「心のえいよう」お菓子研究家 本間節子さん 無理はせず、自分なりにできることを気分転換に
公開日: 2021年3月3日
「月刊おいしい健康」
では、料理研究家の方々にレシピを考案していただいています。「料理を考え、作ること」を仕事にしている方々は、心身ともに健やかでいるためにどのようなことに気をつけているのでしょうか? 「心のえいよう」と題して、お話を聞いていきます。
決め事は作らず、無理もしない
3月号では、カロリー(エネルギー量)別のおやつを紹介しました。これらのレシピを考えてくれたのが、お菓子研究家の本間節子さん。旬の果物を取り入れながら、体にも心にも優しいお菓子がとても人気です。日本茶好きが高じて、日本茶インストラクターとして活躍するという一面も。
お菓子に向き合い、試作を重ねる日々では、甘いものを口にする機会も多いはずです。すらっとした体型なうえに、ここ数年はひどい風邪になったり、寝込んだりしたことはほとんどないのだそう。どのように体調を管理しているのでしょうか?
「ちょっとでも具合が悪いと感じたら、とにかく寝ます(笑)。寝たら回復するので『明日できることは明日やろう』と決めて、無理はしないようにしています」
以前は、時間があったらレシピを考えたり、試作をしたりとできるだけ仕事をしていたのだそう。しかし、年齢を重ねるにつれ、「明日にしよう」と、少しずつ調整できるようになってきたと振り返ります。
試作のお菓子を食べるのはほとんどが朝か昼。前日に作ったものが翌日でもおいしいか、冷蔵庫に入れて状態がどう変わっているのかを確かめる意味で食べることもあります。
「朝からショートケーキを食べたりもします(笑)。粉物は炭水化物が多いので、そのぶん食事で調整するようにして。どうしても野菜が足りないので、意識して摂るようにしていますね。あとは夜にお菓子を食べないといけない状況だったら、夕食はお刺身と納豆にするとか。一日でだいたいのバランスが取れていたらいいとしています」
お菓子を作るだけでなく、食べるのも好きだからこそ、あまり細かく決めすぎずに試食も食事も楽しめるようにしているのだそう。
体を動かすことも同じく決め事は作らず、気が向いたら散歩に出るようにしています。ちょっと遠くのパン屋さんまで歩いたり、近所の庭木を観察しながらぶらぶらしたり。
「あー、ここのレモンが育ってきたな、とか見るのが好きなんです。自分なりのちょっとした目的があると散歩も楽しくなるものですよね」
最近の発見は、小さな牧場を見つけたこと。「ぶらぶらしていたら、牛がいたんです。びっくりして。夕方だったのでよくわからなかったけれど、次は昼に行って様子を見てみようと思います。新鮮な牛乳が買えたらお菓子に使ってみたい」と嬉しそうに教えてくれました。
仕事から離れることのできる、習い事の時間
気がつくと、ついお菓子のことを考え、手を動かしてしまうという本間さんにとっては、仕事から離れる時間を持つことも大切だと話します。少し前に保護猫を引き取ったそうで、愛猫と遊ぶ時間や、一緒にぼーっとするのが癒しになっています。
そして、もうひとつ、仕事から離れる時間が、習い事。
「月に1回、絵を習いに行っているんです。恥ずかしいくらい描けないんですけど、抽象画の教室で、深く考えずに描くのが私には合っているみたい。教室に行って、絵を描いて、みんなとお茶を飲んで話すというのが、すごくいいリフレッシュになるんです」
なんと、今年で7年目になるそうで、いかに本間さんにとって大切な時間になっているかがわかります。近所の個人美術館に行ったところ、館長さんと話すうちにワークショップがあることを知って試しに行ってみたことがきっかけだったそう。
「80歳くらいの女性の先生で、とてもおしゃれな方なんです。お茶の時間に出てくる器も素敵で、以前書籍の撮影の時にお借りしたこともあるくらいで。予習や復習をしなくてもいいし、自由に描かせてくれる。描いた後には先生が一緒に直してくれたりして。年末になると美術館に生徒の絵を飾ってくれるので、その時にいい絵を出せることを目標に描いています」
好きなお菓子を仕事にしているからこそ、離れる時間も必要なのでしょう。頭を空っぽにして絵を楽しみ、帰ってきたらまた仕事のことを考える。そうやってたくさんの人を幸せにするお菓子を生み出してきたのです。
「『よく寝る』だけじゃ、なんだか恥ずかしいですもんね。よかった、教室に通ってて。心のえいようの話ができてホッとしました」と笑います。無理せず、自分にとってできることや続けられることを見つける。それが本間さんの笑顔のもとであり、心のえいようなのです。
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