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【医師監修】高血圧の方の運動の取り入れ方〜ウォーキングや日常生活でできること〜

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監修:京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師 濱口真英先生

運動療法は高血圧の治療法のひとつ。また、高血圧の予防や改善においても、運動の習慣や日々の活動量を増やすことが重要視されています。まずは歩く機会を増やすなど、ハードな運動をしなくても、できることから取り入れましょう。

この記事のまとめ

・高血圧を改善する方法として、運動の習慣や活動量の増加が挙げられる
・まずは1日の目標歩数を知り、歩数を増やすことからはじめよう
・日々の活動の中でも歩行と同じくらいの運動強度があるものも

1. 運動不足は高血圧の原因のひとつ。体を動かす習慣で改善につながる

運動により血圧が下がるといわれる理由

運動や活動量を増やすことで血圧が下がるという報告も多く、高血圧の方の生活習慣に運動を取り入れることがすすめられています。 例えば、定期的な有酸素運動を行うことで、高血圧患者の収縮期血圧は3〜5mmHg、拡張期血圧は2〜3mmHg下がることが期待されます(※1)。有酸素運動により自律神経のバランスが整い、血管が広がりやすくなることで血圧を下げるとされています。

2.まずは歩数を増やすことからはじめよう

1日の目標歩数は成人8,000歩、高齢者6,000歩

有酸素運動の中でも、ウォーキング(歩くこと)は日常生活で比較的手軽に行いやすいもの。 一気に長い時間や距離を歩かなくても、歩くことを習慣にすると、血圧の改善以外に肥満解消や血糖値の改善なども期待でき、健康のうえで多くのメリットがあると考えられています。 日常生活の歩数を増やすために、厚生労働省「健康日本21(第三次)における身体活動・運動の目標」では、1日の目標歩数を20〜64歳は8,000歩、65歳以上は6,000歩としています。 とはいえ、いきなりこの歩数を目指さなくても、少しずつ無理のないペースで増やしていくといいでしょう。

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歩く時間を10分増やすと+1,000歩

歩数は歩数計やスマートフォンなどで計測してもよいですし、約10分の歩行が約1,000歩の目安になります。10分歩いて歩数を増やす方法は、生活スタイルに応じて、自分ができそうなことから試してみましょう。

【歩数を増やすチャンスの例】
・職場、学校まで歩いて行く
・少し遠くのお店に買い物や食事に行く
・エスカレーターではなく階段を使う
・いつもと違う道を使って、散策を楽しむ
・子供や孫の送り迎えに歩いて行く
・公園や図書館めぐりをする など

3. 日常生活でも体を動かす機会はいろいろある

家事でも自然に歩数や活動量を増やせる

家の中の活動でも、意外と歩いていたり、体を動かしたりしているものです。 例えば、料理をする、掃除機をかける、洗濯物を干す、ゴミを出す、荷物を運ぶなどの家事でも体を動かしています。

【ウォーキング(3メッツ)と同じぐらいの強度がある家事】
メッツとは、身体活動の強度を安静時の何倍に相当するかを示した指標です。座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。

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座っていることが多い方は、立ち上がってときどき歩くと良い

仕事の都合などで座っている時間が長い方は、30分に1回は立ち上がって歩く、遠くのトイレに行くなど、歩くことを意識したいものです。まとめて歩かなくてもこまめに歩いて歩数を増やしていきましょう。

4.高血圧の方が運動をする際のポイント

軽め、短めの運動から少しずつ取り入れていきましょう

運動をはじめたい方は、軽め、短めの運動でよいので少しずつ取り入れてみましょう。あまりハードな運動を行うと、運動中に血圧が上がる可能性もあります。 厚生労働省「高血圧の人を対象にした運動プログラム」によると、できれば週3〜5回、1日30分以上の運動がすすめられています。運動に慣れてきたら目安にすると良いでしょう。

運動をする上での注意点

ケガの予防のためにも、準備・整理運動を行うようにし、体調が悪いときや、体に痛みがあるときなどは無理して行わず、医師や専門家に相談しましょう。 また、II度高血圧以上(上160mmHg以上もしくは下100mmHg以上)の方が運動を行う際は、まず主治医に相談してください。

体を動かすことは肥満の予防や改善にもなり、その結果、高血圧を防ぐことも期待できます。大切なのは習慣にすることなので、無理なくできる方法からはじめてみましょう。

京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学 講師
濱口真英先生
2000年に京都府立医科大学を卒業後、第一内科に入局。2002年朝日大学病院(旧朝日大学村上記念病院)消化器内科助手。2004年京都府立医科大学大学院医学研究科に入学、医学博士取得。2009年から2012年大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任研究員、2013年同特任助教。2014年京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学病院助教、2015年より2018年まで亀岡市立病院で地域医療に従事、2017年より同内分泌・代謝内科学客員講師を併任、2018年より同助教。2002年より一貫して糖尿病発症の病態基盤解明を目指した代謝免疫学の研究に従事している。

引用・参考
※1 厚生労働省 高血圧の人を対象にした運動プログラム
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧症を解消するための運動
厚生労働省 e-ヘルスネット 健康日本21(第三次)における身体活動・運動の目標
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023 身体活動・運動を安全に行うためのポイント
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士