読む、えいよう

肉の上手な選び方・付き合い方

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第21回(文・岡田 定 医師)

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働き盛りの40代のあなたは、ひょっとして「肉大好き人間」ではないでしょうか。「肉を食べると元気になる。テレビでも元気なお年寄りが肉をもりもり食べていた。私もどんどん肉を食べるぞ」と思う方もいらっしゃるでしょう。

でも、待ってください。豚肉や牛肉、加工肉の食べ過ぎは健康によくないのです。

肉の食べすぎによる健康リスク

世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、「赤い肉(豚肉や牛肉)にはおそらく発がん性があり、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)には発がん性がある」と報告しています(※1)。

懸念されるのは、がんだけではありません。加工肉を多くとるほど、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率も高くなります(※2)

豚肉や牛肉、加工肉をとり過ぎると、がんの発症を高め、動脈硬化を進めて心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。そうなると以下のような事態になります。

肉食が多い ⇒ がん、心筋梗塞、脳梗塞
⇒ 命の危険、半身不随、通院治療
⇒ 仕事が続けられない、経済的な負担、家族の負担

もちろん、肉を食べたからといって必ずがんや心筋梗塞、脳梗塞になるわけではありません。「毎日、肉三昧」のような食生活はいけないということです。

特にがんの発症という面で見ると、肉を食べるなら赤い肉(牛肉や豚肉)よりも白い肉(鶏肉)の方が健康的です。鶏肉の摂取量が多いほど大腸がんのリスクは低くなります(※3)。

食べるならほどほどに

牛肉も豚肉も食べてはいけないわけではありません。食べ過ぎがいけないのです。ただ肉を食べるときは、脂身はなるべく避けるようにしましょう。肉の脂身には飽和脂肪酸が多く、動脈硬化の原因になるLDL(悪玉)コレステロールを増やすからです。

肉はたんぱく質の代表的な食品ですが、たんぱく質をとるなら、肉よりも魚や大豆の方がずっと健康的です。魚の摂取量が多いほど死亡するリスクが低いと報告されています(※4) 

元気そのものである40代のあなたは、「肉は元気の源、肉をもりもり食べるのが健康的」というイメージをもっておられるかもしれません。でも牛肉や豚肉、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)はほどほどにしましょう。

昼食のおすすめは魚の和定食

お昼ごはんを外食にするなら、肉料理よりも魚料理、一品料理よりも定食、洋食や中華よりも和食がおすすめです。塩分を減らした和食は、地中海食と並ぶ世界的な健康長寿食です。ですので、「昼食は何にしようかな?」と迷ったら、「魚の和定食」を選ぶようにしましょう。野菜たっぷり、塩分控えめ、玄米ご飯の「魚の和定食」なら最高です。

豚肉や牛肉、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉、白米、パスタ、ジャガイモ、バターなどに含まれる飽和脂肪酸は、健康によくないと科学的に証明されています。

一方、魚、野菜、(適量の)果物、玄米や全粒粉のパン、オリーブオイル、ナッツ類は、健康によいと科学的証明されている食品です。

健康面を考えるなら、「動物性のものより植物性のもの」、「肉より魚」、「加工食品や精製食品より丸ごと食べられるもの」ということになります。

スーパーマーケットでは野菜からかごに

ところで、スーパーマーケットで食品を購入するとき、どのような食品から買い物かごに入れていますか。まずは最初に野菜をかごに入れる習慣をつけましょう。

40代のあなたに最も不足している食品は、おそらく野菜です。ですから、野菜をもっと食べる工夫が必要です。そのひとつが、スーパーで買い物をするときには、野菜からかごに入れる習慣です。

あなたのスーパーマーケットでのデフォルト行動を、「野菜からかごに入れる」と決めてしまうのです。それが、のちのち、あなたの命を生かす習慣になります。

ダイエット中の女性や高齢者は肉を積極的にとりましょう

前述したように、多くの人にとって、豚肉や牛肉はあまり健康的な食品ではありません。しかし、例外があります。ダイエットをしている若い女性と高齢者です。

ダイエットをしている若い女性や食が細くなった高齢者には、肉はとても大切なたんぱく源になります。

ダイエットをしている20代や30代女性のほとんどは、肉、魚、大豆製品などのたんぱく質が不足しています。この飽食の時代にあって、若い女性には栄養失調が少なくないのです。健康を維持するためには、肉も魚ももっと必要なのです。もしあなたが40代、50代でも、あまりにスリムでたんぱく質不足なら、肉ももっととったほうがいいでしょう。

80代、90代の多くの高齢者は、食が細くなりタンパク質が不足しがちです。運動不足で筋肉も衰えがちです。「食が細い、運動不足⇒筋肉が衰える⇒体力が低下する」という悪循環に陥りやすいのです。肉を含めたタンパク質がもっと必要です。「テレビで元気なお年寄りは肉をもりもり食べている」というのは、その通りなのです。

あなたもお肉を「賢く摂れる人」になりましょう。豚肉や牛肉、加工肉はほどほどにして、鶏肉を主にしましょう。ダイエットをしている若い女性や高齢者は、もっとお肉を摂りましょう。

※1 Lancet Oncol.2015 Dec;16(16):1599-600. doi: 10.1016/S1470-2045(15)00444-1. Epub 2015 Oct 29.)
※2 Public Health Nutr. 2016 Apr;19(5):893-905. doi: 10.1017/S1368980015002062. Epub 2015 Jul 6. )
※3 Eur J Nutr. 2015 Mar;54(2):243-50. doi: 10.1007/s00394-014-0705-0. Epub 2014 May 1)
※4 Eur J Clin Nutr. 2016 Feb;70(2):155-61. doi: 10.1038/ejcn.2015.72. Epub 2015 May 13.)

【岡田定医師連載「あなたの人生の主治医はあなた」】

第20回すべての病気は「未病」から始まる
第19回 抜け出せない飲酒習慣から抜け出す方法
第18回【将来の健康のために】健診結果表の正しい読み方・使い方

そのほか、岡田定先生記事はこちら

プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部