シンデレラ体重とは？幻想と健康リスク

公開日: 2023年7月19日

【連載】あなたの人生の主治医はあなた　第25回（文・岡田定医師）

「痩せている方が美しい」「モデルのようなスラっとした見た目になりたい」と思っている女性の方もいるのではないでしょうか。しかし、あなたの憧れる体型は「シンデレラ体重」と呼ばれ、いま健康面が問題になっています。

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シンデレラ体重は栄養失調状態

シンデレラ体重とは、SNSで10〜20代の女性を中心に広がった言葉で、自分の身長に対してモデルのように痩せて美しくみえる体重を指します。シンデレラ体重が「理想の見た目」と信じ、ハードなダイエットをする人も多くいます。

BMI(体格指数)の計算方法

適正な体重を評価するための指標として、BMI(体格指数)というものがあります。体重(㎏)と身長(m)を使って計算します。

BMI＝体重÷身長÷身長
痩せ…18.5未満
普通…18.5〜25
肥満…25 以上

【例】身長160cmで体重が46kgの方の場合

BMIは46(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)＝18　になります。

この数値は「やせ」にあたりますが、最近の多くの女性がこの「やせ」＝シンデレラ体重と考えて目標としてしまっています。BMIの数値が18.5以上になるには、体重は47kg以上が望ましいというわけです。

ちなみに病気になりにくい平均体重は以下の計算式を用いて算出します。
身長（m）×身長（m）×　22　

160cmの人の平均体重は56kgです。では、シンデレラ体重(痩せの状態)だった場合、何がいけないのでしょうか？

シンデレラ体重の未来は体調面でのトラブルが待っている

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もし、あなたがシンデレラ体重を目指していたら、また今シンデレラ体重であったら、未来にはさまざまな体調面でのトラブルが起きる可能性があります。

まず、低体温症になって何となく体調不良になります。肌や髪のトラブルが増えてきます。見た目はスリムでも、隠れ肥満(筋肉が減って体脂肪に置き換わる状態)になり、骨密度も減少します。そうすると、将来、糖尿病や骨粗鬆症、骨折を起こしやすくなります。

【起こりうる症状】
痩せ型(シンデレラ体重)
⇒ 低体温症、体調不良、美容トラブル
⇒ 隠れ肥満、糖代謝異常、サルコペニア(筋肉減少症)
⇒ 糖尿病、骨粗鬆症、骨折

栄養失調が続くと、糖尿病、骨粗鬆症、骨折を起こしやすくなる

シンデレラ体重は月経不順や不妊、将来の子どもにも影響する

シンデレラ体重だと、月経不順や不妊も起こりやすくなります。もし妊娠したとしても、やせすぎの人から生まれた赤ちゃんは、体重の少ない低出生体重児の可能性が高くなります。また、それだけではありません。小さく生まれた赤ちゃんは、成人になったときに身長は低めで糖尿病や高血圧になりやすくなると言われています。(DOHaD学説)

あなたがやせていることは、あなた自身の健康だけでなく、あなたの子どもや孫の健康にも影響を及ぼすことになるのです。

DOHaD学説生活習慣病胎児期発症起源説/日本産婦人科医会

【起こりうる症状】
シンデレラ体重 ⇒ 低体温、体調不良、美容トラブル
⇒ 月経不順、不妊
⇒ 低出生体重児
⇒ 低出生体重児が成人になると糖尿病、高血圧を発症
やせた妊婦の低出生体重児は、将来、糖尿病、高血圧になりやすい

健康のためにも、朝食を食べて、十分なたんぱく質を摂ろう

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シンデレラ体重を目指したり、やせた状態をキープしたいがために、朝食を抜いたり、昼食をサラダだけですませていませんか？大切なのは、やせることよりも、まずは健康であること。そのためには、朝食をきちんと摂るように心がけてください。そして、もっとたんぱく質を摂りましょう。タンパク質というと、肉、魚、大豆製品、乳製品、卵です。昼食は、おにぎりとサラダだけでなく、ゆで卵や納豆、さばなども加えるといいでしょう。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準　2020」によると、一日に必要なたんぱく質の理想は以下の通りです。

18～49歳は摂取エネルギーの13～20%
50～64歳は摂取エネルギーの14～20%
65歳以上は摂取エネルギーの15～20%

推奨量は、18～64歳の男性は一日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は一日50gとなっています。

厚生労働省　日本人の食事摂取基準2020 たんぱく質

シンデレラ体重を目標にすることよりも、健康な体重で病気になりにくい体づくりを目指すことをおすすめします。

【岡田定医師連載「あなたの人生の主治医はあなた」】

第24回「氷を無性に食べたい」という氷食症の原因は鉄欠乏
第23回高齢者の貧血　消化器がんやビタミンB12不足が原因かも？
第22回毎日つづく不安やプチうつ、原因は鉄不足かも？～隠れ貧血と鉄欠乏性貧血～

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プロフィール：現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田定先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。