読む、えいよう

20代・30代からは、「甘い飲み物」に気をつけましょう

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第2回(文・岡田 定 医師)

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20代・30代のあなたは、仕事もプライベートも元気いっぱいの生活を送っておられるのではないでしょうか?

そんなあなたにお尋ねします。食事のときや喉が渇いたときに、決まって飲む物はありますか? いつも選ぶものは何ですか?

それが、「フルーツジュース」「清涼飲料水」「甘いコーヒー」「スポーツドリンク」なら、一度見直してみることをおすすめします。

甘い飲み物の常飲は、糖質依存症になることもあります

「果物は健康にいいから、毎日フルーツジュースをいっぱい飲んでいます」「清涼飲料水を、お茶や水の替わりにしています」「コーヒーが大好き、それも甘いものが好きです」「汗をかくことが多いので、スポーツドリンクで毎日水分補給しています」いずれの場合も注意が必要です。

もし、あなたがこのような甘い飲み物を常飲されているなら、知らないうちに「糖質依存症(中毒)」になっている可能性があります。
糖質依存症とは、いつも甘い物がほしくて仕方がなくなる病態です。

糖質は、コカインよりも依存症になりやすいという報告も

甘い飲み物を飲むと、血糖値(血液の中にある糖の値)が急速に上がります。
すると、体の中で放出されるのがドーパミンです。快感ホルモンなので、あなたは幸せな気分になります。

一方で、血糖値を下げるために増えるのがインスリン。大量に放出されると血糖値が急降下して、また甘い飲み物がほしくなります。これを繰り返す状態が、「糖質依存症」です。

血糖値の上昇にともなうドーパミンの快感は一時的で、持続的な幸福感はもたらしません。ですから、甘い飲み物は麻薬と似ています。

実際に糖質は、麻薬のコカインよりも依存症になりやすいといわれているので、とりすぎには注意したほうがいいでしょう。

もしあなたが、「コーヒー大好き、それも甘いコーヒーが好き」というなら、あなたはコーヒー好きではなく、糖質依存症なのかもしれません。

コーヒーを飲みたくなったら、糖質を多く含む「甘いコーヒー」は避ける方がよく、「ブラックのコーヒー」を選ぶといいでしょう。

肥満や糖尿病などの病気につながる糖質依存症

糖質依存症になると、どうなると思いますか?
糖質のとりすぎは、肥満につながります。毎日1缶のジュースを飲むだけで、1年で5kgも太るとのこと。また、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの病気にもなりやすくなります。

さらには、甘い飲み物を飲み続けることで、脳梗塞や心筋梗塞、がんになる可能性も高くなります。このような病気になると、仕事に支障が出て、経済的な負担、家族への負担が増えるという事態になりかねません。

【起こりうる事態】
甘い飲み物を飲む
⇒血糖値の急上昇
⇒ドーパミンによる快感
⇒インスリンによる血糖値の急降下
⇒甘い飲み物がほしくなる
⇒これを繰り返す[=糖質依存症(中毒)]
⇒肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧
⇒脳梗塞、心筋梗塞、がん
⇒仕事が続けられない、経済的な負担増、家族の負担増

肥満は周囲にうつる?

そうはいっても、「家族みんな、甘い飲み物が好きなので」という方もいるかもしれません。そうであれば、家族で相談して「家には、甘い飲み物を置かない」というルールを作りましょう。

肥満の人がいれば、その身近の人も肥満になりやすくなることが報告されています(※1)。「甘い飲み物を常飲する」ような太る習慣は、身近な人と共有することが多いので、「肥満は周囲にうつる」のです。

※1:Christakis NA, Fowler JH. N Engl J Med. 2007;357(4):370-379.

毎日の飲み物は、お茶か水にしましょう

20代・30代の方は、生活習慣が悪くても病気になりにくいため、今は問題ないかもしれません。しかし、その習慣を続けてしまった場合は、いずれ上記のような事態になる可能性が高くなります。
したがって、早いうちから良い生活習慣を身につけることが大切です。

甘い飲み物は、「たまに飲むだけ」「食が進まないときだけ」「下痢があるときだけ」というなら問題ありません。でも、毎日、甘い飲み物を常飲するのはとても危険です。

将来の健康のために、「甘い飲み物は家に置かない」「買うときは、お茶か水を選ぶ」などの工夫を行い、毎日の飲み物は、お茶か水だけにしましょう。

【岡田定医師連載「あなたの人生の主治医はあなた」】
第1回 人の一生と生活習慣病
そのほか、岡田定先生記事はこちら

プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部