豊富なナッツにしましょう。 寝る前や空腹時ではなく、昼食と夕食の間や食後にゆっくり食べることがポイントです。
4. まとめ
糖尿病の食事では、総エネルギー量を調整するだけではなく、合併症を防ぐために栄養バランスを整えることが必要です。 食事による治療は、短期間だけ行うのではなく、長く続けることが大切。最初から完璧を目指すのではなく、まず自分にとって簡単なことを探して、すぐにできそうなことから取り組んでみましょう。
<参考>
日本糖尿病学会 編・著 「糖尿病診療ガイドライン2019」(南江堂)
文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
綿田裕孝、高橋徳江 監修「糖尿病の満足ごはん」(女子栄養大学出版)
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