読む、えいよう

【医師監修】脂質異常症の方に向けた運動の取り入れ方〜まずは歩数を増やそう〜

4229

監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生

動脈硬化の予防のためには、運動不足解消もひとつの方法です。また、運動によってトリグリセライド(中性脂肪)が下がるとともに、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が上がるといわれています。とはいえ、いきなりハードな運動をしなくても、歩く機会を増やすなど、体を動かす習慣を意識することが大切です。

この記事のまとめ

・運動不足は動脈硬化の原因にもなるので、体を動かすことを意識
・手軽にできる運動は、歩くこと(ウォーキング)
・歩数の目安や歩き方のポイントを知っておく

1.運動不足解消が肥満を防ぎ、動脈硬化予防につながる

運動と動脈硬化の関係

動脈硬化発症リスクのひとつに、運動不足が挙げられます。 運動不足は、肥満、トリグリセライド(中性脂肪)の上昇、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下、血圧上昇などにより、動脈硬化を引き起こしやすくなるためです。

体を動かすことでエネルギー(カロリー)消費

運動や体を動かすことは、エネルギーを消費し、肥満予防にもなり一石二鳥です。 太ってしまう原因のひとつが、食べている摂取エネルギー量が、消費しているエネルギー量より多くなっているため。食べた分は、体を動かしてエネルギー消費することで、体重の増加を防ぎます。 特別な運動をしなくても、歩く時間を増やしたり、家事を行ったりすることでもエネルギーは消費されています。

2.歩くこと、歩数を増やすことから始めよう

1日の目標歩数は成人8000歩、高齢者6000歩

歩くことによって、体脂肪の減少による肥満の解消や、血液中の中性脂肪の減少などが期待できます。さらに、血圧、血糖値の改善なども期待でき、動脈硬化のリスク因子に対しても多くのメリットがあると考えられています。

1日の目標歩数の目安は、厚生労働省「健康日本21(第三次)における身体活動・運動の目標」によると、20〜64歳は8000歩、65歳以上は6000歩とされています。 とはいえ、いきなりこの歩数を目指さなくても、少しずつ無理のないペースで増やしていくといいでしょう。

4240

歩く時間を10分増やすと+1000歩

歩数は歩数計やスマートフォンなどで計測できます。最近では歩数でポイントをためることができるアプリなども身近になっています。 ちなみに、約10分の歩行が約1000歩の目安です。歩数を増やす方法は、生活スタイルに応じて、自分ができそうなことから試してみましょう。

【歩数を増やすチャンスの例】
・職場、学校まで歩いて行く
・少し遠くのお店に買い物や食事に行く
・エスカレーターではなく階段を使う
・いつもと違う道を使って、散策を楽しむ
・子供や孫の送り迎えに歩いて行く
・公園や図書館めぐりをする など

外出できないときは、家の中で歩く機会をつくる

家の中でも、家事などで意外と歩いているものです。座っている時間が長い場合は、30分に1回でも立ち上がって、室内を歩くことなどを意識しましょう。

【家の中でできる歩数の増やし方】
・掃除機をかける
・テレビを見ながら足踏みをする
・段差を使ったベンチステップ運動(踏み台昇降)  

3.ウォーキングや体を動かすときの注意点 

体調や今までの運動状況などに合わせて、無理せず行う

慣れない運動は筋肉や骨を痛める原因になることがあります。歩く前にも準備・整理運動を行うようにし、体調が悪いときや、体に痛みがあるときなどは無理して行わないようにします。 また、脂質異常症治療薬(スタチン系)使用中の筋肉痛については処方している医師との相談が望まれます。

<ウォーキング前の準備運動の例> 4297

歩くことや体を動かすことは肥満の予防や改善になり、その結果、動脈硬化を防ぐことが期待できます。大切なのは習慣にすることなので、無理なくできる方法で少しずつ増やすことを目指しましょう。

京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師
濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。

引用・参考
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症(基本)
厚生労働省 スマートライフプロジェクト 脂質異常(コレステロールなど)
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂質異常症を改善するための運動
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患の発症を予防するためには?
厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 慢性疾患を有する人の身体活動のポイント
健康日本21(第三次)における身体活動・運動の目標
厚生労働省 歩く時のポイント

関連記事
【医師監修】脂質異常症とは、どんな病気?動脈硬化発症リスクと脂質異常
【医師監修】脂質異常症の種類と治療の進め方
【医師監修】脂質異常症の方が心がけたい生活習慣〜体重管理や食事のポイント〜

脂質異常症と食事についての特集ページも公開中▼

献立も外食もまるわかり!脂質異常症と食事献立も外食もまるわかり!脂質異常症と食事
編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士