【医師監修】高血圧の原因と治療の必要性 放っておかない方がいい理由
公開日: 2025年4月30日
監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、気づかないうちに血管を傷つけて動脈硬化などの原因になります。自覚症状がほとんどないので、高血圧になる原因を知っておくことが大切です。
この記事のまとめ
・高血圧からの動脈硬化が、様々な病気の原因になるため、高血圧の予防や治療が大切
・最初の治療は生活改善から。必要に応じて血圧を下げる薬を使う
1.高血圧の原因について
高血圧は、食生活や運動不足、遺伝など様々な原因が考えられる
日本人の高血圧の多くは生活習慣や体質、遺伝などの様々な要因が組み合わさって起こる「本態性高血圧」と考えられています。加齢による血管の老化によっても血圧は上がるので、歳を重ねるにつれて気をつけたい病気のひとつです。 また、肥満を伴わない高血圧が半数以上ですが、若年・中年の男性では、肥満(特に内臓肥満)による高血圧も増えているという報告もあります(※1)。
・食塩のとりすぎ
・肥満
・飲酒
・運動不足
・ストレス
・遺伝体質
・加齢
一方、甲状腺や副腎などの病気が原因による高血圧を「二次性高血圧」といい、睡眠時無呼吸症候群でも高血圧を合併する場合があります。
血圧は日々変わるが、変動における自覚症状はほとんどない
血圧は、日常生活における様々なことの影響を受けて変動します。しかし、血圧が上がっているかどうかを自覚することは難しいものです。
高血圧の初期症状はほとんどなく、下のような症状が見られるときにはすでに進行していて合併症の疑いもあります。
・夜の頻尿、呼吸困難
・めまいやふらつき
・足の冷えを感じる
そのため、診察時だけではなく、普段から自分の血圧傾向を知ることが大切です。
逆に、血圧は家庭でも測れ、自分の健康を示す身近なバロメーターといえます。
習慣的に測っておくことで、悪化するまで放置せず、予防や早期治療ができるのです。
※血圧の測り方はこちら
2.高血圧のリスクについて。放っておくのはなぜ危険?
血圧が高い状態が続くと、動脈硬化の原因になる
血圧が高い状態が続くと、血管が硬く・狭くなる「動脈硬化」の状態を引き起こします。 動脈硬化が進むと脳卒中や心臓病、腎臓病をはじめ、様々な病気のリスクが高まるため、高血圧を改善することが大切なのです。
高血圧が関係する病気は多い
心疾患、脳血管疾患をはじめ、高血圧は血管にダメージを与え、体の様々な場所に影響を与えます。気づかないうちに静かに進行することから「サイレントキラー」とも呼ばれています。
【高血圧が原因となる病気の例】
脳:脳梗塞、脳出血などの脳血管障害(脳卒中)、認知症
目:高血圧網膜症
心臓:狭心症、心筋梗塞、心不全
腎臓:腎硬化症
3.高血圧の治療方法
どれぐらいまで血圧を下げればいいのか?
高血圧の治療は、将来的な病気の予防のために、血圧を下げることを目的としています。 治療の方法は生活習慣の見直し(食事・運動療法)と薬物療法(降圧薬治療)があります。 一般的な治療の目標値としては、75歳未満は診察室血圧で130/80mmHg未満、75歳以上は140/90mmHg未満とされています。 他の病気の状態なども考慮しながら、主治医と相談して目標、治療の進め方を決めていくことになります。
食塩のとりすぎが、血圧の上昇と大きく関わっている
高血圧の改善は、軽症であれば、まず食事、運動、禁煙、節酒などの生活習慣を見直すことからはじめていきます。 その中でも、よく耳にするのが「減塩」の大切さではないでしょうか。食塩のとりすぎは血圧を上げることがわかっており、高血圧の方の1日あたりの食塩摂取量の目標は6g未満とされています。 令和4年国民健康・栄養調査によると、日本人の食塩摂取量の平均は1日あたり9.7g( 男性10.5g、女性9.0g)で、高血圧の予防の上でも減塩は重要です。
参考:厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査
血圧を下げる薬を使用した治療について
生活習慣を改善してもなかなか血圧が目標値まで下がらない場合など、降圧剤を使った薬物療法を取り入れる場合があります。 血圧を下げる薬には多くの種類があるので、主治医と相談しながら最適な方法を決めていきます。血圧が下がってきた場合でも、自己判断で薬をやめるなどせず、必ず医師の指示のもと服薬することが大切です。
高血圧を改善することは、動脈硬化や病気のリスクを下げることにつながります。そのためには日々の血圧管理、生活習慣の見直しが大切です。
次の記事では、日常生活で高血圧を改善する生活習慣について解説します。
【医師監修】日常生活での高血圧改善5つのヒント〜食事や習慣の見直しから〜

濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。
引用・参考
※1 Hori M, Kitamura A, Kiyama M, Imano H, Yamagishi K, Cui R, Umesawa M, Muraki I, Okada T, Sankai T, Ohira T, Saito I, Tanigawa T, Iso H; CIRCS Investigators. Fifty-year Time Trends in Blood Pressures, Body Mass Index and their Relations in a Japanese Community: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Atheroscler Thromb 2017; 24:518-529.
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査の概要
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子
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