【医師監修】脂質異常症の種類と治療の進め方
公開日: 2025年5月22日
監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生
脂質の異常は、動脈硬化のリスクを判断するための目安となる値です。健診で受診をすすめられたら、医師と相談して動脈硬化リスクを防ぐ治療を考えていくことになります。中でもLDLコレステロール(LDL-C、いわゆる悪玉コレステロール)の目標値をしっかり管理することが、動脈硬化予防のために重要とされています。脂質異常症の原因は人によって異なるため、数値による自己判断ではなく、医療機関への受診が最初の一歩となります。
この記事のまとめ
・動脈硬化発症予防には、LDLコレステロールの目標値の管理が最も大切
・脂質異常症には体質や遺伝などが原因の場合もあり、見逃さないためにも健診がマスト
1. 脂質異常症にはいくつかの種類がある
コレステロール、中性脂肪の値による脂質異常症の種類
血液中の脂質のうち、コレステロール、中性脂肪の状態によって、脂質異常症は以下のようなものがあります。
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール(LDL-C、いわゆる悪玉コレステロール)が多い状態。
LDLコレステロールが増えすぎると血管の壁に入り込み、動脈硬化を進行させる大きな要因となります。
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロール(HDL-C、いわゆる善玉コレステロール)が少ない状態。
血液中のコレステロールを回収し、動脈硬化を防ぐとされるHDLコレステロール。トリグリセライドが増えると減る傾向にあります。
高トリグリセライド血症
トリグリセライド(TG、中性脂肪)が多い状態。
トリグリセライドは増えすぎると脂肪として蓄積されます。HDLコレステロールも不足する場合が多いとされています。
体質や遺伝などが原因の場合もあり、見逃さないためにも定期健診を
また、脂質異常症は、もともとの体質や遺伝などの「原発性脂質異常症」と、病気などが原因によって起こる「続発性脂質異常症」の2つに分けられます。
原発性脂質異常症のうち、家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値が高くなり、若いうちから動脈硬化がすすみます。日本人の300人に1人ほどの割合でみられるため、見逃さないためにも定期的な健診が必要です。
一方、続発性脂質異常症は、次のような様々な原因が重なり合っていることが考えられます。自己判断をせず、健診で数値を把握し、受診がすすめられる場合は、医師と相談しましょう。
・生活習慣(食生活、運動不足、喫煙、飲酒)
・肥満
・他の病気(糖尿病、腎疾患、内分泌疾患、肝疾患など)
・薬の服用
・閉経(女性の場合)
他の病気の例として、甲状腺機能低下症、胆汁うっ滞、ネフローゼ症候群の影響でLDLコレステロールの値が上がることがあります。また、糖尿病をお持ちの方は、インスリンの働きの関係で血液中にトリグリセライドがたまりやすくなるとされています。
2. 健診で受診がすすめられる値
厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)によると、健診時の脂質においては、以下の表の受診勧奨判定値をもとに、医療機関への受診がすすめられています。
※LDL-C=LDL(悪玉)コレステロール、HDL-C=HDL(善玉)コレステロール、TG=トリグリセライド(中性脂肪)
参考:厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)
LDLコレステロールが180mg/dL以上、または中性脂肪が500mg/dL以上の場合、早めに医療機関の受診を。生活習慣の改善をしたほうがいい場合、食事や運動習慣の改善、禁煙、節酒などに取り組むことがすすめられます。
3.脂質異常症の治療の進め方は人それぞれ。医師と相談の上で決めていく
個人に合わせた脂質管理目標値を決める
脂質の異常は、動脈硬化発症リスクを判断するためのスクリーニング値であり、治療開始のための基準値ではありません。
個々人の動脈硬化のリスクは大きく異なるので、医師による専門的な判断が必要となります。動脈硬化性疾患の発症リスクが高い場合には積極的な治療を行い、リスクが低い場合には必要以上の治療を行なわないためにも、個々人の絶対リスクを評価してそれに対応した脂質管理目標値を定めることが重要とされています。特に、LDLコレステロールの管理目標値を達成することが重要視されています。
自己判断をせず、医師と相談しながら数値の改善に向けて目標を達成する方法を考えていくことが大切です。
薬による治療に関わらず、食事や運動で動脈硬化予防を
脂質管理目標値の設定、薬による治療を行うかなどは、医師と相談して決めていきます。また、薬物療法の有無に関わらず、食事や運動などの生活習慣の改善は、動脈硬化を防ぐための基本となります。
次の記事では、生活習慣の改善について、脂質異常症の方が食生活で気をつけたいことをご紹介します。
【医師監修】脂質異常症の方が心がけたい生活習慣〜体重管理や食事のポイント〜

濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。
引用・参考
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症(基本)
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症
厚生労働省 スマートライフプロジェクト 脂質異常( コレステロールなど)
厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 家族性高コレステロール血症
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 その他の原発性脂質異常症
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