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2型糖尿病と上手に付き合うコツ〜食事や運動の基本〜

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監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生

2型糖尿病と聞くと、食事制限をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実は2型糖尿病があってもなくても健康的な食事・運動習慣により、健康的な体作りを楽しむことができます。

この記事のまとめ

・2型糖尿病があってもなくても健康的な食事・運動習慣により、健康的な体作りを楽しむことができる

2型糖尿病の食事療法は「丁寧に食べる」ことから

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食事療法の4つのポイント

2型糖尿病の治療の中心を担う「食事療法」。続けていく難しさや、制限の厳しさを不安に思う方も多いと思いますが、むしろ大切なことは健康的な食事を楽しんで、丁寧に食べることです。
食事に感謝をするという文化が日本にはあります。食事を食べる前に「いただきます」、食事を食べた後に「ごちそうさまでした」と手を合わせる文化です。2型糖尿病があってもなくても、食事に感謝の気持ちをもち、丁寧にしっかり味わって食べることが大切です。
このことに加え、次の4つのポイントをおさえ、おいしくて健康的な食事を楽しんでください。

ポイント1.適切な摂取エネルギーを知る

1日に必要なエネルギー量は人によって異なり、身長や身体活動量、肥満度などをもとに計算します。糖尿病学会ではあなたが目指すとよい目標体重を主治医と相談することを推奨しています。主治医は目標体重とあなたの活動量から、あなたにとって適切なエネルギー量を提案します。

ポイント2.たんぱく質を適切にとる

健康な体作りを楽しむためには、適切なエネルギー量の摂取と適切なたんぱく質の摂取が欠かせません。しかし、適切なたんぱく質の量を決めることもとることも、意外と難しいものです。あなたにとって適切なたんぱく質の量は健康状態と合わせて主治医と相談して決めてください。

ポイント3.食物繊維を含んだ食品をとる

食物繊維は野菜全般やきのこ、海藻などに多く含まれています。食物繊維を含むものを最初に食べるなど、食べ方を工夫すれば、食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることができます。

ポイント4. 間食より食後のデザートにする

おやつは少量でもエネルギー量が多いものや、食べた後の血糖が急上昇しやすいものが多め。たんぱく質、食物繊維も少ないため、血糖の管理には不利になることが多いです。 食べたいときは、寝る前や空腹時ではなく、食後にゆっくり食べる方が血糖値の上昇を防げます。一般的にはおやつは1日200kcal以下が目安ですが、あなたにとってどれくらいのおやつの量や内容が適切か、主治医とよく相談してください。

2型糖尿病の運動療法は、運動や生活で「体を動かす」ことから

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エネルギーの消費について

体重が増えるか減るかは摂取したエネルギー量と消費したエネルギー量の大小で決まります。消費するエネルギー量の多くは、安静時の代謝量と身体活動で消費するエネルギー量になります。
この身体活動で消費されるエネルギー量ですが、運動だけでなくNEATとよばれる運動以外の身体活動で消費されるエネルギー量が重要です。NEATはNon-Exercise-Activity Thermogenesisの略称で日本語では非運動性(活動)熱産生とも呼ばれています。 NEATと肥満との関連が注目されており、肥満者と非肥満者を比べると、肥満者は歩行なども含めた立位による活動時間が、平均で1日約150分も少なかったと報告されています。

【総エネルギー消費量の構成および非肥満者と肥満者におけるその違い(※1)】 3889

NEATの増やし方

運動以外の身体活動を高めることでNEATは増えます。例えば下のような活動があげられます。

・仕事 ・家事(洗濯、掃除、料理、買い物、ゴミ出しなど)  ・犬の散歩 ・子供と遊ぶ、子供の世話  ・通勤や子供の送迎 ・買い物のための移動で行う歩行や階段昇降など

具体的には30分に1回立ち上がるだけでもNEATが増えると言われています。

運動で消費するエネルギー量の増やし方

有酸素運動を行うことで、運動で消費するエネルギー量が増えます。 有酸素運動は、ウォーキングやジョギング、水泳など、ゆっくりと息を吸い込みながら全身の筋肉を使う運動です。 頻度は週に150分かそれ以上、週に3回以上(できれば運動しない日が2日以上続かないようにする)を目安に行うことが推奨されていますが、少しの運動でも効果が積み上がります。

安静時の代謝量の増やし方

筋力トレーニングで骨格筋を増やして安静時の代謝量を増加させることができます。 筋力トレーニングにはレジスタンス運動が有利です。中でも最も大きな太ももの筋肉をトレーニングするスクワットがすすめられます。

無理のない運動でOK

いままで運動の習慣がなかった人は、急に運動を始めると、関節を痛めるなど、思わぬ不調が生じる可能性があります。 通勤時に1駅前で降りて歩く、階段を使うなど、日常生活の中で身体活動を高め、NEATを増やしてみましょう。

京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師
濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。

引用・参考
※1 A NEAT Way to Control Weight? Eric Ravussin Science Vol307,Issue5709,pp.530-531. 28 January 2005 「糖尿病診療ガイドライン2024」日本糖尿病学会(南江堂)
厚生労働省e-ヘルスネット 糖尿病の食事
厚生労働省 糖尿病
厚生労働省e-ヘルスネット 糖尿病を改善するための運動
厚生労働省e-ヘルスネット 身体活動とエネルギー代謝

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編集・文:東谷好依、おいしい健康編集部