読む、えいよう

管理栄養士が伝授「部活めしのカギはとり方と補食」

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月刊おいしい健康3月号で掲載中の川端理香先生監修のレシピ

運動部に所属している中高校生にとって、日々の食事は、試合の勝敗を決める大切な原動力。しかし、正しい知識に基づいて、食事をとらないと、結果的に後悔することも。

スポーツ栄養のプロである川端理香先生にジュニア選手の食事と栄養についてお伺いしている今回の特集。【前編】では、タッパ飯や1品ダイエットなどジュニア選手に広まっている誤った食事法についてお聞きしました。【後編】では、ジュニア選手に良いとされる食事のとり方について解説していただきます。

プロフィール:
川端理香 先生
管理栄養士。元日本オリンピック委員会強化スタッフ。昭和女子大学非常勤講師。日本代表やJリーグプロサッカーチーム、Vリーグバレーボール、Bリーグバスケットボール、プロ野球、プロゴルフなど、多くのプロや代表などのトップアスリートをサポート。主な著書には「筋肉の栄養学」(朝日新書)、「今すぐ使える ジュニアアスリートの栄養食事学」(ソーテック社)「10代スポーツ選手の栄養と食事」(大泉書店)など多数。一般を対象にした講演などの食育活動や執筆、レシピ開発、企業の栄養アドバイザーも務める。
【部活めしのここがポイント!】
① 朝食抜きはNG!たんぱく質とEPAをしっかり摂る
② 補食は部活後30分以内の摂取が理想。おにぎりの具材に工夫を
③ 鉄器の日常使いで脱・鉄不足
④ 夕食が遅くなる場合は量を少なめに。その分、朝食で補充

➖➖中高校生というと、特に朝食を抜かしがちなお子さんについての悩みを親御さんから聞きますが、その点はどのように指導なさっていますか。

川端先生:痩せたいから、わざと食べないという選手やコーチに対しては、朝ごはんを食べて体をリセットしないと、逆に太りやすくなるといった栄養指導をします。朝ごはんにたんぱく質をとると肥満の予防になり、結果、体脂肪は少なくなります。また、朝に魚の缶詰やEPAいり魚肉ソーセージなど、たんぱく質とEPA(エイコサペンタエン酸)をとることによって体内時計をリセットする力が強まるといわれています。

➖➖おすすめの補食として具だくさんおにぎりを推奨していますが、それはなぜでしょう。

川端先生:運動直後の30分以内で、できるだけ早く食べたほうが良い栄養素は糖質とたんぱく質で、体にエネルギーを回復させ、破壊された筋肉などの修復をうながします。

こうしたことから、私は運動直後の補食におにぎりをすすめています。糖質に加えて、具材でたんぱく質やカルシウムや鉄などがとりやすいからです。また、同じごはんの量をとりいれるにも、1度に食べるか、複数に分けて食べるかで身体への吸収もかわります。当然のことながら、一度にどか食いを強いられるタッパ飯より、分けて食べるほうが無理なく体に吸収でき、結果、体脂肪のつきにくい体となります。

あとは、ジュニアの食事は保護者が作ることが主なので、その保護者の負担になりにくいという点でもおにぎりは良いですね。

➖➖炭水化物やたんぱく質、カルシウムというのは比較的とりやすいイメージがありますが、鉄はどのように補強するのが望ましいですか?

川端先生:2022サッカーワールドカップに出場した田中碧選手もインタビューで語っていたことがありますが、鉄で作られた調理器具を使うことをおすすめします。鉄器で調理した料理からは、吸収が良い鉄をとりやすいので。少し高額でも、一度買ってしまうとずっと使えるのでおすすめです。

あと、保護者の方も、鉄となるとすごくハードルの高い栄養素のように感じられるようです。鉄が豊富な食材は比較的価格が高い、調理にも手間がかかるといった印象がありますよね。でも、それもルーティンとして考えてみるのはいかがでしょうか。例えば、吸収の良い焼鳥のレバーを週に1回とりいれる。納豆などの吸収の悪い鉄はとりやすい傾向があるので毎日等、工夫することはできると思います。

➖➖あとは部活動をやっていると、どうしても夕飯をとるタイミングが遅くになってしまうという悩みもよく聞きます。

川端先生:夕食は早い時間にとれたらそれが一番の理想ですが、練習で帰りが9時を過ぎるということもありますよね。そういう日は、朝食と昼食を多めにとって、部活動を終えた直後に補食をとり、夕食の量は控えめにすると良いでしょう。

一番良くないのが何も食べないまま寝てしまうことです。そうすることで、エネルギーを確保できず、消耗した筋肉を回復することができなくなってしまうからです。逆に遅いタイミングで消費しきれない量の夕食をとってしまうと、慢性疲労の原因になります。なので夕食が遅くなるなら量を少なめにしましょう。その分、次の日の朝食の量を多めにして、補充するようにするとバランスがとれます。

➖➖先生から見た強い選手の食生活における共通点はありますか。

川端先生:たまに例外もありますが、基本的には、食べるのが好きな選手が多い印象です。暑い中で相当量の練習をこなしたあとでさえ、ペロッと食事ができる選手は本番にも強いです。逆に食事や栄養に関してものすごく勉強して、理論だけ詰め込み過ぎてしまうような選手は不思議と伸び悩んでしまうことも。頭でっかちではないほうが、スポーツ選手は大成しやすいというのもありますね。

あとはやっぱり、自分の体を知るということはとても大事です。たとえば、食物繊維が体に良いと言われていても、吸収力には個人差があるので、たくさんとっても大丈夫な選手と、逆にお腹を壊してしまう選手がいます。

体に合う食材、合わない食材も当然あります。アスリートは吸収面や練習量で個人差が出てくるので、自分の体を知るために食べる量ももちろん大事ですが、排便の状態をよく観察しなさいとも伝えますね。もともと排便が1日に2回の選手と、1日に1回の選手がいるように、何が良いコンディションかはその人によります。ジュニアは比較的、食べてすぐトイレへ行く選手が多いのですが、毎回行くようであれば、エネルギーを確保しにくいので、そこでエネルギー量や栄養素を調整するといったことを行います。

▼川端理香先生監修の部活めしレシピが満載!月刊おいしい健康3月号はこちらから 2920

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士
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