【医師監修】脂質異常症の方が心がけたい生活習慣〜体重管理や食事のポイント〜
公開日: 2025年5月22日
監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生
脂質異常症の方が日常生活で気をつけたいことは、動脈硬化のリスクを下げるための健康的な食事や運動、禁煙、節酒などが基本になります。健康的な生活は、脂質の異常の改善だけでなく、血圧や血糖値を上げにくくする、肥満を解消するなど、多方面から動脈硬化の予防につながります。この記事では主に適切な体重管理と食事について解説します。
この記事のまとめ
・自分に合った体重をキープし、食べる量や内容、食べ方に気をつける
・血液中のコレステロールの7〜8割は体内で合成されていることを知る
1. 動脈硬化を防ぐ生活習慣を意識する
目標体重の維持や肥満の解消につながる食事をとる、運動をする、禁煙する、お酒を飲みすぎないなどの生活習慣での改善策が挙げられます。これらは脂質の異常だけでなく、血圧や血糖値の改善とも共通しています。
目標体重を保ち、肥満を防ぐことが基本
体内で合成された余分なトリグリセライド(TG、中性脂肪)は、体脂肪として蓄積されます。食事からの脂質のとりすぎは摂取エネルギー量(カロリー)も増えてしまい、体重増加の一因に。近年、日本人は食事から脂質をとりすぎている傾向があるので、食事に気をつけて適正な体重を維持することが脂質異常症の改善には大切です。
【目標体重の求め方】
身長(m)✖️身長(m)✖️BMI=目標体重(kg)
例:身長160cmの方の場合、1.6✖️1.6✖️22=56.32kg(約56.3kg)
目標とするBMIの目安
18〜49歳:18.5〜24.9 50〜64歳:20.0〜24.9 65歳以上:21.5〜24.9
※BMIは医師と相談して決めましょう。BMIの標準値は 22で、年齢によって変えることが提案されています。65歳以上の方は上の範囲内で設定します。高齢者ではやせすぎを避けるため、BMI21.5以上が推奨されます。
【日本人の約3人に1人は、食事からの脂質をとりすぎている】
参考:厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査をもとに作成
脂質異常症の方の食事のポイント
目標体重を維持するうえで、エネルギー量のとりすぎに注意しましょう。食事では下のようなことに気をつけると、エネルギー量オーバーを防ぎ、動脈硬化予防にもつながります。
間食や甘いものを食べすぎない
トリグリセライドは余分な糖質を使って合成されるので、炭水化物や果物を含む、糖質を大量に含む食品(お菓子やソフトドリンクなど)のとりすぎにも注意します。
油っぽいものを食べすぎない
脂質のカロリーは、炭水化物、たんぱく質の約2倍。油をたくさん使った料理はカロリーが増える原因に。量や頻度を調整しましょう。
動物性脂肪(飽和脂肪酸の多い食品)を控える
食品中の脂質の中でも、特に飽和脂肪酸をとりすぎると、肝臓でのコレステロールの合成が促進されます。飽和脂肪酸が多く含まれている食品は、肉などの脂身(赤身ではなく白い部分)、ベーコンなどの肉の加工品、バター、ラード、生クリームなど、主に動物性の脂肪になります。
脂質の中でも、不飽和脂肪酸は動脈硬化予防の上でとりたい脂質。青魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸のEPA、DHAが代表的で、缶詰からでも効率よくとることができます。
野菜やきのこ、海藻などに多く含まれる食物繊維には、余分なコレステロールを体外に排出するとされています。肥満予防の上でも積極的にとりたい食品です。
夜遅い時間に食べない
寝る2時間以内に夕食を食べることが多い、夕食後の間食は、肥満の原因になります。
ゆっくり食べる
食べるスピードが速いと、満腹になるまで量を食べすぎてしまいがち。ゆっくりよく噛んで食べることを心がけましょう。
お酒を飲みすぎない
アルコールにもカロリーが含まれており、ビール1本でご飯1杯分ほどのカロリーになります。適量を守り、飲みすぎないことが他の病気の予防の上でも有効です。
2.コレステロールについて、基本をおさらい
体内のコレステロールの7〜8割は肝臓でつくられている
動脈硬化の大きなリスクとなるLDLコレステロールは、たんぱく質などと結合した血液中に溶け込んでいるコレステロールのことで、食品に含まれているコレステロールとは異なります。 コレステロール自体は、人間の体に必要な脂質のひとつ。コレステロールは細胞膜、ホルモン、胆汁酸をつくる材料となっています。 体内のコレステロールのうち、食品からとり入れるコレステロールは2〜3割で、実はコレステロールの7〜8割は、糖や脂肪を使って肝臓でつくられています。
【体内でつくられるコレステロールと食品からとるコレステロール】
食品に含まれているコレステロールは栄養素のひとつ
食品のコレステロールは、栄養素の脂質のひとつです。摂取量により血液中のコレステロール値に直接的な影響を与えないことから、摂取量の基準値は定められていません。 ですが、厚生労働省の「日本人の食事摂基準(2025年版)」によると、脂質異常症の重症化予防のためには1日あたりのコレステロール摂取量を200mg未満にすることが望ましいとされています。 普段からコレステロールを多く含む食品(卵黄、魚卵、レバー、ウナギなど)をとりすぎている場合は、頻度や量を調整しましょう。
食事に限らず、運動をすることも動脈硬化予防や肥満解消の上で効果が期待できます。 次の記事では、脂質異常症の方が取り入れたい運動について、手軽にできるウォーキングから始めるポイントをご紹介します。
【医師監修】脂質異常症の方に向けた運動の取り入れ方〜まずは歩数を増やそう〜

濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。
引用・参考
厚生労働省 e-ヘルスネット コレステロール
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症(基本)
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症
厚生労働省 e-ヘルスネット アルコールと脂質異常症
農林水産省 脂質のとりすぎに注意
厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査
厚生労働省 脂質異常症
厚生労働省 スマートライフプロジェクト 脂質異常( コレステロールなど)
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