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2型糖尿病の治療や日常生活のよくある質問Q&A

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2型糖尿病に関して、日々生じるさまざまな疑問や悩み。「治療は一生続くの?」「旅行に行ってもいい?」など、よくある質問について医師・濱口真英先生に伺いました。

お答えいただいた方:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生

2型糖尿病の治療に関するQ&A

Q.1 2型糖尿病は治るのでしょうか?

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2型糖尿病の「寛解」を目指した取り組みが行われています

2型糖尿病と診断された後に、薬物療法がなくても血糖が正常に管理できている状態が「寛解(かんかい)」と考えられています。医学的にも「2型糖尿病の寛解」という考え方は新しく、今後も考え方が変わってくる可能性はあります。2型糖尿病を寛解させる場合もそうでない場合も、血糖を適切に管理することが大切です。

Q.2 病院に行くときは、何科にかかればよいでしょうか?

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「かかりつけ医」を受診しましょう

健康診断などで「糖尿病の疑いあり」といわれたときは、できるだけ早く「かかりつけ医」を受診してください。あなたを診察した、かかりつけ医が糖尿病専門医の受診が望ましいと診断した場合は適切に糖尿病専門医と連携が行われます。
もちろんあなたが糖尿病専門医を受診することも可能です。糖尿病専門医が、かかりつけ医のもとで治療を継続することが望ましいと診断した場合は、適切にかかりつけ医を紹介されます。

Q.3 2型糖尿病になったら、まずは体重を落とすべきなのでしょうか?

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あなたにとって適切な目標体重を主治医と相談することが大切です

2型糖尿病にとって体重は本当に大切なことです。2型糖尿病の自己管理を難しくしていることのひとつに、糖尿病が悪くなっても体重が減ってしまう場合があります。体重を減らすことで2型糖尿病が管理できる場合もありますが、2型糖尿病が管理できていないことで体重が減ってしまう場合もあります。そのため、体重管理は特に一人で抱えず、信頼できる医療者とよく相談してください。

Q.4 2型糖尿病だけでなく、LDLコレステロールも高いのですが、食事はどんなことに気を付ければよいでしょうか?

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油のとり過ぎに気を付けましょう

LDLコレステロールの改善・予防にも食事療法は有効です。LDLコレステロールとは、悪玉コレステロールのこと。肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担い、増えすぎると動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞の発症につながります。LDLコレステロールを下げるには、動物性脂肪の多い食品や油を多く使った食品を控えるようにしましょう。

Q.5インスリン治療を始めた場合、一生続けるのでしょうか?

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インスリン治療を始めた後、中止できる場合もあります

適切な血糖を維持することや脂肪肝・脂肪筋・脂肪膵という異所性脂肪蓄積といわれる状態を改善することで、インスリンの働きが改善したり、すい臓のインスリン分泌力が回復したりすることがあります。インスリンを打ってしまったらやめられない体になる、というわけではありません。
一方で、命をつないでいくうえでもインスリンを継続して自己注射することが欠かせない場合もあります。

2型糖尿病の生活に関するQ&A

Q.6 毎回バランスのとれた食事をするのが難しいのですが、どうすればよいでしょうか?

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食事の記録をつけて、1週間などの期間でバランスを取っていくことはいかがでしょうか

すべての食事を満点にしようと考えると食事を楽しめなくなってしまいます。楽しむときと頑張るときと合わせて1週間などの期間で適切な摂取エネルギー量となるようにしてはいかがでしょうか。

Q.7シックデイで体調が悪いときはどうすればよいのでしょうか?

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水分をとり、食べられるものでエネルギーを補給します。食事ができないときは医療機関に連絡を

糖尿病のある人が、感染症などによる発熱や下痢、おう吐、食欲不振のために食事がとれない状態を「シックデイ」と呼びます。この異常事態に対抗するため、体内ではインスリン拮抗ホルモンが分泌され、これによって血糖値が高くなりやすくなります。シックデイのときは、脱水予防のため水分を十分にとり、おかゆや麺類など摂取しやすい形でエネルギーと糖分を補給しましょう。
シックデイのときにどのように対応するかはあらかじめ主治医とよく相談してください。食事が困難なときは、早めに医療機関に連絡して指示を受けてください。

Q.8 薬物治療中ですが、旅行には行ってもよいでしょうか?

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血糖管理を続けながら、旅行を楽しめます

薬物治療中でも、医師に確認をしたうえで、血糖管理を続けながら旅行を楽しむことは可能です。
経口薬を使用している人やインスリンなどで治療中の人は、医師と相談のうえ、予備を用意すると安心です。フライト時間が長い海外旅行の場合は、手荷物として機内に持ち込みましょう。
機内では水分補給や、できる範囲で体を動かすことも意識しましょう。

Q .9 災害時や避難生活を送るときに気を付けることは?

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ストレスも多い状況なので、食事や運動は無理せずできる範囲で

災害時は、普段と食事や活動量が変わります。その中でも、できる範囲で食事療法や運動療法を継続することが大切です。
避難所での食事は、炭水化物が中心になることが多く、栄養バランスが崩れやすくなります。十分なエネルギー量がとれないことも想定され、いつもと同じ薬の量では低血糖になる可能性もあるので、避難所の医師や医療スタッフと薬の量を相談しましょう。
また、災害時には、トイレの心配からも水分を控えがちになります。水分が不足すると、血糖管理が悪くなりやすく、腎症など合併症を引き起こす可能性もあるため、水分を確保してしっかりとるようにしましょう。

京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師
濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。

参考
「糖尿病診療ガイドライン2024」日本糖尿病学会(南江堂)

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編集・文:東谷好依、おいしい健康編集部