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食事のタイミングで栄養の吸収が変わる?注目の「時間栄養学」を解説:朝食編

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撮影:鈴木泰介、スタイリング:しのざきたかこ

月刊おいしい健康10月号」第1特集では、時間栄養学に基づく管理栄養士考案のレシピを提案しています。
時間栄養学とは文字通り「時間」と「栄養」、もしくは「時間」と「食事」の関係を考える学問のこと。
「いつ」「何を」「どれだけ」食べるかで、より効率的に栄養がとれたり、糖尿病や高血圧の予防にもなるんです。

今回は、そんな時間栄養学について早稲田大学 先進理工学研究科電気・情報生命専攻薬理学研究室教授の柴田重信先生にお話を伺いました。

食事のタイミングを考える学問「時間栄養学」とは?

柴田先生は「私個人では時間栄養学ではなく、時間『食事』学と言いたいくらい、時間と食事の関係は大事」とおっしゃいます。

「時間栄養学は『体内時計』と『食事』、両方に着目し、神経や内臓の働きのリズムに合わせた効率的な食事とは何かを研究する学問。 体内時計を整えることはとても重要で、これを無視した生活を続けていると、将来うつや感染症にかかりやすいといわれています(※1、2)」

体内時計を整えるには「朝」が重要

「体内時計とは、朝は活動に備えて体の調子を上げ、夜は休息の状態に心身を切り替える働きをいいます。

そのために大切なポイントは、
①しっかり睡眠をとる
②朝起きたら窓を開けて日光を浴びる
③きちんと朝食を食べる
こと。

ただ、現代人はこの3つができておらず、体内時計がズレている人が多くいます。

とくに③の朝食は、“時間がない”、“お腹が空いていない”などの理由から食べていない方も多いですね。これは体内時計がズレるだけでなく、脳のエネルギー源となるブドウ糖が足りなくなる原因にもなります。 そうなると午前中、頭が働かずにボーッとしてしまうので、勉強や仕事の効率にも影響してしまいます。

加えて、低血糖の状態が続くため、昼食時に血糖値が急上昇しがち。これを続けていると体に負担がかかり、糖尿病や高血圧に繋がることもあるので、きちんと朝食をとる習慣をつけることは、健康面においても大切なことといえます」

朝食のポイントはたんぱく質をとること

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撮影:鈴木泰介、スタイリング:しのざきたかこ

「朝食はパンやおにぎりだけ、野菜ジュースだけという方も多いと思います。
それでも食べないよりはいいのですが、ぜひそこにたんぱく質を追加してほしいですね。

たんぱく質は肉や魚、牛乳などの乳製品、卵、豆腐などの大豆製品に多く含まれています。
なかでも私のおすすめは魚と牛乳、そして納豆です。

魚はたんぱく質のほかに良質な脂も入っていて、この脂に含まれるDPA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、体内時計のズレを整える作用があります。

ただ、魚料理は焼いたりなど手間がかかり大変なこともあるので、私は缶詰をおすすめしています。
私はよくツナ缶を使うのですが、サラダやサンドイッチなどにして取り入れてみてはいかがでしょうか。もちろん、サバ缶などほかの種類の缶詰でも問題ありませんよ。

牛乳は飲むだけで手軽にたんぱく質がとれますし、カルシウムも入っているので筋肉と骨の維持に働きかけてくれます。いつもの食事に、牛乳を1杯プラスするはいかがでしょうか。

また、納豆は大豆製品であり良質なたんぱく質です。食物繊維もとれるので、血糖値の急上昇を抑えてくれます。

朝と夕に同じ量のたんぱく質を取ったところ、朝とったほうが筋肉量が増えたという報告もありますので(※3)、筋肉を効率よくつけたい方や、高齢者で筋力低下している方などにも効果的といえるでしょう」

朝はトマトもおすすめ

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「たんぱく質以外にも野菜をとることも、もちろん大切。中でも、私はトマトをおすすめしていて、トマトにオリーブオイルをかけてよく食べます。

なぜトマトがいいかというと、肝臓で作られる脂肪の消化を助ける液体『胆汁』に関係があります。
胆汁は朝にたくさん出るのですが、その働きでトマトに含まれるリコピンの吸収率が朝に最も高まるからです。さらに、リコピンは油に溶けやすい性質があるため、オリーブ油と合わせて食べることで、より効率的に摂取することができます。

リコピンは抗酸化物質で、朝にとると日中の酸化物質から守ってくれる働きもあるため、紫外線が強い時期にもおすすめですよ」

まずは朝食の欠食をなくすことから始めよう

「私は大学で講義をするときは午前中にすることが多いのですが、朝に講義に出ても中には朝食を食べてこない学生もいます。そうするとしっかり聞いているようで、頭に入っていない。テストの成績も悪くなってしまうんですね。

体内時計を整え、きちんと食事をすることは勉強や仕事の効率をよくすることにも繋がります。
まずは抜きがちな朝食をしっかり食べて、体内時計を正常に戻す一歩にしてみましょう」

Part1の今回は食事と体内時計の関係、そしておすすめの朝食について紹介しました。
次回のPart2の記事では引き続き、柴田先生に昼食と夕食の食べ方のコツを伺います。

月刊おいしい健康10月号」第1特集では時間栄養学に基づき、料理研究家の市瀬悦子さんに考案いただいたレシピを紹介しています。 朝食におすすめのレシピはこちら。

朝食に ミルクフレンチトースト
食パンにたっぷりの牛乳を吸わせ、卵は絡めながら焼くことで、浸す時間をカット。濃厚でふわふわな仕上がりになりますよ。
納豆とアボカドのオリーブポン酢丼
ツナ缶など食材をのっけるだけの簡単丼。さっぱりとしたぽん酢しょうゆに、わさびのツンとした辛さがアクセント。

そのほかのレシピはぜひ、こちらをご覧ください。

※1 Shiftwork-Mediated Disruptions of Circadian Rhythms and Sleep Homeostasis Cause Serious Health Problems. Khan S, Duan P, Yao L, Hou H.Int J Genomics. 2018 Jan 21;2018:8576890. doi: 10.1155/2018/8576890. eCollection 2018.PMID: 29607311 Free PMC article. Review.

※2 Does the compromised sleep and circadian disruption of night and shiftworkers make them highly vulnerable to 2019 coronavirus disease (COVID-19)? Silva FRD, Guerreiro RC, Andrade HA, Stieler E, Silva A, de Mello MT.Chronobiol Int. 2020 May;37(5):607-617. doi: 10.1080/07420528.2020.1756841. Epub 2020 May 20.PMID: 32432519 Review.

※3 Supplementation of Protein at Breakfast Rather Than at Dinner and Lunch Is Effective on Skeletal Muscle Mass in Older Adults. Kim HK, Chijiki H, Fukazawa M, Okubo J, Ozaki M, Nanba T, Higashi S, Shioyama M, Takahashi M, Nakaoka T, Shibata S.Front Nutr. 2021 Dec 21;8:797004. doi: 10.3389/fnut.2021.797004. eCollection 2021.

監修:早稲田大学 先進理工学研究科電気・情報生命専攻薬理学研究室教授
柴田重信 先生
1953年生まれ。1976年 九州大学薬学部薬学科卒業。1981年同大大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より現職。日本時間栄養学会会長などを務める。著書に『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(講談社)、監修書に『おにぎりと味噌汁だけ - ほぼ10分で完成! 食べて健康になる朝食献立』(ワニブックス)など多数。

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編集:おいしい健康編集部
監修:早稲田大学 先進理工学研究科電気・情報生命専攻薬理学研究室教授 柴田重信先生
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