【医師監修】日常生活での高血圧改善5つのヒント〜食事や習慣の見直しから〜
公開日: 2025年4月30日
監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生
軽症の高血圧の場合、生活習慣の改善から治療をはじめます。生活の中で、血圧が上がりやすくなる行動を改めたり、血圧を改善する方法を取り入れたりすることは薬で治療をしている方にも有効とされています。この記事では、日常生活で心がけたい5つのポイントを解説します。
この記事のまとめ
・減塩や運動、節酒、禁煙など、複数の内容を組み合わせるのが効果的
・血圧が上がる理由には、寒さやストレスなどもある
1.血圧を改善する5つの生活習慣
習慣1.食塩をとりすぎない「減塩」の食生活
食塩のとりすぎは、血圧の上昇に関わることがわかっています。 食塩の摂取量を1日1g減らすと、上の血圧(収縮時血圧)が約1mmHg強、下がることが期待できるとされているので(※1)、少しずつでも減塩を意識することが大切です。
□ 酸味や香味野菜、スパイスを活用する
食塩を含む調味料のかわりに、酢や果物の酸味、にんにくやねぎなどの香味野菜、スパイスなどを使う
□ 食塩の量が少ない調味料を使う
酢は食塩相当量0。ケチャップ、マヨネーズなども食塩の量は少なめ
□ 加工品を控える
肉や魚介の加工品(ハム、ソーセージ、練り物など)にも食塩が使われているので食べすぎないようにする
□ 味の濃い外食や市販品を控える
外食や市販のお弁当やお惣菜などの中には、味の濃いものも多いため、知らないうちに食塩をとりすぎていることがある。市販品なら表示の食塩相当量をチェックしてから選ぶ方法も
□ 卓上調味料を使いすぎない
卓上の塩、しょうゆなどを使う前に、一度味見を。味が薄くなければそのまま食べる
□ 食べすぎを避ける
同じ味付けのものをたくさん食べると、その分食塩摂取量も増える
一気に食塩を減らすと、味が薄く感じておいしく楽しめないかもしれません。まずは少しずつ減らし、薄味に味覚を慣らしていくと続けやすくなります。 上の方法も取り入れ、味のバリエーションを増やしながら、食事を楽しむ方法を考えましょう。
習慣2.野菜や果物を積極的に食べる
野菜や果物には、ナトリウムを体外に排出するカリウムが多く含まれています。カリウムをとることで血圧が下がる効果が期待されるとされています。
朝食に果物を食べる、野菜の副菜をつける、みそ汁やスープの具材にするなどの方法で、食卓に取り入れたいものです。食物繊維やビタミンなどもとれて栄養バランスも整います。
ただし、肥満や糖尿病のある方は果物の摂取量に注意が必要です。カリウムの摂取量について、腎障害のある方は医師の指示に従ってください。
DASH食とは「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、アメリカで考案された高血圧の予防・改善を目的とした食事法です。 野菜・果物・低脂肪乳製品を多くとり、飽和脂肪酸やコレステロールが少なめにするDASH食に、さらに減塩を組み合わせるDASH-sodium食には、降圧効果があるという報告があります。
習慣3. 適度な運動をする
ウォーキング、ステップ運動、スロージョギング、ランニングなどの有酸素運動は、高血圧の予防や治療のためにもすすめられています。血圧は運動直後から約4-5mmHg低下し、その後22時間ぐらい降圧効果は続いたという報告もあります。まずは歩く機会を少し増やすなど、無理のない範囲で習慣をつけると良いでしょう。
ただし、高血圧の方には運動を制限した方がいい場合もあるため、以下の場合は必ず主治医に相談してください。
II度高血圧以上の血圧値(診察室血圧の上160mmHg以上、下100mmHg以上)で、脳心血管病のある高血圧の方、III度高血圧の方(診察室血圧の上180mmHg以上、下110mmHg以上)の運動療法は、服薬で血圧をコントロールしてからはじめることになっており、自己判断で運動をしないようにしましょう。
運動についてはこちらの記事で詳しく紹介しています
習慣4.お酒は適量を守る
お酒を飲む習慣がある方は、血圧が上がりやすくなることがわかっています。大量の飲酒は高血圧だけでなく、脳卒中などの原因にもつながります。 1日あたりのアルコール量は男性20〜30ml、女性は10〜20ml以下にすることがすすめられています。
アルコール量20〜30ml以下の目安
ビール(中瓶)・・・1本
日本酒・・・1合
焼酎・・・1/2合
ウィスキー、ブランデー・・・ダブル1杯
ワイン・・・2杯
習慣5.たばこを吸っている場合は禁煙する
喫煙は脳心血管病のリスクになることは明らかになっており、高血圧の発症とも関わりがあるとされています。たばこ1本を吸うと15分以上の血圧上昇が続くことが示された報告もあります。喫煙自体は高血圧に限らず、様々な病気のリスクや死亡原因となるため、禁煙がすすめられます。
2.その他の血圧が上がる原因を知っておく
季節や温度などの外的要因でも血圧は上がる
血圧は一般的に気温が高い夏より、気温が低い冬の方が高くなるとされています。これは寒さにより血管が収縮するためです。 室温が低くても血圧は上昇するため、冬は暖房のきいていない場所(脱衣所や浴室、トイレ)には注意し、冬だけでなく、夏でも冷房による冷えには気をつけるようにしましょう。
ストレスも血圧の上昇に関わる
心理的、社会的なストレスが多いと、高血圧の発症リスクが2倍以上高まるという報告があります。また、仮面高血圧の原因にもなるとされています。職場や家庭などでストレスを感じている方は、リフレッシュする方法を見つけてストレスをためないようにしたいものです。
血圧を上げにくくする生活を心がけ、家庭でも正しく血圧を測る習慣をつけることで、血圧と上手に付き合っていきましょう。
次の記事では、高血圧の改善や予防にもつながる運動についてご紹介します。
【医師監修】高血圧の方の運動の取り入れ方〜ウォーキングや日常生活でできること〜

濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。
引用・参考
※1 厚生労働省 日本人の食事摂取基準2025年版
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
厚生労働省 令和4年国民健康・栄養調査の概要
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子
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