【医師監修】高血圧とは、どんな病気?診断の基準や種類を知ろう
公開日: 2025年4月30日
監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生
高血圧には自覚症状がほとんどなく、健診などで「血圧が高めですね」と言われて気づく方も多いかもしれません。そのまま放っておくと、動脈硬化などの原因になる高血圧。どのような状態が「高血圧」と診断されるのか、高血圧にも様々な種類があることをわかりやすく解説します。
この記事のまとめ
・高血圧の診断基準は、診察室血圧が「上140mmHg以上もしくは下90mmHg以上」、家庭血圧が「上135mmHg以上もしくは下85mmHg以上」
・家庭で血圧を測る習慣は、予防、改善、診断、治療などに役立つ
1. 目に見えない血圧。高血圧とは血圧が高い状態が続くこと
血圧の「上」と「下」の状態をおさらい
高血圧とは上、下の血圧が基準値を超えて「高い」状態が続いていることをいいます。 そもそも血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力のこと。 「上」と「下」と呼ばれることが多いですが、詳しくは次のような値を指します。
・上=最高血圧。心臓が収縮して血管に強い圧力がかかっている状態の値。収縮期血圧と呼ばれる
・下=最低血圧。心臓が血液をためこむために拡張しているときの値。拡張時血圧と呼ばれる
日本人の3〜4人に1人は血圧が高め
厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査によると、高血圧の基準のひとつとされる上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上の人の割合が男性28.9%、女性21.1%と、決して少なくはありません。
出典:厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査 図26-1 収縮期(最高)血圧が140mmHg以上の者の割合の年次推移(20歳以上)(平成21〜令和元年、4年)
高血圧は自覚症状がほとんどないため、健診で気づく方も多いかもしれません。 健診では、上の血圧が130mmHg以上または下の血圧が85mmHg以上から、保健指導や生活習慣の改善がすすめられています。上160mmHg以上または下100mmHgの場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
2. 高血圧の診断基準は、診察時と家庭で測る場合で値が異なる
診察室血圧が「上140mmHg以上もしくは下90mmHg以上」の場合、高血圧と診断される
高血圧の診断は、上と下の血圧を目安にしますが、健診時の数値とは判定基準が異なります。
さらに、血圧は測る状況によっても変化するため、診察時の血圧(診察室血圧)と家庭での血圧(家庭血圧)でも診断基準値が違います。
日本高血圧学会の診断基準では、診察室で測った上の血圧(収縮時血圧)が140mmHg以上もしくは下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合に「高血圧」と診断されます。下図は診察室血圧の分類で、高血圧の中でもI度、II度、III度に分けられます。
高血圧の診断には家庭で測る血圧が重要。診察室血圧よりマイナス5が基準
血圧は計測時の状況や条件によっても変わるため、診察室血圧だけではなく、家庭や職場などでの計測値(家庭血圧)もふまえて診断していきます。家庭血圧は上135mmHg以上もしくは下85mmHg以上が高血圧の基準になります。
診察時は正常値でも、実は高血圧という場合がある
診察室血圧と家庭血圧の数値によって、高血圧は以下のタイプに分けられます。
①どちらも高い・・・持続性高血圧
診察室血圧 上140mmHg以上/下90mmHg以上
家庭血圧 上135mmHg以上/下85mmHg以上
→常に血圧が高い状態のため、治療が必要とされる高血圧です。
②診察時に高い・・・白衣高血圧
診察室血圧 上140mmHg以上/下90mmHg以上
家庭血圧 上135mmHg未満/下85mmHg未満
→白衣高血圧とは自宅では基準を超えていないのに、診察時に不安や緊張で血圧が上がってしまう場合。家庭血圧が正常であれば、薬の治療の必要は当面ないとされていますが、将来的に高血圧になる可能性が高いので血圧を定期的に測るようにしましょう。
③家庭で高い・・・仮面高血圧
診察室血圧 上140mmHg未満/下90mmHg未満
家庭血圧 上135mmHg以上/下85mmHg以上(夜間血圧は上120mmHg以上/下70mmHg以上)
→仮面高血圧は、持続性高血圧の方と同じくらい脳心血管病を発症しやすいため、詳しい診察や治療が必要とされます。
さらに仮面高血圧は、血圧が高くなる時間帯によっても3つに分けられています。
・早朝高血圧:夜間高血圧が朝まで続いているタイプと、朝に血圧が急に上がるタイプがある
・昼間高血圧(ストレス下高血圧):職場や家庭などでストレスのある昼間の時間帯に血圧が上がる
・夜間高血圧:就寝前や起床時に正常でも、夜間血圧が高い場合もある
このように、高血圧の中には、仮面高血圧のように家庭血圧を測っていないと見過ごされてしまう種類もあるのです。そのため、家庭でも血圧を普段から測ることがすすめられています。 血圧測定を習慣にすると、自分の血圧の傾向もつかみやすくなります。日々の血圧の変化で気になることがあったときには主治医に相談するとよいでしょう。
3. 家庭での血圧の測り方
家庭で血圧を測るときのポイント
家庭用血圧計は家電量販店やインターネットなどでも手に入りやすくなっています。 日本高血圧学会では、腕にカフを巻いて測る上腕式の血圧計を使うことを推奨しており、正しい方法で測ることが大切です。
【血圧を測るタイミング】
・1日2回、朝と夜に測る
朝は起きて1時間以内、朝食前・服薬前
夜は寝る直前
・トイレをすませ、1〜2分たったら
・測る前にたばこを吸わない、飲酒しない、カフェインをとらない
【血圧を測る回数】
・基本的には1回につき2回測る。記録する数値はその平均をとる
【血圧の測り方】
・足を組まずにイスに座り、カフの高さと心臓の高さを合わせる
・計測中は話をしない、力を入れない、動かない
また、血圧を記録しておくと診察時に医師に共有ができ、スムーズな治療につながります。 最近の家庭用血圧計の中にはスマートフォンと連携できるものなどもあり、自分が記録しやすい血圧計を使うとよいでしょう。
高血圧の基準を知ったうえで、自分の血圧を管理しておくと、高血圧の予防や改善につながります。
次の記事では、高血圧の原因や放っておくとどんなことがあるのかを解説します。
【医師監修】高血圧の原因と治療の必要性 放っておかない方がいい理由

濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。
引用・参考
厚生労働省 令和2年(2020)患者調査の概況
厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査結果の概要
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子
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