【妊娠の基礎知識①】妊娠のしくみと出産までの体の変化
公開日: 2025年12月15日

監修:よしかた産婦人科院長 善方裕美先生
はじめて妊娠した方や「もしかして妊娠したかも?」と思ったとき、体に何が起こっているのか、これからどう変化するのかを知っておくと心の準備ができます。この記事では、妊娠が成立するしくみや妊娠のサインと確認方法、出産までの体の変化について、わかりやすく解説します。
この記事のポイント
・妊娠がわかったら、届出と定期的な妊婦健診が大切
・お産の進み方や出産までの流れを知っておこう
妊娠のしくみと体に現れるサイン
妊娠するまでの受精と着床のプロセス
妊娠は、女性の「卵子」と男性の「精子」が出会い、受精して子宮に着床することではじまります。
①性交:射精された精子が子宮を通って卵管に進みます。
②排卵:卵子は月に1回、卵巣から排出されます(月経周期が28日の女性では、月経開始の前日から数えて12〜16日前に排卵が起きます)。
③受精:卵子と精子が出会い、受精卵になります。
④着床:受精卵は子宮に移動し、子宮内膜に着床します。→妊娠の成立
卵子の寿命は約24時間、精子は約72時間。その間に出会うタイミングが合うことで受精卵となり、受精卵が着床してはじめて妊娠が成立します。
妊娠週数や出産予定日の数え方は?
最終月経開始日を「0週0日」として妊娠週数を数え、妊娠40週目が出産(分娩)予定日になります。妊娠週数・月数を自動計算できるサイトもあります。(厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト内)
体調に現れる「妊娠のサイン」
妊娠が成立してすぐに、体にはっきりした症状が現れるとは限りませんが、規則正しい月経が1週間以上遅れていたり、妊娠初期のような症状が見られたりしたら、市販の妊娠検査薬で確認してみましょう。
【妊娠初期に見られる症状】
以下のようなことは妊娠初期に現れる一般的な変化ですが、すべての人にあてはまるわけではありません。
・吐き気がする、ムカムカする
・だるい、眠い
・体が熱っぽい
・イライラする
・食の好みが変わる
・胸がはる
・便秘
病院での妊娠の確認方法
市販の妊娠検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診して妊娠を正式に確認してもらいます。経腟超音波検査を行い、以下のことを確認します。
・子宮内に胎嚢(赤ちゃんが育つ袋)が確認できる(妊娠5週頃)
・赤ちゃんの心拍が確認できる(妊娠7週頃)
妊娠がわかったら、何をすればいい?
妊娠が確認できたら届出を
妊娠が確認できたら、できるだけ早く住民登録をしている市区町村の役所や保健センターで妊娠の届出を行います。母子手帳や妊婦健診の受診券などをもらうほか、妊娠中の相談窓口や母親学級・両親学級の紹介など、出産までの情報を得られます。

出産する施設探しも早めに行いたい
出産する施設は、妊娠中のできるだけ早い時期に探しておきましょう。病院やクリニック(診療所)、助産所があり、施設によって提供する医療やケア、サービス、費用は異なります。
厚生労働省が運営する「出産なび」では、地域や詳細条件を設定し、出産を取り扱う病院、産科/産婦人科クリニック(診療所)、助産所(助産院)を検索することができます。施設ごとの詳しい情報(助産ケア、付帯サービス、費用)も確認できます。
里帰り出産をするかしないか、どのような出産(自然分娩や無痛分娩などの分娩方法)をしたいかなどを考えながら、家族やパートナーと相談して施設選びをしましょう。
職場への報告について
働いている場合、妊娠がわかったら直属の上司には出産予定日や休業の予定を早めに伝えておくのがベター。その方が体に負担のかかる業務の調整などの相談がしやすくなります。 また、つわりがひどい場合や切迫流産(流産になりそうな状態)などで療養が必要な場合は、医師に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらい、職場に提出することで必要な対応をとってもらえる制度もあります。

妊娠中の体の変化
出産までの時期別の体調・赤ちゃんの変化
妊娠中のつわりや体調の変化への不安もあるかもしれませんが、赤ちゃんが成長している証でもあります。 時期別の体調の目安や赤ちゃんの成長段階を知っておき、気になることがあれば、医師や助産師に相談しながら、安心して妊娠生活を送りたいものです。
1.妊娠初期(4〜15週)
・月経が止まり、つわりやだるさ、眠気などの症状が現れることも。
・ホルモン変化のせいで気分が不安定になる妊婦さんもいます。
・赤ちゃんは人の形になり、心臓や脳などが形成されています。
妊娠5〜6週頃から「つわり」が始まることがあります。吐き気や食欲不振、においに敏感になるといった症状が多く、12〜16週頃に落ち着くことが多いとされています。つわりがひどい場合(妊娠悪阻)は、脱水や体重減少を引き起こすことがあるため、医療機関を受診しましょう。
2.妊娠中期(16〜27週)
・つわりが落ち着き、体調が安定してきます。安定期とも呼ばれます。
・お腹が目立ち始め、胎動を感じるように。
・赤ちゃんは急速に成長し、性別判定も可能になる時期です。
3.妊娠後期(28〜40週)
・お腹が大きくなり、動悸・息切れ・頻尿などが起こりやすく。
・前駆陣痛(強い陣痛のような痛みがあるが、続かず終了する状態)が起こることもあります。
・赤ちゃんは出産に向けて体重を増やし、肺機能が成熟する時期です。
出産に備えて、分娩方法やお産の流れを確認
分娩方法は、母子の状態を優先して決めていく
分娩方法は、以下のような種類があります。分娩の方針(自然分娩、麻酔分娩など)においては自分の希望を伝えることもできます。 ただし、最終的な決定は、母子の状況によって医学的な判断のもと、医師の判断により母子の安全を最優先した方法で行われます。
🔳娩出部分の違い
・経膣分娩・・・産道を通り、膣から生まれる出産
・帝王切開・・・お母さんのお腹を切開し、赤ちゃんを取り出す出産
🔳分娩の状況の違い
・正常分娩・・・妊娠37〜41週の間に医学的な処置をせず、陣痛がきて平均的な時間で出産になること
・異常分娩・・・帝王切開や器械を使った分娩、早産分娩など正常分娩の状況以外の出産
🔳分娩の方針の違い
・自然分娩・・・自然な陣痛を待ち、出産する。助産師・医師が医療サポートをし、安全管理を行う
・麻酔分娩(無痛分娩)・・・麻酔で痛みを管理して出産すること
1:計画麻酔分娩:入院日を決めて陣痛促進剤を使って麻酔で痛みを管理
2:オンデマンド麻酔分娩:陣痛がきてから状態に応じて麻酔で痛みを管理
陣痛は「10分間隔で定期的にくる痛みが1時間以上続く」こと
陣痛は、出産に向けて子宮の収縮が強く起こること。定期的な痛みが10分間隔で1時間以上続くことが陣痛の定義とされています。 陣痛のような強い収縮があっても、続かずに一旦終了してしまった場合は「前駆陣痛」といいます。前駆陣痛があってもすぐ陣痛がくるわけではありませんが、心の準備をしておきましょう。
お産にかかる時間、進み方は人それぞれ
陣痛がきてから赤ちゃんが生まれるまでの分娩所要時間は、初産で12時間、経産で6時間という平均値もありますが、人によって異なります。 お産が進むにつれて、陣痛と陣痛の間隔が短くなり、子宮口が開いていきます。赤ちゃんは回りながらおりてきて産道を通り、頭から出てきます。赤ちゃんが誕生した後、胎盤が娩出されます。

出産後の体と生活について
産後の体の変化
出産後、お母さんの体は妊娠前の体にすぐ戻るのではないことを知っておきましょう。産後は母乳をつくる体に変わります。大きくなっていた子宮は元の大きさに戻っていきます。元の体に戻ったと感じるのは早い人で3ヶ月、一般的には6ヶ月くらいといわれています。
【産後の体に現れる変化の例】
・乳房がはり、母乳が出る
・悪露が出る(子宮壁から出る出血や粘膜、卵膜が混ざったもの)
・尿もれ(骨盤底筋という筋肉がゆるんで伸びているため)
・足のむくみ
産後1ヶ月までの過ごし方
産後は授乳やおむつ替え、沐浴など赤ちゃんのお世話がはじまります。産後1ヶ月間は、赤ちゃんのお世話だけを行い、無理をしないでお母さんの体を休ませることが大切です。出産前からパートナーの育児休暇や家族の協力などを相談し、赤ちゃんのお世話や家事を分担しておけるといいですね。
また、産後はホルモンバランスが変わることで精神的に不安定になることも。一過性で自然に治るものをマタニティブルーと呼びますが、気分の落ち込みが2週間以上続くときは産後うつの心配もあるので、医師などに相談しましょう。
まとめ
妊娠から出産まではさまざまな体の変化があります。そのため、定期的な妊婦健診でお母さんの体調と赤ちゃんの成長を見ていくことが大切です。次の記事では、妊婦健診をはじめ、妊娠中の健康管理についてご紹介します。
【妊娠の基礎知識②】妊娠中の健やかな過ごし方〜食事や生活のヒント〜

善方裕美先生
横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。国際出産イニシアティブ(ICI)認証の分娩施設「よしかた産婦人科」院長。母乳育児・自然分娩を基本に思いやりと触れ合いを大切にし、ママと赤ちゃん、ご家族にとって、幸せな出産と育児の実現を目指し、よりよい産科医療を提供するために医療技術のアップデートを重ねながら、日夜奮闘中。よしかた産婦人科スタッフとの共著「はじめての妊娠・出産あんしんバイブル」(日東書院)も妊婦さんから好評を得ている。
参考
「はじめての妊娠・出産あんしんバイブル」(日東書院)
厚生労働省 知っていますか?男性のからだのこと、女性のからだのこと
こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト「すこやかな妊娠と出産のために」
日本産科婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
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