【妊娠の基礎知識④】妊娠中のよくある質問Q&A
公開日: 2025年12月15日

監修・教えていただいた方:よしかた産婦人科院長 善方裕美先生
妊娠がわかると、毎日の生活の中で「これ、やっても大丈夫?」「これは控えたほうがいいの?」と妊娠中ならではの疑問や悩みが出てきます。この記事では、妊娠中によくある質問に対して、産婦人科医の善方裕美先生にお答えいただきました。
妊娠中の体のギモン


Q.つわりは防げますか?つらいときの対処法は?
A. つわりは妊娠初期に多くの人が経験する自然な症状で、原因ははっきりわかってはいません。そのため事前に防ぐことは難しいのですが、安静にしてゆっくり休むなどの軽減する方法はあります。
つらいときの食事は、無理なく食べられるものを選ぶようにします。空腹になるとつわりの症状が悪化することがあるため、こまめに軽く食べるのがポイント。
食べられなくても、水分は一口ずつでも継続的にとるようにして脱水を防ぎましょう。
症状がひどい、脱水や体重減少が激しい場合などは、医療機関に相談してくださいね。吐き気止めなどで改善する方法もあります。

Q.「さかご」だと言われたのですが、なおるのでしょうか?
A.さかご(骨盤位)とは、赤ちゃんの頭が上で、おしりが下にある状態のこと。妊娠20週台までは赤ちゃんはいろいろな向きで子宮の中に入っていますが、妊娠30週をすぎた頃から頭が下になります。ですが、さかごのままだと頭がつかえて、赤ちゃんに窒息などのリスクがあるため、帝王切開での分娩を選ぶことになります。
さかごをなおすためには、健診で確認しながら、医師の指示のもと「さかご体操」を試すことがあります(切迫早産と診断されている場合は除く)。また、「外回転術」という医師がお腹を触って赤ちゃんを回転させる方法もあります。

Q. 体重は増えすぎても、増えなくても良くないのでしょうか?
A.妊娠前の体格(BMI)ごとに体重増加量の目安が決められています。増加量が多すぎると妊娠高血圧症候群や帝王切開、逆に少なすぎると、低出生体重児分娩や切迫早産など、それぞれリスクがあるため、適切な範囲を意識しましょう。
体重の管理には、もともとの体格や個人差があるので、あまり神経質になりすぎないように。増えすぎた場合は栄養バランスの良い食事や、体を動かすことで調整できるとよいでしょう。
※体重増加量の目安、摂取エネルギー量などは「妊娠中の食事」ページも参照。
日常生活のギモン


Q.妊娠中に何を食べていいかがわかりません
A. 妊娠中の食べ物に関して、多くの情報を目にする今、食べてはいけないものを気にしすぎたり、食べても大丈夫か不安になったりするかもしれません。確かにお母さんの食事は赤ちゃんの体や成長に影響を与えますが、量や頻度などのとりすぎや調理法に気をつければ、絶対に食べてはいけないものはほとんどありません。
例えば、メチル水銀を多めに含む魚(きんめだい、めかじき、黒まぐろ、めばちまぐろ)などはとりすぎないようにいわれていますが、食べてはいけないのではなく、量を調整すればよいのです。
食事のエネルギー量や栄養素の量が気になる場合、これらが表示してあるレシピを参考にする方法も。これまで料理をする機会が少なかった方も、妊娠を機に料理の習慣をつけると、出産後の食事や離乳食作りなどにも役立ちますよ。
※食事に関しては「妊娠中の食事」ページ」も参照。

Q.妊娠中に薬を飲んでもいいですか?
A. 妊娠中は、薬の成分が赤ちゃんに影響を与える可能性があるため、自己判断での服用は避けましょう。治療のために薬が必要な場合や、妊娠中でも赤ちゃんや母体に影響のない薬もあります。市販薬も含め、薬の服用時は医師や薬剤師に必ず確認すると安心です。持病で治療中の方は妊娠がわかった時点で主治医に相談しましょう。

Q.妊娠中に車の運転やシートベルトの着用は大丈夫?
A 妊娠中の車の運転は可能ですが、体調がすぐれないときや眠気が強いとき、お腹がはるとき、お腹が大きくなる妊娠後期はできるだけ避けましょう。
シートベルトは、妊娠中でも母子の体を守るために必ず着用を。肩ベルトと腰ベルトを共に着用し、肩ベルトは胸の間を通してお腹の側面に通し、腰ベルトはお腹のふくらみを避け、骨盤のできるだけ低い位置を通すように装着すれば安全性が高まります。


Q.妊娠中に旅行に行ってもいい?
A. 妊娠初期は突然の出血やつわりが出ることもあるので、旅行に行く場合は、比較的安心とされている妊娠中期になるまで待つのがベター。妊娠中期でも体調の急な変化などもあるので、計画時の段階で医師や助産師に相談をしてください。
また、妊娠後期の長距離の移動はおすすめできないので、遠方での里帰り出産の場合は、妊娠中期のうちに。旅行時は母子手帳を忘れずに携帯しておきましょう。

Q.妊娠中、お父さん(パートナー)ができることは?
A 妊娠・出産はお母さん一人だけではなく、お父さん(パートナー)と共同で行うもの。パートナーができることは、例えば家事の分担や通院の付きそい、つわりの時の体調への理解、話を聞くことなどが挙げられます。今後の育児に向けて一緒に情報を学ぶ「両親学級」への参加や、職場で育児休業をとれる場合はその準備もしておくとよいでしょう。

Q.妊娠中にインフルエンザなどの予防接種はできる?
A. 妊娠中でも不活化ワクチン(インフルエンザ、新型コロナワクチンなど)は接種可能です。インフルエンザワクチンは全期間を通じて、母子へのリスクは極めて低いとされ、重症化予防のためにも接種しておくとよいでしょう。
一方、生ワクチン(風疹、麻疹など)は妊娠中には接種できません。妊娠を考えている方は、妊娠前に抗体検査を行い、必要な予防接種は妊娠前にすませておきましょう。
最近では、生まれた後の赤ちゃんがかからないように、妊娠中のお母さんに接種するRSウイルスや百日咳の予防接種もあります。

善方裕美先生
横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。国際出産イニシアティブ(ICI)認証の分娩施設「よしかた産婦人科」院長。母乳育児・自然分娩を基本に思いやりと触れ合いを大切にし、ママと赤ちゃん、ご家族にとって、幸せな出産と育児の実現を目指し、よりよい産科医療を提供するために医療技術のアップデートを重ねながら、日夜奮闘中。よしかた産婦人科スタッフとの共著「はじめての妊娠・出産あんしんバイブル」(日東書院)も妊婦さんから好評を得ている。
参考
「はじめての妊娠・出産あんしんバイブル」(日東書院)
日本産科婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト「すこやかな妊娠と出産のために」
厚生労働省「妊娠と薬」
厚生労働省 妊娠・出産期に知っておきたい法律や制度
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