大豆のチカラで健康のためにできることを。

まめけん

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大豆は日本人にとって古くから馴染みのある食品。
大豆の一粒には、
たんぱく質や食物繊維、
ビタミン類、ミネラルなど多くの種類の
栄養素が詰まっています。
まめけんでは大豆がもつ食材としての
魅力や科学的な知見に基づく
健康課題への有用性を発信していきます。

健康長寿と「大豆」
〜腸の若さがフレイル抑制の鍵〜

近年の研究によって腸の老化が、
多くの疾患に関係する可能性が
明らかになりつつあります。
今回は、腸と老化研究の第一人者である
京都府立医科大学大学院医学研究科教授
内藤裕二先生に、
京都府京丹後市の
「京丹後長寿コホート研究」から明らかになった
健康長寿の人に共通する腸内細菌の存在や、
大豆をはじめとした豆類の健康効果について、
元日経ヘルス編集長の西沢邦浩氏が
詳しくお聞きします。

大豆のイラスト

腸の老化が全身の不調をもたらす

西沢氏

今回は「健康長寿と大豆」をテーマにお話を伺っていきたいのですが、大豆の健康効果は腸との関わりが深いと、お聞きしました。まずは腸が身体全体にもたらす影響について教えていただけますか?

対談の写真
内藤先生

世界では、腸についてさまざまな研究が行われていて、例えば、便秘の方を継続して観察した研究では、便秘の症状および重症度が慢性腎臓病(CKD)や冠状動脈性心疾患(CHD)、心血管疾患(CVD)のほか、パーキンソン病や自閉症の発症リスクと関連していることが分かっています。(※1)

対談の写真

こうした研究結果もあり、腸内環境の悪化が、多くの疾患発症のリスクになっている可能性があると考えられています。腸で起きた慢性的炎症や老化がその後、全身の炎症や老化に及んでいくということです。また、私が関与している「京丹後長寿コホート研究」から腸内環境が、加齢によって身体機能や認知機能が低下する、いわゆる「フレイル」(注1)と関連している可能性も見えてきています。

(注1) 高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態
(参照: フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント

日本食の習慣が健康に資する
腸内細菌を増やす

西沢氏

お話にも出ました「京丹後長寿コホート研究」とはどんな研究なのか、教えていただけますか?

対談の写真
内藤先生

京丹後長寿コホート研究 」は京都府立医科大学が京丹後市を中心にした2市2町(丹後地域)と共同で実施している研究で、同地域に住む65歳以上の方約1000人を対象に腸内細菌叢(腸内フローラ)や食事の傾向などの調査、解析を行っています。京丹後市は、人口あたりの100歳以上の人口比率が2022年時点で全国平均の3.3倍。健康な高齢者が多い地域ですから、そこで長寿の秘密を探ろうというのが目的です。

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西沢氏

京丹後の研究からフレイルと腸内環境の関連についてどのようなことがわかってきたのでしょうか?


内藤先生

京丹後市の65歳以上の方の筋肉量、握力、歩行速度の計測と糞便を用いた腸内細菌叢の調査・解析を行ったのですが、フレイルと診断された方の腸内細菌叢では、Enterobacteriaceae(腸内細菌科)細菌の占有率が高く、短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)産生菌が低い傾向が見られました。

対談の写真
大豆のイラスト
大豆のイラスト

また同時に行った食生活習慣の調査で簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を使って、どんな食品、栄養を摂取しているのかとその摂取量を、rJDI-12(図1)という指標を使って日本食の摂取頻度や種類を調べスコア化し、解析した結果、日本食スコアとフレイルリスクに弱い負の相関関係が見られました。
日本食スコアが高い(摂取頻度が高い)人の腸内細菌叢ではBifidobacterium(ビフィズス菌)や酪酸を作る菌(Blautia(ブラウティア)、Anerostipes(アネロスティペス)など)の占有率が高いという傾向が見られました。日本食を習慣的に食べることで健康に寄与する腸内細菌が増える可能性があるということです 。

日本食スコア rJDI-12
日本食スコア rJDI-12

図1:日本食スコアrJDI-12の基準となる食品群
日本食スコアrJDI-12とはJDI-9に3品目を追加した
JDI-12の改訂版。12種類の食品群(米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー、大豆・大豆製品、果物、きのこ)の摂取量を基に0~12点の範囲でスコア化したもの。得点が高くなるほど日本食らしい食事パターンと判定。牛肉・豚肉の摂取はマイナス1点の要因です。

大豆の腸内細菌代謝産物が
フレイルのリスクを下げる

西沢氏

具体的な食品とフレイルでない人の腸内細菌の関連でわかったことはありますか?

内藤先生

フレイルリスクの低い健康な高齢者に多い腸内細菌と、「大豆などの豆類を摂取すること」・「赤身肉を食べない」とは正の相関があることがわかりました。その菌とは、先に挙げたブラウティア菌、アネロスティペス菌といった酪酸生成菌群です(図2)
フレイル抑制に、大豆を含む豆類を積極的に摂り、赤身肉(加工肉を含む)を控えることはおすすめといえるでしょう。

フレイルリスクの低い方に多い腸内細菌と日本食スコアrJDI-12の基準食品群との相関クラスター解析の図表
フレイルリスクの低い方に多い腸内細菌と日本食スコアrJDI-12の基準食品群との相関クラスター解析の図表

図2:フレイルリスクの低い方に多い腸内細菌と
日本食スコアrJDI-12の基準食品群との
相関クラスター解析

フレイルリスクの低い方に多い腸内細菌叢と「大豆・大豆製品」、「肉・ハム(赤身肉)(−1)」は弱い相関が見られる

西沢氏

大豆を食べたときに腸内でできる代謝産物量からもフレイルとの関連が出ているとか?

内藤先生

そうです、京丹後市の食生活習慣調査から大豆イソフラボンの一種であるダイゼイン、ゲニステインの量(推定値)を算出して、フレイルのリスクとの関連を調べたところ、負の相関があることがわかりました。つまり腸内にダイゼイン、ゲニステインが多い人ほど、フレイルのリスクは低くなると考えられるのです。

対談の写真

この結果からも大豆(豆類)を日常的に食べる食習慣がある人ほど、フレイルのリスクは低くなるといえるのではないでしょうか。

フレイル予防のために、
まずはしっかり朝食を

対談の写真
西沢氏

フレイルというと高齢の方が対象というイメージがありますけど、年代ごとのフレイルリスクについて調べた研究で、50、60代の方の約20%がフレイルリスクがあり、40代でも実はフレイルリスクがある方が結構いるという結果が出ていました。(※2)
フレイル予防のためにおすすめの食事パターンはありますか?

内藤先生

まずは、朝食を食べるようにしてほしいですね。朝ごはんをしっかり食べて、腸の筋肉を刺激して便を出す。この習慣は腸の老化抑制、フレイル予防にも効果的です。60、70代になってから食生活や生活習慣を変えるのは大変だと思うので、40、50代のうちから見直していってほしいですね。

大豆のイラスト
大豆のイラスト

フレイル予防のために、
まずはしっかり朝食を


西沢氏

朝食では、どんな食品を摂るといいでしょうか?

内藤先生

朝に食物繊維を摂ると、食後の血糖値の急上昇が抑えられる、いわゆるセカンドミール効果(注2)が期待できます。今回、話題に上がった大豆は食物繊維も含んでいるので、フレイル予防として朝食にはおすすめの食品といえるのではないでしょうか。

(注2)1982年にトロント大学のジェンキンス博士に
よって発表された概念で、最初にとる食事
(ファーストミール)が、
次の食事(セカンドミール)
の後の血糖値に影響を与えて血糖値が
抑制されること

西沢氏

大豆といえば、日本人には昔から馴染みがありますけど、中でも蒸し大豆の食物繊維量は、栄養成分表で見ても全食品中15位と非常に多く、さらにカルシウム、マグネシウム、ビタミン類も含まれているので、朝食にはうってつけですね。

日本食品標準成分表
日本食品標準成分表

出典:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)

内藤先生

そうですね。大豆は、たんぱく質も含んでいますからね。
蒸し大豆だとみそ汁とかサラダとか何にでも入れられるし、時間がなければそのままつまんでもいいしね。
日本食をベースにした食事で腸内細菌を維持しながら、たんぱく源、食物繊維源としてぜひ大豆・豆類を取り入れてほしいですね。

対談の写真
内藤 裕二氏の写真

内藤 裕二氏
京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授
1983年京都府立医科大学卒業。米国ルイジアナ州立大学客員教授、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科准教授、同大学附属病院内視鏡・超音波診療部部長などを経て、2021年より現職。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢医学、腸内細菌叢研究。著書に、 『酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる 今、話題の酪酸・酪酸菌のすべてが分かる!』(あさ出版) 『消化管(おなか)は泣いています』(ダイヤモンド社) など。

西沢 邦浩氏の写真

西沢 邦浩氏
早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長をつとめる。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総合研究所 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、 『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房) など。

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