

日々の生活のこと、治療のこと、仕事のこと、将来のこと・・・潰瘍性大腸炎とともに生きる患者さんの体験談を紹介します。


35歳のとき、下痢や血便などの症状が出て、消化器内科クリニックで検査を受けたところ、潰瘍性大腸炎と診断された。重症だったため、総合病院で治療を受けていたが症状が改善されず、炎症性腸疾患センターがある大学病院に転院。治験に参加するなど積極的に薬を変更しながら治療を続けてきた。そのかいあって発症から12年経過した現在は、寛解には至っていないものの安定した状態が続いている。

今から12年前、腹痛と下痢、血便が続いたことがありました。母に私の便を見せたら「これは痔の出血とは違う」と言われ、消化器内科クリニックを受診。大腸の内視鏡検査を受けた結果、全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断されました。かなり重症とのことで、そのクリニックで治療は受けずに紹介された総合病院を受診しました。
実は診断される数年前、20歳代の同僚が潰瘍性大腸炎で入院し、お見舞いに行ったことがありました。それで病名は知ってはいましたが、まさか私が同じ病気になるなんて…。
とはいえ、診断されたときは、お腹の不調の原因がわかってほっとしたのを覚えています。主治医には「難病だけれど、自分に合った薬が見つかれば寛解を維持できる」と言われました。でも突然良くなる人もいれば、悪くなる人もいると言われ、この先自分はどうなってしまうのか、不安にもなりました。



総病院で処方された薬ですぐに効果が出て、軽症になったものの、1カ月ともたずに再び悪化。2年後に入院することになりました。ステロイドで炎症は抑えられたのですが、退院してからまた悪化してしまいました。
その後、総合病院から大学病院の炎症性腸疾患センターを紹介され、転院しました。体重はすでに15kgも減っていました。

大学病院では治験に何回か参加する機会に恵まれました。食べられずに体力がなくなる、貧血で倒れてしまう、トイレに間に合わない、仕事を休んでしまうといった最悪の状態からとにかく抜け出したい一心で、積極的に治験に参加し、あらゆる種類、あらゆる形態の薬を試しました。治療効果が上がらないときは落ち込み、気を取り直しては次に期待するといった状態が続きました。

ステロイドは総合病院で使っていましたし、大学病院に転院してからも先生の意向で使ったことはありました。確かにステロイドを使うと元気になって仕事にも行けたのですが、ムーンフェイスになり、手を握れないほど強いむくみが出て、それがつらくてもうこれ以上ステロイドは使いたくないと思いました。それで先生と話し合ってステロイドの使用はやめると決め、数年前からは使っていません。
そんな中、治験の薬がよく効き、かなり状態が良くなりました。残念ながら当時はまだ承認されていない薬だったので使い続けることができませんでしたが、それ以降軽症状態が続いています。
今現在はサリチル酸製剤のみの治療で落ち着いています。仕事でストレスがかかったときなどは悪化することもありますが、悪い状態が長引くことはありません。

大学病院に転院してから主治医はずっと同じ先生です。先生はいつも私の話をじっくり聞いてくれて「それはつらかったね」と寄り添ってくれます。また新しい薬が出るたびに効果と副作用について詳しく説明してくれて、どんどん治療の選択肢を広げてくれます。先生を心から信頼しているので、私も積極的に治療にのぞむことができました。

受診時は私の母が付き添ってくれることが多かったのですが、母が心配のあまり「先生、なんとかならないのでしょうか!?」などと感情的になってしまうときも、先生は「お気持ちはわかります。一緒に頑張りましょう」、「最善を尽くします。何でもおっしゃってくださいね」と優しい言葉をかけてくれました。お陰で母は先生の大ファンです(笑)。


当時の仕事は激務。ストレスがかかって精神的にもかなりダメージを受けました。考えてみれば、そんなときに潰瘍性大腸炎を発症したように思います。脳と腸は関係しているという話を聞きますが、まさにそれを実感しており、病気を防ぐには腸だけでなくストレス対策も重要だと思っています。

これまで総合病院と大学病院で1回ずつ入院しましたが、そのたびに半年ほど休職。復帰しても体調が悪くなればまた休む、の繰り返しでした。職場の理解は得ており「体調を優先して」と言われています。体に負担がかからない部署に異動させてもらい、仕事を続けてくることができました。負担がかからないポジションなので、休みがとりやすいのはありがたい反面、キャリアアップを目指す状況ではなくなってしまいました。

職場の懇親会や飲み会が大好きだったのですが、参加してもあまり食べられず、お酒も少量しか飲めないので前のようには楽しめません。だんだん飲み会に参加しなくなり、周りからも誘われなくなったのは残念だなと思っています。

休職するたびに実家で過ごしていました。母は私のためにお腹に優しいメニューを家族とは別に用意してくれました。私がトイレを占領しても誰も文句を言いません。実家が大学病院に近いこともあり、両親やきょうだいが通院に付き添ってくれ、治験などの説明も一緒に聞いてくれたので心強かったですね。私は家族に支えられて病気と闘っていると思っています。
今はパートナーと一緒に暮らしています。一人暮らしのときは、体調が悪いと通勤だけで疲れてしまい、仕事から帰ってきたら食事もまともにできない状態でしたが、今はパートナーが「大丈夫?」、「食事はとれる?」、「薬は飲んだ?」などと言葉をかけてくれたり、私の代わりに料理をしてくれたりしています。そばで気づかってくれる人がいるだけで精神的にだいぶ違いますね。実際に一人暮らしのときよりも今は体調が良く、1日3食とれるようになっています。
ただトイレのことが気になって遠出や旅行はできません。パートナーも私が健康なら、きっといろいろ一緒にやりたいことがあるでしょうに、それを我慢しているのではないかと思うと申し訳なく思っています。

私の場合、最初に治療を始めた総合病院から「当院ではここまでしかできませんが、〇〇病院ならこういう治療ができますよ」と他院の情報を提供してもらえました。その結果、大学病院に転院し、いろいろ薬を変更しながら今の軽症状態までこぎつけることができました。寛解に至るためには、自分に合う薬と出会えるか否かが決め手になります。同じ病院で治療を続けても良くならなかったら、自分で他の病院の治療内容を調べたり、治療を受けている病院で情報提供してもらうのも1つの方法だと思います。
※本記事は個人の方のお話をもとに構成しており、治療方法などの内容がすべての方に当てはまるわけではありません。